【人気連載が書籍化!】
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本日ご紹介する一冊は、日立WEBマガジンで連載中の、「楠木建の『EFOビジネスレビュー』」約4年分のコンテンツを書籍化した一冊。
楠木建さんといえば、ベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』で見せた、鋭い競争戦略論で知られる学者ですが、本書では一転、人生を豊かに生きるための処世術を語っています。(ある意味、人生の戦略論と呼べるかもしれません)
※参考:『ストーリーとしての競争戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492532706
本書のなかで著者は、タイトルにもなっている『絶対悲観主義』を、仕事への心構えとして持つことを勧めています。
著者の言葉を引用すると、<「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもない」という前提で仕事をする>ということです。
戦略論の専門家が、思い通りにならないことを前提に論じているのが面白いですが、読み進めるうちに、「なるほど」と思わず膝を打ちたくなります。
『絶対悲観主義』だと、実行がシンプルになり、着手スピードが上がる。無駄に緻密な計画を立てなくなる、リスク耐性も失敗耐性も上がる。さらに、自然と顧客志向になる。自分の本当の能力が見えてくる…。要するに、メリットだらけになるわけです。
本書には他にも、著者が考える幸福の条件や、著者が若い頃に影響を受けた本や考え方、名言などが紹介されており、じつに勉強になります。
連載をまとめたコンテンツということで、「徒然なるままに」書いた感は否めませんが、その分著者の人間性や本音が垣間見えて、興味深く読めました。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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フランスの思想家のベルナール・フォントネルの言葉に「幸福のもっとも大きな障害は、過大な幸福を期待することにある」があります
仕事の向かう先にあるお客は自分の思い通りにならない。全戦全勝は不可能です。勝率には限界がある。野球であれば、どんな好打者でも四割はまず打てない。凡打のほうが多い。それでも負け方は確実にうまくなっていく。負け方がきれいな人こそ本当のプロです
「あれができます」「これができます」と言っているうちはまだまだです。悲観を裏切る成功が続いて、ようやく自信が持てるようになります。これは独りよがりのプライドではなく、地に足の着いた自信です
僕を含めて、人は「幸福になる」ということと、「不幸を解消する」ということを混同しがちです。不幸になる要因をどんどん潰していけば幸せになれるかというと、そんなことはありません。その先にあるのはただの「没不幸」です
私見では、人は幸福に対する構えで微分派と積分派に分かれます。(中略)例えば昇進したとか、自分の評価が上がったとか、直前と現在の変化の大きさに幸せを感じるタイプが微分派です。一方の積分派は、その時点での変化率よりも、これまでに経験した大小の幸せを過去か累積した総量に幸せを感じます
幸福の正体が記憶資産にあるとすれば、習慣的に日記をつけるのは幸福になるための優れた方法のひとつ
お金と違って時間には貯蔵性がありません。買うこともできません
詩人の高橋睦郎の名著に『友達の作り方』(マガジンハウス)があります。この本の中に友達の本質を鋭く抉る定義がありました。友達というのは偶然性、反利害性、超経済性という条件を備えた人間関係であるーー
品の良さの最上の定義だと僕が思うのは「欲望に対する速度が遅い」です。もともとは立川談志さんが言ったことだそうです
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何かの専門家が自己啓発書を書くと、普通は薄っぺらくなるものなのですが、本書は紹介されている人物や理論、引用、エピソードがしっかりしていてじつに読み応えがあります。
また、自己啓発書かと思って読んだら、じつは経営に役立つ、というのも、経営学者の著者ならではの効用ですね。
面白いので、ぜひ読んでみてください。
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『絶対悲観主義』楠木建・著 講談社
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◆目次◆
はじめに
第1章 絶対悲観主義
第2章 幸福の条件
第3章 健康と平和
第4章 お金と時間
第5章 自己認識
第6章 チーム力
第7章 友達
第8章 オーラの正体
第9章 「なり」と「ふり」
第10章 リモートワーク
第11章 失敗
第12章 痺れる名言
第13章 発表
第14章 初老の老後
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