【NHKアナウンサーたちの話し方の極意】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4046016760
雑誌のライターとして飲食取材をやっていた20代の頃、師匠からひとつ、言われたことがあります。
それは、決して「美味しい」とは書くな、ということ。
何かを取材したり体験したりした後に、「美味しい」「面白い」と主観を書くのは、二流の書き手だというのです。
それ以来、多少サボったことはありますが(笑)、おおむねこの原則を守ってきました。
「事実にこだわること」
これは、元ボストン・コンサルティング・グループ日本代表の内田和成さんもおっしゃっていたことです。
この原則は、話し方の世界でも一緒です。事実、上手な話し手は決まって、話に事実やエピソードを盛り込んできます。
どうせ学ぶなら、表面的な話し方テクニックではなく、きちんと評価される話し方を学びたい。
そんな方におすすめなのが、本日の一冊『誰からも好かれるNHKの話し方』です。
本書は、勤続20年以上のNHKのアナウンサーたちの話し方の極意を、NHK放送研修センター、日本語センターが取材してまとめた、贅沢な一冊。
高校野球の実況を担当したことのある中谷文彦アナウンサーの話を始め、同社ベテランアナウンサーたちのノウハウが学べる、またとない書籍です。
どんなノウハウが盛り込まれているのか、さっそく見て行きましょう。
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2006年のトリノオリンピックで、フィギュアスケートの女子シングルの実況を担当した刈屋富士雄アナウンサーは、金メダルを獲得した荒川静香さんの演技が終わった直後、このような実況をしました。「今日初めてのスタンディングオベーションです」この表現からは、これまでの選手の演技とは観客の反応が異なること、そして、荒川選手の演技がすばらしかったことが伝わります
高校野球の実況を担当したことのある中谷文彦アナウンサーも、「事実などのディテールを伝えるからこそ、感動してもらえる」と言います。たとえば、高校野球の試合で、ピッチャーが延長15回まで力投していたとします。ここで、「◯◯選手は、まさに疲れ知らず。怪物です!」と煽って盛り上げる手法もありますが、NHKアナウンサーは、こういうときでも取材で得た事実を積み重ねていきます。「◯◯選手は冬場に肩をケガして、1カ月間1球も投げられませんでした。投げられないならと、1日10キロの走り込みをして下半身とスタミナを鍛えてきました。エースとして一人で投げ抜いてきた甲子園。今日で3連投。しかも、今日はすでに延長15回、すでに180球を投げています」
「質素で、ぜいたくな」──正反対の言葉を組み合わせる
結果的に、川の増水の状況がその場から伝える最大の情報であれば、他の情報は捨てて、現在の水位を中心に情報を組み立て、カメラの前に立ちます
すべての話に必ず「軸」を決める
中谷アナウンサーが新人時代、山形放送局で働いていたときのこと。ニュース番組の中継で、翌年に山形で開催される国体に出場する選手を紹介することになりました。しかし、ただ頑張っている選手や記録が期待されている選手をそのまま紹介するなら誰がやっても同じ……。そこで中谷アナウンサーは、雪国のため冬場練習できないスポーツと選手を取り上げて、「雪国ハンデをぶっとばせ!」というテーマで中継レポートをつくると決めて、取材を開始しました
「今はカフェを経営しているんです。半年前に会社を辞めて、先月オープンしました。3年前に会社の異動で、制作部から営業部に移ったのがきっかけで、カフェをやってみたいという気持ちがわいてきたんです」このように現在の状態を示してから、過去にさかのぼるようにすると、聞き手は理解しやすくなります。
「現在」→「過去」→「未来」の順番で説明する
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ある程度勉強した人には、既視感のあるノウハウが多いと思いますが、基礎を学ぶにはもってこいの書籍です。
そして何より価値があるのは、同社ベテランアナウンサーの過去の実況の中身。
事実を誠実に伝え、聞き手の内面から感動を湧き起こさせる。そのための技術が本書には詰まっています。
ぜひチェックしてみてください。
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『誰からも好かれるNHKの話し方』
NHK放送研修センター、日本語センター・著 KADOKAWA
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◆目次◆
第1章 NHKアナウンサーは「黒子」に徹する【話し方「以前」の3原則】
第2章 NHKアナウンサーの「雑談力」【1対1で対話するコツ】
第3章 NHKアナウンサーは「聞く」が9割【聞き方のコツ】
第4章 NHKアナウンサーは「短く」伝える【わかりやすさのコツ】
第5章 NHKアナウンサーは「一人」をイメージして話す【人前で話すコツ】
第6章 NHKアナウンサーは「準備がすべて」【プロの事前準備】
第7章 NHKアナウンサーの「声」のつくり方【発声のコツ】
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