2013年2月26日

『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する』 ルディー和子・著 Vol.3143

【『フリー』の意外な問題点とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532261864

読書の効用は数多くありますが、「違う物差し」を手に入れることの効用はとりわけ大きいと感じています。

現実に生きていると、時代の変化をとらえにくいものですが、それは自分や自分の生きている時代を客観視する「物差し」を持っていないため。

ビジネスチャンスを掴むためには、この「物差し」を他者から借りてきて、違う基準で「今」を分析する必要があるのです。

本日紹介する一冊は、<古代ギリシアの哲人なら、ネット社会・ビジネスをどう見るのか>、立命館大学大学院経営管理研究科教授のルディー和子さんが解説した新書です。

『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する』という題名通り、ネット社会に対してはやや否定的ですが、なかでも問題視されているのは、クリス・アンダーソンのベストセラー『フリー』で紹介され、一躍話題となった「無料」のビジネスモデル。

※参考:『フリー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140814047

<ビジネスモデルなんてクールな名称をつけようとも、多くの場合、売り手が買い手に悟られないところで利益を出す仕組みのことです>と、ズバリ本質をえぐる著者が、「無料」の問題点を以下のように説明しています。

<贈与でもなく売買でもなく、ただ一方的に役に立つサービスを享受することができる……などということが当たり前になってしまっているのです。その結果、消費者は「無料」にすっかり慣れてしまい、それが当然であるかのようにふるまい始めています>

しかしながら、われわれ人間の社会では、もらいっぱなしはあり得ません。著者は、こうも述べています。

<メールの無料サービスは利用したいが、データは提供できない……というのは、ある意味で、勝手な言いぐさだとも言えます。人類の歴史上、誰かから一方的に何かをもらって、お返し
をしないなんてことは、個人的人間関係では許されない。まして利害関係で成り立つ個人対企業ではありえないことです>

「無料」のサービスが広がることで、消費者の行動・マインドにどんな影響が出てくるのか。そこではどんなビジネスが流行するのか。

ぜひ読んで、考えてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「書き言葉は若者の知性を衰えさせる」(ソクラテス)

識字率が上がると他人の顔を忘れやすくなる

当時のギリシャ社会には、無料でモノをあげるとかサービスを提供するという発想自体がありません

代価を要求せずに何かを提供するとしたら、それは贈りものとして与えることになります。贈与の場合は、売買取引とは違い、お金を払ったら取引完了というわけにはいきません。贈りものを受けとる側は、それに対してなんらかのお返しをすることが期待されていたし義務でもありました

人間の本能的性向は「恩返し」より「仕返し」

「いま持っている食料の半分を餓死寸前のこいつにやれば、今度自分が運悪く食料を見つけられなかったときに、こいつが分けてくれる可能性がある」

マルセル・モースが言うように、贈りものは、(1)与える義務があるし、(2)それを受ける義務があるし、(3)お返しをする義務があるのです。人間がこういった3つの義務を遂行している限り、暴力による争いの代わりに平和を維持することができる

富山の薬売りの「配置薬商法」は、モノのやりとりを売買ではなく、なるべく贈与交換に近い形にとどめることで成功しました(中略)商売上の売買取引を、贈与交換の形式に変えることで、売り手と買い手がギフトの贈り人と受取人になり、ある種の絆が結ばれるようになるのです

ビジネスモデルなんてクールな名称をつけようとも、多くの場合、売り手が買い手に悟られないところで利益を出す仕組みのことです

イエスは、お返しのできない貧しい人たちを招待すれば、自分が死んであの世に行ったときに、神の救いという形で神からお返しが与えられると説いた

個人データ(情報)は21世紀のオンライン上での通貨

脳は「新しい情報」の誘惑に抵抗できない

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『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する』ルディー和子・著 日本経済新聞出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532261864

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◆目次◆

第1章 文字が人間の頭を悪くする
第2章 ソクラテスが「無料」に抗議する理由
第3章 21世紀と20世紀の「フリー」は本当に違うか
第4章 フェイスブックは贈与の法則を破ったのか
第5章 人間はなぜ言葉にだまされるのか
第6章 人間はデジタル社会に、デジタル社会は人間に適応できるか

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