『ぼんやりの時間』辰濃和男・著vol.2081


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【効率を追うな。「天声人語」辰濃和男からのメッセージ】
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この「ビジネスブックマラソン」では、読者の方からリクエストされた本をたまにご紹介しています。

本日紹介する一冊は、ある読者の方に教えてもらった、元「天声人語」担当、辰濃和男さんによる注目の新刊。

『文章のみがき方』は、書き出しの大切さや、アウトプットを意識した体験など、書き手にとって重要な視点が含まれた名著でしたが、こちらはうって変わって、気の抜けたエッセイ。

※参考:『文章のみがき方』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004310954

タイトルから推察できるように、「ぼんやり」と過ごす時間の大切さを説いた一冊で、現代社会に対し、重要な問題提起をしています。

そして、表現意欲旺盛な読者にとって重要なのは、書き手として、どのように創造性を高めるか、という点。

「対象にあまりにもこだわっていると、ひらめきがやってこない」「陰の力、虚の力、緩の力、静の力、休の力、無為の力、あるいは空の力を軽んじては、ものごとの実体を真に理解することはおぼつかない」など、表現者にとって重要なヒントがどころどころに散りばめられています。

ただ時間に追われる毎日のなかで、創造性を高め、優れた作品を残すのは、至難の業。

本書には、クリエイターがどうやって頭をカラッポにしているか、どうやって優れた創作のヒントを得ているのか、その秘密が書かれています。

また、人間がどう生きるべきか、というテーマに対しても考察しているので、ぜひ読んで参考にしてみてください。

みなさんからのご感想お待ちしております!

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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定年の前後、つまり六十歳前後でこの廃屋を借りることにした。あのとき、なぜあれほど「隠る」ことを渇望したのだろう。なぜあれほど、山奥の隠れ家を求めつづけたのだろう(中略)たしかなのは、自分の「いま」、時代の「いま」を見つめるには「いま」から離れてみたいという思いがきわめて強かったことだ

串田が「ぼんやりは貴い」というとき、そこには古代人への共感や憧憬があるように思えてならない。箴言をもう一つ選んでよいといわれれば、次の言葉をあげる。
「文明は人間の勝利ではなく、意図的敗北の結果である」
人類が、「ぼんやりの時間」を徐々に失いだし、ばたばた走り回ることをヨシとするようになってから、私たちは近代の驕慢の前にひれ伏し、敗北を重ねてきた

対象となるもののことを考えつづけているとき、その対象にあまりにもこだわっていると、ひらめきがやってこない

エッセイのなかで、ギャバンはこういっている。
「人間はね、今日のスープの味がどうだったとか、今日は三時間ばかり、一人きりになって、フラフラ歩いてみようとか……そんな他愛のないことをしながら、自分の商売で食っていければ、それがいちばん、いいんだよ」

◆詩人、高木護の財産目録
・何者にも拘束されない自由
・一日、ぼんやりしていられること
・低収入でくらせる体
・自然たちと仲よくなれること
・老い、あるいは持病

大いなるものの営みへの感謝の念を深めてゆけば、人はやがて「謙虚」という二文字の意味をかみしめて生きることになる

循環と再生こそが大自然の営みの中核にあり、その中核にあるものを破壊してはならぬという思いを痛切にもつ人こそが、政治の中核にいるべきだと思う

「私にとって政治はすべてではない。最優先のものでもない。政治というものは本来、科学に仕え、哲学を謙虚に具現するだけのものだ。そして政治が大自然の知恵や人びとの営みを忘れ去った時、それはもう一本の切り花にすぎない。切り花はすぐに枯れる」(ミッテラン)

「人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそって、なくなってしまうのです」エンデはモモの物語がいつの時代のどこの国の話だとも書いてはいない。しかし、「むだいじめ」の現象は、近代技術文明の果実をむさぼる国々では、どこの国でも起こりうることであり、現に起こっている、ということが読者の胸に伝わってくる

陰の力、虚の力、緩の力、静の力、休の力、無為の力、あるいは空の力を軽んじては、ものごとの実体を真に理解することはおぼつかない

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『ぼんやりの時間』岩波書店 辰濃和男・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004312388

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◆目次◆

一「ぼんやり」礼賛─常識に逆らった人びと
二 ぼんやりと過ごすために─その時間と空間
三「ぼんやり」と響き合う一文字

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