【科学的思考法のキホン】
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中学生の頃、『マネーウォーズ』という漫画にハマっていました。
『マネーウォーズ』
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証券会社を舞台に株と人間のドラマを描いた作品で、主人公は相場君というベタな名前の新人証券マンでした。
この主人公が、次長の顧客を引き継ぐため、ある大口投資家の邸宅に向かうのですが、大口投資家は新人の相場くんには目もくれず、やり手の次長に担当継続を願う。
困っていたところ、大口投資家が最近話題の仕手株について意見を聞いてきたので、次長は相場くんに持論を述べさせます。
相場君は、自身が足を使って稼いだファクトを元に、顧客に仕手株の危険性を伝え、「これは私の生きた情報ですわかっていただけましたか」と伝え、顧客の信頼を獲得するのです。
若い時分は、肩書きも実績もないけれど、ファクトと論理でもって戦うことができる。
だからこそ、科学的思考を身につけることが重要なのです。
本日ご紹介する一冊は、研究者兼小説家という、異色の肩書きを持つ著者が、読者が科学的思考を手に入れられるよう書いたビジネス小説。
スキンケア化粧品を開発・販売する外資系ベンチャーに務める山田咲良が、某大学との共同開発プロジェクトを担当することになり、そこに現れた変人研究者、斑目(まだらめ)から科学的思考のレッスンを受ける、という内容です。
不偏標準偏差を用いて母集団のデータのバラツキを推定し、全体の傾向を見る方法、分析の効率と正確性を高める「メッシュ」の考え方、科学的に論じるための言葉遣い…。
ビジネスパーソンが最低限押さえておきたい、科学的思考の基本が書かれています。
ビジネス系のロジカルシンキングの著者にはない視点が示されていて、ビジネス書として新鮮だと思いました。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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「指示代名詞」を徹底的に排除する
「日本語とは不思議な言葉で、形容詞が多少間違っても、なんとなくニュアンスが伝わってしまう。でも科学の世界では、間違った文章のままでは意味が通じない。なぜなら形容詞は測定方法と関係があるからだ。距離は長さでしか測れないし、温度は高さでしか測れない。形容詞の表現を間違うと、実験の方法が正しく伝わらないのだ」
なるべく読点がなくても成立する文章となることを心がける
エントロピーがたまる前に、定期的にデスク周りのエントロピーを下げて探し物をしなくなることで、1割弱ぶんも効率を高めることができる
われわれ研究者がこのようなグラフを見たときに気になるのが、母集団がどれぐらいバラついているか、だ
多くの場合、不偏標準偏差の範囲に全体の68%のデータが含まれる
標準偏差の範囲に全体の68%が含まれるというのは、データが正規分布をしているときにのみ成り立つ話
私たちが議論するべきは、数値化されたものであるべきなのだ
数字は「予測不能」で、「変化」するものである
成長率は変動するという考えはモデルに取り入れるべきだ
計算科学の分野でのシミュレーションのひとつに、有限要素法というものがある。モデルをつくる方程式を近似的に解くための、数値解析の方法のひとつだ。複雑な形状・性質を持つ物体を小部分に分割することで近似し、全体の挙動を予測しようとするものだ。構造力学や流体力学などさまざまな分野で使用されている。この有限要素法の考え方のポイントは、解析対象を複数の有限個の要素……以下、メッシュと言うが、メッシュに分割して数値解析を行うことだ。言い換えると、有限要素法とは、「解析できるように形状を分ける」ということだ
科学的に考えるというのは、データでもって物事を理解、説明、予測して、相手を、世界を納得させることだ。老若男女、理系文系問わず、どのような人々にとっても共通で公平なものであるんだ
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ビジネス小説なので、もうちょっと小説色を押さえても良かった気がしますが、科学的思考の基本がバッチリ押さえられるので、おすすめです。
研究者かつ小説家の肩書きを生かして、今後活躍しそうな著者ですね。
次回作も期待したいと思います。
ぜひ、読んでみてください。
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『なぜ君は、科学的に考えられないんだ?』松尾佑一・著 クロスメディア・パブリッシング
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◆目次◆
はじめに 「なんとなく」で判断して損をしないために
第一章 ある「変人教授」との出会い
第二章 「論理的」な説明に不要なもの
第三章 心を乱す「粒子」との向き合い方
第四章 私たちの仕事が「混沌」になる理由
第五章 「感情」が隠してしまうデータの真実
第六章 過去の向こうに「未来」が見えてくる
第七章 「天才」の頭の中で行われていること
第八章 科学は誰にも「公平」なものである
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