http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822244679
本日の一冊は、イスラエル・テルアビブ大学労働問題研究所の准教授、ギデオン・クンダが、急成長を遂げたハイテク企業に潜入し、企業の「文化操作」の事実を記述した一冊です。
調査の対象となったのは、急成長を遂げたハイテク系ベンチャー企業で、当時、エンジニアのパラダイスとまで謳われたテック社。
その際立った企業文化が、成長の原因とも凋落の原因とも言われ、かつて話題となった企業です。
本書は、エスノグラフィーの手法を用いて、この企業の労働環境やイデオロギー、行動様式、儀礼などを詳細に記述した一冊です。
あくまで客観的に、著者の主張をほとんど差し挟まずに書かれているため、学術書に慣れていない方には極めて読みにくい本です。
ただ、実際に企業文化の形成を試みようとする方には、詳細な分、極めて参考になる一冊だと思います。
企業文化と業績の関係を語る場合、ほとんどのビジネス書は因果関係を確かめもせずに、企業文化を肯定してしまいますが、本書では、極めて冷静な分析がなされています。
企業文化のもつ光と闇、双方にスポットを当てていますが、論調としてネガティブな面が強いのは、著者の出自にもよるのでしょう。
ビジネスパーソンとしては、組織が暴走する危険性や、そこで苦しむ人がいるという可能性を考慮したうえで、ポジティブに読みたいものです。
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■ 本日の赤ペンチェック
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「強い文化を持つ会社では、従業員1名につき1日あたり1~2時間も労働生産性が高い」
(テレンス・ディール&アレン・ケネディ)
「経営とは『規範の形成』、『信念の浸透』、『感情の生起』によって強い企業文化を創造する技である」
(『エクセレント・カンパニー』)
強い文化というイデオロギーの本質は、規範的統制という信念の言い換えであり、再確認
記録に残された経営幹部の意見、観察、考えは、おそらくもっともよく出会うイデオロギーの表現形態
メンバーの役割観で重要なのは、自己と組織の境界がぼやけていることである。メンバーの役割は、「強い帰属意識」、すなわち会社との切っても切れないつながりを基盤にして、わずかな「境界」とともに「組み込まれる」のだ(中略)理想は「自制心」と「自己修養」である。それが達成されれば、組織の利益と自己の利益が一つになる
呈示儀礼は経営の認めたメンバーの役割を演じさせ、押しつけ、強化する場
組織的自己は、組織への矛盾したかかわり方の間で揺れ動き、常に燃え尽きる脅威、または自分の幻想を人前で提示する必要に直面しながら、組織の主張する現実を盛んに、巧みに構成し、演じ、用心深く歩き、どちらにもくみしない存在となる
より高い地位につき、中心的な役割を担うことを強く願うが、実際そうなるにつれ、成員はますます規範的統制を受け、個人の自律を失う脅威にさらされる
組織人は「組織と闘わなければならない……なぜなら、降伏しろとの要求はたえまなく、強いため、組織生活を好きになればなるほど、これらの要求に抵抗するのは、あるいは要求に気づくことすらむずかしくなるからだ」
(ホワイト『組織のなかの人間』)
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『洗脳するマネジメント』
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■目次■
プロローグ
第1章 文化と組織
第2章 環境
第3章 イデオロギー──目に見えるテック文化の教典
第4章 呈示儀礼──イデオロギーを語る
第5章 自己と組織──「黄金の雄牛」の陰で
第6章 結論
エピローグ
付録 手法──ある種の告白
解説 神戸大学大学院経営学研究科教授 金井壽宏
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