2012年4月30日
『リアルタイム・マーケティング』 デイヴィッド・ミーアマン・スコット・著 楠木建・解説 Vol.2840
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【即断即決のマーケティング&マネジメント】
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以前訪れた「あいうえお」という目黒のラーメン屋さんが、面白いマーケティングを展開しています。
それは、メールで本日開店しているかどうかの情報、そして来店者へのサービス情報(「ひとくち炙りチャーシューをプレゼント」など)をリアルタイムで提供していること。
これならお客は、「行ってみたら閉店だった」というガッカリな事態を防げて、かつ「行けば何が得られる」というワクワク感が得られます。
現在は、スマートフォンの時代ですから、こういったリアルタイムのマーケティングは、ますますやりやすくなっているはず。
街をうろうろしている客を射止めるには、断然リアルタイム・マーケティングが有効なのです。
本日ご紹介する一冊は、話題となった『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』の著者、デイヴィッド・ミーアマン・スコットが、このリアルタイム・マーケティングを語った一冊。
※参考:『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』
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ユナイテッド航空に預けたギターを壊されたカナダのシンガーソングライター、デイブ・キャロルが『United Breaks Guitars』という歌を作ってユーチューブに怒りの投稿。それが話題となって、便乗したテイラー・ギターと楽器ケース製造のカールトン・ケースが注目を浴びた事件を皮切りに、各企業のリアルタイム・マーケティングの事例と、危機対応について述べています。
要は、先に乗ったもの勝ちで露出を集める方法、迅速に商品開発やサービス提案をする方法を説いたものですが、事例が豊富なのがいい。
八歳の男の子を落胆させたボーイングが信用を回復した話、UPSが「大地震のあったハイチ向けにかぎって、重さ二二キロ未満の荷物を無料配送する」というデマを収束させた話、KLMがクラブDJのリクエストにより、予定より1週間早い就航日を実現した話…。
各社のソーシャルメディアへの対応と、リアルタイムマーケティングの現状がわかる、じつに興味深いコンテンツです。
参考までに、他社に先駆けてガイドラインを作成し、従業員にリアルタイムのコミュニケーションを奨励しているIBMの例が載っているのですが、このガイドラインは本当に有用です。
社員のソーシャルメディア活用をどうルール化するか、悩む企業には、一読することを強くおすすめします。
気になったのは、著者が一方的に送りつけたアンケートに対する各企業の対応を、名指しで攻撃している点。
解説で、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建さんが述べているように、「すべてにリアルタイムに対応することは不可能」ですし、著者に対する対応がすべてのメディアや顧客への対応とイコールではないはずです。
それともう一つ、楠木さんが指摘しているように、リアルタイムマーケティングによる露出が著者の言う通りの動きを示すならば、長いこと売れ続けるのは難しいということになります。
ソーシャルメディア関連のマーケティング本は、単なるトラフィックの移転をあたかも成果のように論じるものが多いですが、リアルタイム・マーケティングはそうでないことを祈っています。
個人的には、たくさんビジネスのアイデアがいただけたので、星4つ、といったところでしょうか。
これからの時代のマーケティングのヒントとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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『United Breaks Guitars』はほどなくリアルタイム現象となり、デイブは一躍時の人へと押し上げられた
デイブがユーチューブ上で曲を発表した数日後には、社長のボブ・テイラーがみずからユーチューブの動画に登場し、移動の多いミュージシャン向けにギターの梱包法や、航空会社のルールを最大限に活かす方法をアドバイスした
プロのミュージシャン向けに壊れにくい楽器ケースを製造する専門メーカー、カールトン・ケースも、やはりチャンスをうまくつかんだ。ものの数日後には新製品『デイブ・キャロル仕様旅行用ギターケース』を市場に送り込んだのだ
世間が熱い視線を向ける先に焦点を合わせ、好奇心を掻き立てる中身をリアルタイムに発信すれば、優位性を手にできる
マイケル・ジャクソンがこの世を去った日、ネット上には大量の記事や投稿が現れたが、その大多数は第一報につづくわずか数時間に集中していた。この法則を理解して胸に刻んでおくのは決定的に重要である。さもないと、目と鼻の先で重要事が起きたのに気づいた時にはすべて終わっていた、などという状況になりかねない
IBMは他社に先駆けてガイドラインを作成して、従業員にリアルタイムのコミュニケーションを奨励している
最新ニュースについて、すぐに旬のキーワードを盛り込んだブログ記事やメディア・アラートを書けば、記事の第二段落に取り上げられる可能性は高い
◆膨大な量のやりとりを現在進行形で把握する方法 ※一部紹介
・自社事業に関連する検索語リストを作成する
・検索語を使い、検索エンジンでニュース・アラートを設定する
批判者にリアルタイムで理性的に対応すると、思いやりが伝わってファンの獲得につながることが多い
商談が成立した後に顧客とリアルタイムのつながりを築くことは、間違いなく、優れたマーケティングに欠かせない要素である
「本日の目玉商品」で人気のグルーポンが、さきごろ「グルーポンなう」というサービスをはじめた。これは、すぐに使える割引クーポンを携帯電話に送るサービスである
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『リアルタイム・マーケティング』デイヴィッド・ミーアマン・スコット・著 楠木建・解説 日経BP社
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◆目次◆
プロローグ
I 革命の到来
第1章 いますぐ事業を拡大する
第2章 特ダネをつかむ人、逃す人
第3章 リアルタイム時代の法則
第4章 リアルタイム時代の発想
第5章 大企業はリアルタイム時代に適応できない……のか?
第6章 革命のライブ中継
第7章 危機対応コミュニケーションとメディア
第8章 いまこの瞬間のあなたの評判は?
第9章 大勢(クラウド)の力を借りて迅速に動く
II 市場とつながろう
第10章 リアルタイムでの顧客とのつながり
第11章 モバイル環境ではすべてがリアルタイム
第12章 顧客は待ってはくれない
III 事業をすぐに成長させよう
第13章 いますぐ、コミュニケーションを奨励しよう
第14章 ウェブサイトはこうしてリアルタイム性をまとう
第15章 商談を成立へと持ち込む
第16章 即応型ビジネス
謝辞
解説 楠木建
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