【ルネサンス期に書かれた、名門貴族の処世術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062163012
本日の一冊は、レオナルド・ダ・ヴィンチとともに、万能の天才として名高い人文主義者、レオン・バッティスタ・アルベルティによる名著。
本書によると、<アルベルティ家は、メディチ家などと同様、フィレンツェ郊外の田園と山地に根をおく名門豪族であった>そうですが、14世紀後半には、この名門家族も激しい政争に巻き込まれ、フィレンツェから「追放」されてしまいます。
この『家族論』は、追放後、実業家として活躍したロレンツォ(著者の父)が亡くなる直前、病床に家族が集まり、会話した内容がもとになっており、まさに「名門貴族の処世術」と呼ぶにふさわしい内容になっています。
父親は家族に対し、どんな責務を負い、子どもをどう教育していくべきか、妻をめとるなら、どんな女性がいいか、お金や土地など、財産の保全、相続についてどう考えるべきか…。
現代人から見れば、多少古い要素もありますが、それを差し引いても、じつに興味深い内容です。
ロレンツォの遺言によれば、この世のすべての富よりも価値があるのは「美徳」であり、これこそが父親が子供たちへ贈る、最大の遺産だと言います。
ちょっと長いですが、引用してみましょう。
<名誉と名声だけがお前たちの最初に望むべきもので、けっして賞賛よりも富を優先してはならないし、名誉と高い評価を得るために物事を企てたなら、たとえ困難で努力が必要になろうとも、やり抜けないなどと考えてはならん。そして、その苦労の結果として感謝と名声以外の何も期待できなくても、それでよしとせよ。有能な人間は、時機がくれば、自分の労働の成果を享受するだろう。それを疑うな>
また、財産に対する以下の考え方(リオナルド)も、参考になるでしょう。
<富ほど脆いと分かっているものはありません。維持するために煩わしさと束縛をもたらすような贈り物のことを、僕は、父親から息子への適切な贈り物とは呼べません>
今から600年近く前に書かれた書ではありますが、その教えは、ほとんど古くなっていないばかりか、新鮮ですらあります。
混迷期にあって人生の指針が欲しい方に、子どもの教育の指針が欲しい方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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まばゆい虚飾の輝きではなく謙虚な光を見せれば、他人の妬みは消える。尊大に振る舞うよりも愛想よくしたほうが、相手の憎しみは和らごう。侮蔑と怒りで身を守る代わりに気立てのよさを身につければ、敵意も収まりついには失せる
名誉と名声だけがお前たちの最初に望むべきもので、けっして賞賛よりも富を優先してはならないし、名誉と高い評価を得るために物事を企てたなら、たとえ困難で努力が必要になろうとも、やり抜けないなどと考えてはならん。そして、その苦労の結果として感謝と名声以外の何も期待できなくても、それでよしとせよ。有能な人間は、時機がくれば、自分の労働の成果を享受するだろう。それを疑うな
富ほど脆いと分かっているものはありません。維持するために煩わしさと束縛をもたらすような贈り物のことを、僕は、父親から息子への適切な贈り物とは呼べません
壺にものを入れるのとおなじように、知性にはひとつのものしか入らないと言われます。もし最初に質の悪い酒を入れれば、その後ずっとその匂いが染み付くでしょう
ものに恵まれるよりもいい親戚に恵まれるほうが、もろもろの不運に立ち向かうのによっぽど頼りになり、ずっと役に立つということだよ。金銭なんて、どうしたって不安定で脆いものだ。でも親戚はつねに親戚であり続ける
公正で善良だと思われたいのなら、誰のこともけっして侮辱しちゃいけない。いつも皆に相応に報いて、威圧するのではなく、あくまでも礼儀正しい気さくな態度で他人を圧倒しなきゃならない
魂が奴隷にならないようにすることだ。貪欲だったり、吝嗇だったり、強欲だったり、臆病だったり、嫉妬深かったり、疑い深かったりすると、心は隷属する
いいかな、倹約の要諦とは、すべからく、物を蓄えるというよりも、必要時にそれらを使うところに存するのだよ
◆人が本当に自分のものと呼べるものは、三つある
「魂」「身体」「時間」
物がよければよいほど、長持ちするし、お前により大きな名誉を与え、それだけまたお前を幸せにし、他人からもっと尊敬の目で見られるようになるのだ
お金の価値が農園の価値よりも、本当に安定していると思うのか。お金の果実は土地のそれよりも、より大きな収益をもたらすと、お前は思うのか
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『家族論』レオン・バッティスタ・アルベルティ・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062163012
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◆目次◆
第一書 父親の義務と子供の教育について
第二書 結婚生活について
第三書 家政について
第四書 友情について
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