【教養あるビジネスマンになるために】
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ニューヨークに来て、現地のビジネスマンと話していると、いかに仕事以外の教養が大事か、痛感させられます。
仲良くしている不動産業者は、本が好きで、よく本の話になるのですが、彼との最初の話題は、ハーパー・リーによる大ベストセラー『To Kill a Mockingbird』と、新刊『Go Set a Watchman:A Novel』の話でした。
これは、人種差別に関する話ですが、彼との話は、その後もLGBTだったり、カウボーイの歴史と銃規制だったり、とにかくビジネスとは違う、教養の話にまで発展するのです。
思えば、初めてアメリカ・アリゾナ州にホームステイした時も、現地のホストとの話題は、日露戦争でした。
真面目に歴史を勉強しておいて良かったと思う瞬間でした。(ちなみに彼は、アリゾナ州に大きなビルを3棟持つビジネスマンでした)
欧米のビジネスマンと仕事するには、仕事以外の教養が必須。
そこで読んでおきたいのが、ビジネス界きっての教養人、ライフネット生命保険CEOの出口治明さんによる『本物の教養』です。
本書のなかで著者は、教養とは何か、どうすれば身につくのかを、実例を交えながら説明しています。
シェイクスピアを読んでいたことで仕事がもらえたという著者の体験、世界の相場に疎かった幕府が、金を大量に流出させた話(貨幣博物館に行くと、深刻さがよくわかります)、日本財団のCMのおかしさを指摘した連合王国の友人の話など、エピソードを交えながら、教養があるとどんなに得をするか、ないとどんなに損をするかを語っており、教養の大切さを痛感させられます。
また、具体的にどうすれば教養が身につけられるのか、その源泉を「本・人・旅」の3つに求めており、それぞれの作法を説明しています。
また、「教養としての時事問題」と題した部分で、必須の教養として「選挙・民主主義」「お金」「税と社会保障」の3つを取り上げており、いくつか事例を挙げています。
さっそく、本書のエッセンスを見て行きましょう。
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シャネルの創業者ココ・シャネルは次のように語っています。「私のような大学も出ていない年をとった無知な女でも、まだ道端に咲いている花の名前を一日に一つぐらいは覚えることができる。一つ名前を知れば、世界の謎が一つ解けたことになる。その分だけ人生と世界は単純になっていく。だからこそ、人生は楽しく、生きることは素晴らしい」
知識が必要なのは、それによって人生の楽しみが増えるからです
「知っている」というだけでは十分ではないのです。知識に加えて、それを素材にして「自分の頭で考える」ことが教養なのだと思います
「人間社会とは、いびつな欠片が集まって一つの安定状態を形成するもの」なのです。大事なのは、「いびつな欠片」を指摘することではなく、全体としての「安定状態」を把握することです
面白さの源は「ボキャブラリー」
私がロンドンで働いていたときのナショナル・ギャラリーのトップは著名な投資銀行を経営していたベアリング家の当主でした。彼らと一緒に晩ご飯を食べようというとき、ゴルフと天気の話しかできない人とランボーを語れる人とではどうなるでしょうか。人間は、双方の関心領域がある程度重なっていないと、なかなか相手に共感を抱けないものです
物事を考えるには、いくつかのコツがあります。その第一は「タテ」と「ヨコ」で考えるということです。「タテ」は時間軸、歴史軸、「ヨコ」は空間軸、世界軸です
物事を「国語」で考える、すなわち定性的に考えると、物事の筋道を見出すことはできますが、事実の有無、事柄の大小や軽重、相互の関係などは必ずしも明確にはなりません。そのため、筋道が成り立ちさえすれば、どんな理屈でも言えてしまうという一面があります。それに対して「算数」で考える、つまり定量的な視点を加味すると、物事をより正確に把握することができます
新しい分野を勉強するときは分厚い本から入る
キケロは「自分が生まれる前のことについて無知でいることは、ずっと子どものままでいることだ」という名言を残しています
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新書ながら読み応えがある本で、特に経済問題に関する部分は必読。おかしな議論がまかり通っている部分をバッサリ、教養の力で切り捨てています。
本の読み方や体験の仕方についても、勉強になる話がたくさん載っているので、ぜひ参考にしたいところです。
チェックしてみてください。
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『本物の教養』出口治明・著 幻冬舎
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◆目次◆
第1章 教養とは何か?
第2章 日本のリーダー層は勉強が足りない
第3章 出口流・知的生産の方法
第4章 本を読む
第5章 人に会う
第6章 旅に出る
第7章 教養としての時事問題──国内編
第8章 教養としての時事問題──世界のなかの日本編
第9章 英語はあなたの人生を変える
第10章 自分の頭で考える生き方
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