2016年3月3日

『資本主義がわかる本棚』水野和夫・著 vol.4244

【世界の行方がわかる名著ガイド】
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「最後の相場師」とうたわれた伝説の男、是川銀蔵氏による唯一の自伝『相場師一代』に、著者が無一文になった時のエピソードが載っていました。

※参考:『相場師一代』
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本書によると、著者はこの時、子ども4人と妻を引き連れ、知人を頼って京都の嵐山に引きこもりますが、常人離れしたことに、日銭のために働くことをせず、3年もの間、図書館に通い続けました。

この間、貧困にあえいでいた家族は、「うちのお父さんはどんな境涯におちいっても、かならず何年か後に頭を上げてきます」と言い続けていたそうです。

3年後、著者は時代の流れを見極め、見事、株式投資で大勝。後に日本一の大金持ちになるのですが、やはり、時代の変わり目には、「読書」をして変化を見切ることが重要なのです。

古い時代の価値観に従って仕事を選んだり、ビジネスをしたり、投資をしたりすれば、やがてトレンドが変わって悲惨な未来を迎えることになる。

そうならないためには、ノウハウ書ではなく、長い目で時代を見通せる本格書を読み込むことが必要です。

とはいえ、本格的な書籍は読むのに骨が折れる。そこで欲しいのが、優れたナビゲーターによるガイドブックです。

本日ご紹介する『資本主義がわかる本棚』は、カリスマエコノミスト・水野和夫さんが、資本主義の行方を見定めるのに最適な書物を厳選し、書評の形でまとめてくれた一冊。

水野和夫さんの本からは、いつも大きな気づきをいただくのですが、今回も収穫がありました。

気になったポイントを、さっそくシェアさせてください。

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『嘘と貪欲』(大黒俊二)によれば、13世紀にすでに「資本論」を著した人がいて、価格投機も正当化していたというのは驚きである。13世紀以来、資本主義は元来「強欲」な性格を内包しているのである。だから、ダンテが商人を批判したのも理解できるし、アダム・スミスが『国富論』よりも「徳への道」をとく『道徳感情論』に愛着をもっていたのもわかる

◆F・ブローデル『地中海』
20世紀は「アメリカの世紀」であり、「石油の世紀」だったといっても過言ではない。この二つを合わせれば、「モータリゼーションの時代」でもあった

70年代の二つの事件(第2次石油危機も含めて)は、米国の覇権の終わりを意味するが、それだけではない。もっと重要な意義をもっている。オランダ、イギリス、そして米国の三つの覇権国が石油を支配してきた時代が終わり、ドル固定相場制の崩壊によって売り上げと仕入れ(エネルギー)が毎日変動する時代となったのである。売り上げから仕入れを控除したものが付加価値である。付加価値の増加率が鈍り、かつ成長(付加価値の増加)は市場任せとなり、近代の成長メカニズムが壊れ始めた

投資先がなくなれば、資本は自己増殖できなくなる。イタリア・ジェノバの超低金利は「地中海資本主義」に止めを刺したのである

◆ダニエル・コーエン『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』
本書の結論はとても考えさせる。つまりサイバーワールドの時代に入って、人類は事後に自らの過ちを正すことはもはや許されない。これは人類史上初めてのことで、人類は18世紀以降欧州が辿ってきた道筋を精神的には逆方向に走破すべきだと。すなわち、世界は無限だという考え方から閉じているという方向にである

◆カール・シュミット『政治神学』
資本主義の行動原理は「より速く、より遠く、そしてより合理的(科学的)に」である。企業はこれに忠実に行動すれば、利潤を極
大化することができ、経済も成長することができたのである

◆I・ウォーラーステイン『近代世界システムIV』
近代世界システムの根幹をなす資本主義的世界経済は中核・半周辺・周辺から成り立ち、「不等価交換」を前提に「世界的分業」を展開する。国内にも非正規社員という「周辺」を作り出す、21世紀のグローバリゼーションはそれを地でいっているのだ

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書評が1冊2ページ程度と、短すぎるのが難点ですが、カリスマエコノミストの視点が学べる、興味深いブックガイドだと思います。

セレクトされている書籍も名著揃いなので、興味のある方は、片っ端から読むといいでしょう。

個人的には、これからの投資・ビジネスのヒントが見つかり、大満足でした。

ぜひ読んでみてください。

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『資本主義がわかる本棚』水野和夫・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆

第1章 超長期で考える
第2章 資本主義はいかにして生まれたか
第3章 中世の終わり 近代の萌芽
第4章 日本の近現代を問う
第5章 帝国とは何だろうか
第6章 資本主義とグローバリゼーションの限界点

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