2012年6月18日
『ソクラテス言行録1』クセノポン・著 Vol.2889
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【ソクラテスからのメッセージ】
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本日の一冊は、プラトンと並ぶ愛弟子のクセノポンが、ソクラテスの言葉を思い出とともに語る、名著の新訳。
腐敗していた当時のアテネで、ソクラテスがいかにして人々を教え導いたか、その様子がヴィヴィッドに伝わる一冊です。
欲望に対して節度を保つ方法、すぐれた生き方と名声について、支配者となる者の心構え、両親から受けた恩について、兄弟愛について、友人の値打ちについて、知と思慮分別について、「自分自身を知る」とは…。
今はすっかり家庭や学校でも説くことのなくなった自己修養についての考え方が、ソクラテスの口調そのままに伝えられる、じつに味わい深い読み物です。
雰囲気をわかっていただくために、ひとつ例をあげましょう。
これは、哲学をする者は、より恵まれた生を送るようにならねばならないと信じていたソフィストのアンティポンとソクラテスが交わした会話の一部です。
「友人や国家が援助を求めているようなときには、それらに配慮するゆとりがどちらにより多くあるだろうか──現にわたしがしているような生き方をする人だろうか、それとも君が祝福するような暮らしぶりの人だろうか。より容易に参戦できるのは、豪勢な食事がなくては暮らしていけない人だろうか、それともあり合わせのもので満足できる人だろうか」
「どうやら君には、アンティポンよ、幸福とは贅沢と豪華絢爛のことらしいね。わたしの信ずるところ、何ものも必要としないというのは神のありようだが、なるべくわずかなものだけしか必要としないのはその神に最も近しい状態であり、神聖なるものが至高のものであるとすれば、神聖なるものに最も近しいものこそ、至高のものに最も近しいものであることになる」
このような会話を中心に、善い生き方をするために必要な考え方が、ぎっしり詰まっています。
本当に反省させられる内容です。
読んでみて、改めてソクラテスのすごさを感じさせられました。
これからの人生を善きものにするために、ぜひ読んでおきたい、名著中の名著です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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立派なこと善きことのすべては、修練によって身に付くものであり、思慮分別はひとしおそうである
「恋人にはとても立派な人だと思ってもらいたいのに、その相手に対して、まるで物乞いをする人たちがすがりついて恵みを懇願するように、乞い求め、しかも求めるものたるや何のよさもないというのは、自由人に似つかわしくないし、立派なよき人にふさわしいことではないね」
わたしの言わんとするのは、敬愛していない人からは、誰に対してもいかなる教育成果ももたらされない、ということである
ソクラテスは、彼のところに来る者をよりすぐれた人間にして送り出していた
彼は次のような詩句を讃美していたものだ。力に見合った捧げものを、不死なる神々に供えるがいい。
彼のとる食事の量は、ちょうど快適に食べられるほどであったし、おまけに、食欲が彼のご馳走となるよう心掛けていたのである。飲み物にしても、のどの渇きを覚えなければ飲もうとしなかったから、彼には何でもおいしく感じられた
「ねえ君たち、もしわれわれに戦争が起こった場合、その人の配下につけばわれわれ自身は無事に助かって敵を打ち負かす、そういう人物を選ぶとすれば、食い意地や酒や愛欲や眠りに負けやすいと分かっているような人を選んだりすることがありえようか」
「金銭をかせごうとする者は、賃金を受け取るための仕事をなし遂げなければならないが、わたしのようにそれを受け取ろうとしない場合には、自分が対話を交わしたくない相手とは対話する必要がないのだよ」
「大勢の人たちといっしょに暮らして、足るほどのものを安全に所持するほうが、孤立した生活をしながら、危険をおかして国民のものをすべて所有するよりもまさっている」
「クリトブウロスよ、何につけてあれ君がすぐれた人間だと思われたいのであれば、その最も早く最も確実ですぐれた方途は、実際にすぐれた人間になろうと努めることだ」
「怠慢のせいで自分自身が身体的にどれほどの美しさをきわめ、どれほどの力強さをきわめるかを見ることなく、年老いてしまうのは恥ずべきことである。しかし怠慢な者はそれを見ることができない。それは独りでに達成されるものではないからである」
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『ソクラテス言行録1』クセノポン・著 京都大学学術出版会
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◆目次◆
第一巻
第二巻
第三巻
第四巻
解説
固有名詞索引
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