2008年3月22日
『ルポ貧困大国アメリカ』堤未果・著
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【貧困層が食い物にされる現実】
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以前、土井がギリシアに留学している時、一緒に学んでいたルーム
メイトが、日本に関し、こんなことを言いました。
「いいじゃないかEIJI。誰もが平等な社会なんて素晴らしいことだ」
当時の日本は、行きすぎた平等主義と年功序列の考え方に若者が反
発している状況。そんななかで聞いた、意外な言葉でした。
それ以来、アメリカの政治・経済の動向について聞く度に、彼の言
葉を思い出したものですが、本日読んだ『ルポ貧困大国アメリカ』
には、まさに平等を希求するアメリカ人の切なる思いが込められています。
本日の一冊は、アムネスティ・インターナショナル・NY支局員を
経て、米国野村證券時代に9.11同時多発テロに遭遇、以後ジャーナ
リストとして活躍する堤未果さんが、暴走した資本主義のなれの果
て、アメリカの現状を伝えた衝撃のルポルタージュです。
不法移民と低所得層を標的にし、破たんした「サブプライムローン」、
国内の製造業の空洞化が生んだ格差社会、貧困がもたらした肥満、
医療費の増大がもたらした新たな貧困、貧困ゆえに戦場に送られる
若者たち…。
あまりに悲惨なアメリカの実態が、犠牲者たちの声とともに紹介さ
れており、とても読むに堪えない内容ですが、アメリカの後を追う
日本の一員としては、ぜひ読むべき内容です。
国家が国民に希望としてあたえるべき教育の機会が失われ、医療費
負担が人々を貧しさのどん底に追いやり、かつ貧しさゆえに人身売
買が行われている状況。まさに異常としか思えない実態が、この本
の中に見てとれます。
もともと人権団体に所属していた著者が書いているだけに、やや扇
動的な内容とも言えますが、それでも一定の真実を知ることができ
ると思います。
これから世界がどこへ向かうのか、われわれ日本人はどう生きるべ
きなのか、そしてビジネスは何のためにあるのか。
深く考えさせられる一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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アメリカの住宅ブームが勢いを失い始めた時、業者が新たに目をつ
けたターゲットは国内に増え続ける不法移民と低所得層だった。自
己破産歴を持つ者やクレジットカードが作れない彼らでも住宅ロー
ンを組めるという触れ込みで顧客をつかむやり方だ
「サブプライムローン問題」は単なる金融の話ではなく、過激な市
場原理が経済的「弱者」を食いものにした「貧困ビジネス」の一つだ
安価な海外諸国の労働力に負けた国内の製造業はみるみるうちに力
を失い、労働者たちは続々と失業者となった。中間層が貧困層に転
がり落ち、代わりに主流となったサービス業(金融、IT、コンサ
ルティングなど)が一部のエリート層で事足りる性質であったこと
から、国内の所得格差が急激に広がっていった
貧困地域を中心に、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増え
ていく。健康状態の悪化は、必要以上の医療費急騰や学力低下につ
ながり、さらに貧困が進むという悪循環を生み出していく
「国家が国民に対し責任を持つべきエリアを民営化させては絶対に
いけなかったのです」(ジェフリー・アンダーソン)
アメリカでは、政府が大企業を擁護する規制緩和および福祉削減政
策に切り替えてから、普通に働く中間層の人々が次々に破産するよ
うになった。二〇〇五年の統計では、全破産件数二〇八万件のうち
企業破産はわずか四万件に過ぎず、残り二〇四万件は個人破産、そ
の原因の半数以上があまりに高額の医療費の負担だった
ウォールストリートの投資分析家たちは、医療損失が八五%を超え
ると配当が期待できないとし、投資対象としての保険会社に対して
医療損失が八〇%以下であることを期待する。投資家たちから見離
され株価が低下することを最も恐れる保険会社は、医療損失を減ら
すためになるべく病人を保険に加入させないようにする
JROTCの授業を受けた生徒の四〇%が卒業と同時に軍に入隊、
その八割が真っ先に前線に送られる最下層ポジションにつくマイノ
リティの若者たちだ
「若者たちが誇りをもって、社会の役に立っているという充実感を
感じながら自己承認を得て堂々と生きられる、それが働くことの意
味であり、『教育』とはそのために国が与えられる最高の宝ではな
いでしょうか? 将来に希望をもてる若者を育ててゆくことで、国
は初めて豊かになっていくのです」(ティム・レイバン)
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『ルポ貧困大国アメリカ』堤未果・著
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◆目次◆
プロローグ
第1章 貧困が生み出す肥満国民
第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
第4章 出口をふさがれる若者たち
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
エピローグ
初出一覧
あとがき
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