2005年8月21日

『ドラッカー20世紀を生きて』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532312329/
本日の一冊は、マネジメントの巨人、ドラッカーが、自らの人生と20世紀を振り返ったもので、もともとは日本経済新聞の人気コーナー「私の履歴書」に掲載されていたものです。

もちろん、新聞の連載27本だけでは、到底一冊の本にはなり得ないので、インタビューでのこぼれ話などを盛り込んだ「訳者解説」や、「ドラッカーの人生年表」を加えて、一冊に仕立て上げています。

読んでみて、思ったことは、やはり一流の人は一流の人と出会っている、ということ。

ドラッカーは、幼い頃からフロイトと握手を交わしたり、シュンペーター、ハイエクなどとホームパーティで出会ったりしていたようで、そこからいろいろ学ぶことがあったようです。

ドラッカーの少年時代から、社会に対するスタンスが築かれた記者時代、マネジメントを人生のテーマとするまでの流れが、簡潔かつ具体的に書かれています。

ドラッカーファンならずとも楽しめる、興味深い一冊です。
————————
■ 本日の赤ペンチェック
————————
1939年にナチスドイツの本質を暴いた処女作『経済人の終わり』を書き、英首相になる前のウィンストン・チャーチルに書評で評価されたことで文筆家としての道が開けた

父は外国貿易省長官だった(中略)外国貿易省は唯一経済学者を雇い入れていた点で異色の存在だった。父自身も経済学者ではあったが、実態は若手経済学者を採用し、育成する「ゴッドファーザー」だった(中略)父にチャンスを与えられた経済学者の中で特筆すべき人物が一人いる。「創造的破壊」が経済発展の原動力であるなどと説き、二十世紀を代表する経済学者となったヨーゼフ・シュンペーターだ

私は両親のおかげで幼いころから多様な人たちと接することができた。学校はほんの一時期を除いて退屈極まりなかったから、これが実質的な教育になったと思う

台頭著しいナチスの党首アドルフ・ヒトラーや右腕のヨーゼフ・ゲッベルスの演説を聞き、直接インタビューした(新聞社時代)

仕事のかたわら、毎週金曜日の夕方にはケンブリッジ大学へも足を運んだ。「ケインズ経済学」の生みの親、ジョン・メイナード・ケインズの講義を聴くためだ(中略)講義を聴きながら、ケインズを筆頭に経済学者は商品の動きにばかり注目しているのに対し、私は人間や社会に関心を持っていることを知った

意気消沈のさなかのGMからの誘いだった。当時のGMは中興の祖アルフレッド・スローンの下で、世界初の本格的な事業部制や分権制を導入するなどで近代的な企業経営の元祖になっていた。今振り返っても幸運に恵まれていたものだと思う

最高経営責任者(CEO)の座にあるアルフレッド・スローンの下で、同社は「資本家」ではなく「経営のプロ」が運営する近代的な組織へ大転換中だった。マネジメントの研究対象としてこれに勝るものはなかった

有名になることだけが人生を測る物差しではない。これからもこのことを忘れないでいたい。最初に書いたように私には「引退」という言葉はない
————————————————–
『ドラッカー20世紀を生きて』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532312329/
————————————————–
■目次■
まえがき
訳者まえがき
1 基本は文筆家――95歳でも現役
2 生まれは帝都ウィーン――4歳の夏に第一次世界大戦
3 世界で最も優しい父――シュンペーターに救いの手
4 フロイトと握手する――顔広い両親
5 最高の教師との出会い――8歳で学ぶ喜びを知る
6 赤旗デモに誘われ先頭に――「場違い」と感じる
7 退屈なウィーンを脱出――図書館で「大学教育」
8 大恐慌で記者の道――初日から編集長に怒鳴られる
9 ヒトラーに直接取材――ファシズムの本質見る
10 ナチス突撃隊――心臓が止まる思い
11 ドリスとの再会――人生最高の瞬間
12 大盛況だったケインズの講義――経済学に興味なし
13 “大戦前夜”の新婚旅行――新生活はニューヨーク
14 ワシントン・ポスト紙と契約――フリーランスとして第一歩
15 処女作にチャーチルの評価――独ソ結託を見通す
16 雑誌王に学んだ60日――IBM創業者とやり合う
17 青天の霹靂――GMからの誘い
18 戦時下の工場現場も取材――「GMの頭脳」と懇意に
19 特異な経営者スローン――秘密兵器は補聴器
20 『会社という概念』に集中砲火――スローンに救われる
21 分権制ブーム――フォードとGEが採用
22 「知識労働者」を生涯のテーマに――トヨタに協力
23 「経営コンサルタント」を考案
24 またしても幸運の女神――NY大の初代経営学部長に
25 デミングと授業を担当――教室はプール
26 日本画を見たさに初来日――「経済大国になる」と確信
27 NPOに傾注――わが人生に「引退」なし
訳者解説
付録 ドラッカーの人生年表
━━━━━━━━━━━━━━━
■ご意見、お問い合わせは、
eliesbook@yahoo.co.jp
■マガジン登録、変更、解除
http://eliesbook.co.jp/bbm/
━━━━━━━━━━━━━━━

この書評に関連度が高い書評

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー