【市場原理にほどよく関わる働き方とは?】
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2007年に出た本で、『半農半Xという生き方【決定版】』という、時代を先取りした本がありました。
※参考:『半農半Xという生き方【決定版】』
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これは、半分農業で自給自足をして、半分は自分の才能で専門性のある仕事をする、というコンセプトの本でしたが、実際に著者である塩見直紀さんを訪ねて、京都府綾部市に行って、その先進性を肌で感じてきました。
このコンセプトが秀逸だったのは、「食べるために働く」という、疲弊する労働を減らし、残った時間を好きな仕事、得意な仕事に充てられること。
資本主義経済では、手段(お金)が目的化しがちですが、それを防ぐ、良いアイデアだと思いました。
最近は、こういった思想がさらに拡大し、ビジネスそのものにも広がってきているようです。
そんな時代のトレンドを紹介したのが、本日の一冊『半市場経済』。「里の哲学者」内山節さんと共著者の細川あつしさん、杉原学さん、梅田一見さんが書いた、注目の論考です。
本書の四章(梅田一見)では、事業家の「志」を可視化する「トライ・サークル・モデル(社会的価値、事業的価値、個人的価値の接点に志がある)」というものを提唱しており、どうすれば社会に貢献するビジネスが実現できるか、具体的モデルを示しています。
また、エシカル(倫理的)なビジネスを営むためのモデルとして、コーオウンド・ビジネス(従業員所有事業)、非成長型ビジネスを紹介しており、また事例として、二章(細川あつし)では、オーガニック・コットンのアバンティ、環境を破壊しかねない違法伐採を避け、面倒なプロセスを経てフェアウッドを使用している家具のワイス・ワイスなどを挙げています。
お金のために働く不毛なビジネスを逃れ、真に役立つ企業を創るためにどうするか、成立させるためにどんなアイデアがあるのかを示した、興味深い内容です。
さっそくいくつか、エッセンスをチェックしてみましょう。
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自分の本当にやりたい仕事をしながら生きていけたら、どんなによいだろうと思う人は多いだろう。それは、いまの仕事が空疎な忙しさによって成り立っているからである
経済が国富の増大を目指すものであるのなら、ここではたえざる経済発展が必要になる。だが経済の目的が自分たちの生きる世界の創造であるのなら、経済発展という概念自体が意味をもたなくなる
生活者としてのあなたはどうだろう。最近になるほど「エコ」「環境にやさしい」「オーガニック」「フェアトレード」などという言葉に親しむようになっていないだろうか。同じ値段ならそっちの商品を選ぶようになっていないだろうか。いつの間にか生活者としての私たちのほうが、企業人としての私たちよりずっと高いステークホルダー意識を持ってしまっているのである
エシカル・ビジネスを、「社会的ミッション」と「事業性ミッション」の両方を同時追求する「なりわい」だと定義している。両方のミッションをあわせて「デュアル・ミッション」と呼ぶ
エシカル・ビジネスは、利益を犠牲にして「よいコト」をするビジネスではない。「よいコト」をなりわいにするビジネスである
◆エシカル・ビジネスを「仕組み」として稼働させられるモデル
・コーオウンド・ビジネス(従業員所有事業)
・非成長型ビジネス
(会社がほどよく回る規模に達したらその後は投資を規模拡大に回すことをやめてしまう)
いわゆる「多職」という考え方である。自分のまわりにあるつながりのなかで、楽しみながらできる小さな収入源を複数確保しておく。そうすると、自分の生活そのものが仕事になるし、一カ所からすべての収入を得るよりもリスクを分散できる
「時間の私有意識」が希薄化すると、自分が生まれる前の過去や、自分が死んだ後の未来も、「共有された時間」として意識されるようになってくる(中略)こうなると、「自分が生きている間さえよければいい」というわけにはいかない。過去に生きた人の思いを汲み取れば、むやみに地域の伝統を絶やすわけにはいかないし、未来に生きる人のことを思えば、地域の資源を自分たちが取り尽くすわけにもいかない
ポスト産業資本、特に社会的対人サービスに及んでは、専門性をもった者が顧客・利用者との直接的な関わり合いのなかで使用価値をつくるのであって、他の専門家との協働も含めて、その個人の能力、創造性が価値を創造する
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新しい時代のビジネスの創り方、あり方が見えてくる、じつに読み応えのある本だと思いました。
今後、それなりの規模で発展する企業があれば、一気に注目されるのではないでしょうか。
この本には、新しさがあります。ぜひ、読んでおきたい一冊です。
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『半市場経済』内山節・著 KADOKAWA
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◆目次◆
序章 いま、どんな変化が起こっているのか
第一章 経済とは何だったのか。あるいは、労働の意味を問いなおす
──経済・コミュニティ・社会
第二章 エシカル・ビジネス──「縁」を結ぶ組織、「縁」を紡ぐ働き方
第三章 存在感のある時間を求めて
──「時間による支配」から「時間の創造」へ
第四章 ソーシャル・イノベーション
──経済活動を通じて社会変革をもたらす「産霊(むすび)の力」
最終章 現代社会と市場経済、非市場経済、半市場経済
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