2016年3月14日

『マイナス金利』徳勝礼子・著 vol.4255

【マイナス金利で経済に何が起こるのか?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492396276

最近の経済においてホットなトピックといえば、「マイナス金利」が筆頭に挙げられるでしょう。

日銀が政策決定したことで、一気に注目されたこの「マイナス金利」という言葉。あまりにも常識とかけ離れていて、理解しづらいのですが、これが経済にどんな影響を及ぼすのか、ビジネスマン・投資家ならぜひ学んでおくべきでしょう。

本日、たまたま訪れた新宿の紀伊國屋書店に、この「マイナス金利」関連の書籍がずらりと並んでいたのですが、そのなかから一番骨太そうなものを選んでみたら、本日の一冊『マイナス金利』になりました。

骨太すぎて、途中で後悔したのですが、じつに詳しく解説していて、ここまで勉強になる本も珍しいので、頑張って読み切りました。

マイナス金利になると、お金が価値の保存手段でなくなることや、マイナス金利によって現在の100円が確実に99円になるとしたら、インフレと実質的に同じ状況だということなど、マイナス金利の本質が何となく理解できました。

また、マイナス金利によって不動産市場が盛り上がるなどとおっしゃっている方もいらっしゃいますが、ここに対しても著者は、独自の見解を示しています。

さっそく、気になったポイントを見て行きましょう。

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流動性がどれだけあっても通貨が円しかなければ、ヨーロッパのように強制的に政策金利をマイナスにすることなしには、マイナス金利は発生しない可能性が高い。しかし、ドルというスペシャル通貨への資金調達需要があることで、有り余る円の金利は実質的にマイナスになれるメカニズムが現実にできてしまったわけだ

低金利は低成長を招く

メリットのある投資が「長持ちする投資」であるとすると、実物投資のメリットが大きければ大きいほど、次の投資需要は遠ざかってしまう、ということになる。家は一回買ってしまえば次の需要は当面ないというわけだ

マイナス金利が最も効果を発揮する対象は、お金を借りられなければ買おうとは思わないけれど、耐用年数もそれほど長くなく買い替え需要がそこそこの周期で起こるもののように思われる。簡単に思いつくのは車であろうか。しかし、自動車ローンのマイナス金利は車の実質値下げに限りなく近い。そうなるとマイナス金利がデフレ脱却に効果を発揮するどころか、形を変えてデフレに化ける可能性の方が高い

マイナス金利環境で企業はお金を借りたいが、マイナス金利でお金を貸したい投資家はそれほどいない

マイナス金利によって現在の100円が確実に99円になるとしたら、これはインフレと実質的に同じ状況だ

デリバティブ市場はドル・ベースで上乗せ金利が最もワイドなのは日本国債であること、つまり国債は既に暴落してしまっていることを知っている

目標が実質2%と、ほぼ0%と推定されている潜在成長率対比で高飛車すぎるために、手段としての財政支出に途方もない負荷がかかっている。結果的に国民のストックを費消し、将来世代に回すつけは毎年35兆~40兆円ずつ増えている

最終的な社会保障の受益者は製薬会社とそこから便益を受ける関係者ではないか

人的資本こそが実は21世紀の資本なのではないか

定常経済に移行していけば、r(資本収益率)もg(経済成長率)も全体としては0に収束していくわけだから、今や超有名になったピケティのr>gという式も過去のものになるだろう

未來に不安を感じる若者たちの人的キャピタル・フライトが起こるという最悪のシナリオを招かない社会になることを切に望んでいる

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最終章に書かれていた、「人的資本こそが実は21世紀の資本なのではないか」という言葉や、人的キャピタル・フライトの懸念はもっともなことで、彼らの未來を考えた政策が、今こそ必要なのだと実感しました。

おそらく、経営においても、投資においても、働く人の未来を考える企業が伸びると言えるのではないでしょうか。

これは、読み応えのある一冊です。

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『マイナス金利』徳勝礼子・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492396276

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◆目次◆

序章 マイナス金利からの警告
第1章 なぜ世界的にマイナス金利が発生しているのか
第2章 マイナス金利の序盤戦である金利低下
第3章 マイナス金利の世界へようこそ
第4章 密かに進む金融・経済の浸蝕
第5章 ジャパン・プレミアムが映す日本経済
終章 マイナス金利とマイナス成長の循環は避けられるか?

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