『あんぽん 孫正義伝』佐野眞一・著 Vol.2730


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【孫正義評伝の決定版?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093882312
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本日の一冊は、昨日あたりから店頭に並び始め、話題となっている、ノンフィクション作家、佐野眞一氏による孫正義氏の評伝です。

佐野さんと言えば、『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』で第28回大宅壮一ノンフィクション章を受賞した実力派で、アマゾン上陸直後には『だれが「本」を殺すのか』などでも話題となりました。

※参考:『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167340089

※参考:『だれが「本」を殺すのか』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833417162

今回の書籍は、もともと「週刊ポスト」に連載されていたものをまとめて加筆したものですが、当然のことながら、2冊合わせてミリオンセラーの『スティーブ・ジョブズI』『スティーブ・ジョブズII』を強烈に意識して書かれています。

※参考:『スティーブ・ジョブズI』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062171260

※参考:『スティーブ・ジョブズII』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062171279

以前、「BBM Interviews」で、『ザ・ラストバンカー』を手掛けた講談社の加藤さんにうかがったところ、優れたノンフィクションのポイントは、

・犯人=当事者しか知りえない事実を聴くこと
・素材となる人物に、強烈な欠落感と過剰さがあること
・著者が著者としてリスクを負える人であること

とおっしゃっていました。

そういう意味では、この『あんぽん 孫正義伝』も、孫正義氏の知られざる過去を抉り出し、その起業家精神のルーツを明かした、優れたノンフィクションだと思います。

※参考:『ザ・ラストバンカー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062167921

おそらく孫正義氏にしてみれば、被差別の経験など、まさに「書かれたくないこと」を書かれたわけで、「当事者しか知りえない事実」という点でいえば、本人すら知らなかった新事実を、取材によって明らかにした力作です。

惜しむらくは、著者に経営の視点が乏しいことで、数字から見えてくる真実が加味されていれば、ビジネスマンにとっては、より興味深い評伝になったと思われます。

しかしながら、これまであまり語られていなかった事業家の父・安本三憲に密着取材し、孫家の教育の実態を明らかにした点は、類書にない魅力です。

日本有数の起業家、孫正義がどうやって作られたのか、興味ある方は、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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孫正義は一九九〇年九月に日本に帰化した。帰化前の名前は、安本正義だった。中学時代、孫は旧姓の安本をそのまま音読みして、「あんぽん」と言われることをひどく嫌っていた

「あの頃は、豚の金玉もごちそうだった。養豚っていうのは、まず、子豚の段階で去勢しなくちゃならないんです。だから自分たちで豚の金玉を切り落としてね。それを七輪で焼いて食べる。これも絶品だ。正義も私と一緒に、豚の金玉をよく食べましたよ」(「焼肉仁」経営者の大竹仁鉄)

李元照さん(孫正義の祖母)の遺言は、『金を貸すときには親戚でも利息をとるように』だった

黒崎に事務所を構えたのは、近くに八幡製鉄所があったからです。『鉄は国家なり、だ。製鉄所は絶対つぶれない。製鉄所がつぶれるときは、国がつぶれるときだ。だから、八幡の工員にいくら金を貸しても、取りっぱぐれはない』というのが、三憲さんの計算でした

隣が金儲けすると、日本人は足を引っぱるが、韓国人は歯がゆがる、という言葉があります

「商売って要するに、できるだけ安く買って高く売ることですよね。でも事業家は違います。鉄道や道路、電力会社など天下国家の礎を作るのが、事業家です」(孫正義)

そんな自信は、というより自信過剰は、いったいどこから生まれたんですか。「親父が、際限のないレベルで僕を褒めたからでしょうね。『お前は俺より頭がいい』って。僕は親父に怒られたことが一度もないんです」

三憲は正義をわが子としてではなく、いわば“社会の子”として扱ったのである

「いや、おじさんたちはそう言うけど、孫という本名を捨ててまで金を稼いでどうするんだ、と言いました。それがたとえ十倍難しい道であっても、俺はプライドの方を、人間としてのプライドの方を優先したいと、言いました」(孫正義が日本名を捨てて起業した時の話)

孫の論法の特徴は、こうした誰にも予測できず、実感もできない未来の話をして、まず聞く者の度肝を抜いてしまうことである

「情報革命の会社です」想像通りの答えだった。自分を情報の革命家と規定すれば、どんな批判にも耐えられるし、どんな批判も鼻歌まじりに受け流すことができる。なぜなら、革命の大義の前には、どんな異論も抗議も意味を失うからである

“大欲”は、時として“無欲”によく似ている

『お母さん、ぼくには何の財産も残さなくていいよ。ぼくは何もいらない。その代わり、勉強の面倒だけは見てください。そのための世話だけはしてください。たとえ借金してでも、勉強だけはつづけさせてください。いつか、必ずお金持ちになって恩返しします。かばんにたくさんのお金をつめて、お母さんに持ってきてあげるから』(孫正義)

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『あんぽん 孫正義伝』佐野眞一・著 小学館
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◆目次◆

第一章 孫家三代海峡物語
第二章 久留米から米西海岸への「青春疾走」
第三章 在日アンダーグラウンド
第四章 ソフトバンクの書かれざる一章
第五章 「脱原発」のルーツを追って
第六章 地の底が育てた李家の「血と骨」
第七章 この男から目が離せない

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