2013年2月3日

『アップル驚異のエクスペリエンス』カーマイン・ガロ・著  Vol.3120

【カリスマが遺したもの】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822249433

「去る者は日々に疎し」と言いますが、スティーブ・ジョブズの死後、急速に一連のジョブズ本が売れなくなっています。

決算で純利益が横ばい(前年同期比0.1%増)、メディアや投資家から「先行きに懸念」と言われれば、なおさらそうなるでしょう。

土井も例外ではなく、今日紹介する『アップル驚異のエクスペリエンス』を手にした時には、正直、「いまさらアップル本?」という印象を拭えないでいました。

しかしながら、大事なのは、カリスマが生きている間、何をしたかではなく、彼らがわれわれに何を遺してくれたかです。

そういう意味でこの『アップル驚異のエクスペリエンス』は、ジョブズがビジネス界に何を遺したのかを知る、いいきっかけだと思います。

これは私見ですが、ジョブズが遺したのは、優れた製品でも、デザインでもなく、はたまたプレゼンや名言でもない。(個人的に名言は大好きですが…)

彼がビジネス界に遺したのは、人々の暮らしを豊かにするというビジョンがあれば奇跡が起こるという、その一点にあったのではないでしょうか。

本書、『アップル驚異のエクスペリエンス』は、アップルが起こした奇跡のなかでもおそらく最も地味な、「アップルストア」についての研究本です。

このアップルストアを立ち上げるにあたって、ジョブズをはじめとするアップル上層部が考えたのは、以下の点だったと、本書は伝えています。

「世界最高の顧客サービスを提供しているのはどこか」

結果、彼らはフォーシーズンズにたどり着くわけですが、かつてフォーシーズンズが他のホテルに先駆けてやったような、優れたサービス精神をアップルも発揮し、成功したというわけです。

今となっては当たり前のサービスですが、以下はかつてフォーシーズンズが他に先駆けて行ったサービスの一部です。

・世界で初めて、シャンプーのボトルをすべての部屋に用意
・フィットネスルームを用意
・快適なベッド
・フルサービスのスパ
・キャッシャーではなくコンシェルジュを置く

本書には他にも、アップルストアが採用する人材の条件、混雑していても心地良い接客を実現するマルチタスク能力の開発方法、顧客の体内時計をリセットする方法など、さまざまなノウハウが書かれています。

いくつか例を挙げておきましょう。

<アップルが欲しいのは、「仕事」を探している人ではない。どうしてもアップルで仕事がしたい、それが自分の「天職」だと思うような人だ>

<アップルは財布ではなく心に手を伸ばす>(ロン・ジョンソン)

<実際の待ち時間は「数分」ではなく30分近くても、顧客の体内時計が何回もリセットされれば短く感じるのだ>

読者をワクワクさせるカーマイン・ガロ氏の文章もいまだ健在。

これはぜひチェックしていただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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小売業に携わる人間は、「店舗をどう変えれば顧客の暮らしを豊かにできるのか」と自問すべきだ──ロン・ジョンソンはそう訴えている

すべての出発点となったのは、ガレージに収まりきれないほどのビジョンだ。普通の人々にコンピューターを届けるというビジョンだ

「死ぬときいくらお金を持っているかなんてどうでもいいんだ。毎日、ああ、今日はすばらしいことをしたなぁと思いながらベッドに入りたい──僕にとってはそれが大事なんだ」スティーブ・ジョブズの言葉である

フェデックスには、「絶対に、必ず、翌日に(Absolutely,Positively, Overnight)」という3単語からなる有名なビジョンがある

「人々はコンピューターが買いたいわけじゃない。コンピューターでなにができるのかを知りたいんだ」(ジョブズ)

アップルが欲しいのは、「仕事」を探している人ではない。どうしてもアップルで仕事がしたい、それが自分の「天職」だと思うような人だ

アップルの場合、知識量よりも、他人の面倒をどこまで見る人物なのかが重視される

「アップルは財布ではなく心に手を伸ばす」(ロン・ジョンソン)

勇敢な従業員はオーナーシップを全うする

スティーブならどうするかと考えるな、正しいことをしろ

◆アップルのサービスの5ステップ
Approach──顧客一人ひとりを、あたたかいあいさつで出迎える
Probe──顧客のニーズを丁寧に聞き出して理解する
Present──顧客に解決策を提示する
Listen──課題や懸念などをしっかりと聞いて解決する
End──あたたかい別れのあいさつと次回の来店をうながす言葉で別れる

実際の待ち時間は「数分」ではなく30分近くても、顧客の体内時計が何回もリセットされれば短く感じるのだ

どうすれば誰かになにかを売れるのだろうかと考えてはならない。顧客にどう感じてほしいのかを考える。これがアップル流だ

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『アップル驚異のエクスペリエンス』カーマイン・ガロ・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822249433

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◆目次◆

はじめに 暮らしを豊かにする
第1部 社内の顧客を奮い立たせる
第1章 夢は大きく
第2章 笑顔を雇う
第3章 勇敢な社員を育てる
第4章 信頼を醸成する
第5章 フィードバックループを育む
第6章 マルチタスク能力を開発する
第7章 従業員に権限を委譲する
第2部 社外の顧客をもてなす
第8章 アップルと同じサービスの5ステップを採用する
第9章 顧客の体内時計をリセットする
第10章 メリットを売り込む
第11章 顧客の内に潜む才能を引き出す
第12章 感動の瞬間をつくる
第13章 筋書きとリハーサル
第14章 一貫した体験を提供する
第3部 舞台を整える
第15章 すっきりさせる
第16章 デザインの細部に気を配る
第17章 五感に訴える体験をデザインする
まとめ アップルの魂
謝辞
訳者あとがき
解説
参考文献・動画など

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