2009年9月6日
『どんとこい、貧困!』湯浅誠・著 vol.1875
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【さようなら、自己責任論】
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本日の一冊は、反貧困ネットワークの事務局長であり、2008?2009年の「年越し派遣村」では村長を務めた著者が、日本の貧困の実態を明らかにし、今後、日本社会が進むべき道を示した一冊。
理論社の「よりみちパン!セ」シリーズからの発刊ということで、中学生向けの文体にはなっていますが、書いてある内容は、ビジネスマンでも十分通用するほど本格的なもの。
現在の日本の貧困問題をイス取りゲームにたとえ、そもそもイスの数が足りなくなっている、という構造的な問題を指摘しています。
解決策としての「溜め」の重要性、いろんな立場の人が「自分の居場所」だと感じられる「場」の必要性など、提言はいずれも納得できるものばかり。
なかでも、「本当ならすごい力をもっている人が“溜め”がないばかりに一生その力を開花させられずに終わってしまう。それは、その人にとってだけでなく、社会にとってもったい」という主張は、今後の日本の競争力を考える、という点でも重要な指摘だと思います。
将来不安を感じている労働者はもちろん、雇用に直接携わる経営者にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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世の中にはいま、夜中の十二時とか一時まで家に帰れず、過労死しそうなくらい猛烈に働いている人たちと、働けない、働いても食べていけない人たちが増えている。「過労死か貧困か」という究極の二者択一だ
イスに座れなかったのは、かならずしも「本人の努力が足りなかった」からではなくて、「イスの数が足りなかった」からだ、ということになる。この場合、解決策はイスの数を増やすこと、だ。これを構造的な見方という
二十年近く前の一九九〇年代前半には、正社員のイスは十人に八つ以上あった。いまは労働者全体に占める非正規率は38パーセント。正社員のイスは十人に六つになってしまった
“溜め”というのは、人を包むバリアーのようなもの。人は誰でも“溜め”に包まれて生きている。お金があるのは、金銭の“溜め”があるということ。頼れる人がまわりにたくさんいるのは、人間関係の“溜め”があるということ。そして、「やればできるさ」「自分はがんばれる」と思えるのは、精神的な“溜め”があるということ
本当ならすごい力をもっている人が“溜め”がないばかりに一生その力を開花させられずに終わってしまう。それは、その人にとってだけでなく、社会にとってもったいないこと、不幸なことじゃないだろうか?
二〇〇二年から二〇〇七年までは戦後最長の好景気だった(「いざなみ景気」)。国の富が増えても、人々の暮らしには回ってこなく
なった。富の配分の仕方が変わってしまった
たとえお金がなくて「貧乏」でも、周囲に励ましてくれる人たちがいて、自分でも「がんばろう」と思えるなら、それは「貧困」じゃない
社会は人間でつくられている。その人間をつぶしていって、社会がよくなるわけがない
「寮付き、日払い」の仕事しか探しようのない人たちは、一般の求職者がこだわるような条件にこだわれなくなる。どんな条件でも拒否できなくなる。つまり“NOと言えない労働者”になる
多くの人たちが“NOと言える労働者”になれば、あまりにもひどい労働条件のところには人が集まらなくなるから、労働市場の条件悪化に歯止めがかかる
企業がもし、自分たちの利益だけを考えればよくて、社会のことは知らないというのであれば、それは社会に敵対する勢力だから、そういう企業は追い出したほうがいい
この社会の中には、いろんな立場の人が「自分の居場所」だと感じられる「場」が少なすぎる
ひとりひとりを伸ばせない社会は、ひとりひとりを伸ばせる社会よりも弱いし、どうしたって先細っていく
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『どんとこい、貧困!』理論社 湯浅誠・著
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◆目次◆
第1章 どんとこい、自己責任論!
第2章 ぼくらの「社会」をあきらめない。
どんとこい対談 重松清×湯浅誠
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