2014年11月6日

『現場論』遠藤功・著 vol.3761

【遠藤功氏10年間の集大成】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492557539

15万部のベストセラーとなった『現場力を鍛える』が発行されて、ちょうど10年。

※参考:『現場力を鍛える』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492531718

著者の遠藤功氏が、この10年で訪れた現場の知をまとめ上げた、決定版書籍が、ついに発売されました。

本書『現場論』では、著者が注目したデンソー、ヤマト運輸、良品計画、TESSEIなどの現場のエピソード、業務の知恵を抽出し、本当に強い現場とはどんな現場か、著者なりの見解を示しています。

著者によれば、現場力を形成するのは、以下の3つの能力。

1.保つ能力
2.よりよくする能力
3.新しいものを生み出す能力

「新しいものを生み出す能力」の一例として、新サービスを生み出したヤマト運輸のエピソードをひとつ紹介しておきましょう。

<ある日、松本さんは88歳の独居老人の家にいつものように息子さんからの荷物を届けた。「何かいつもと様子が違う……」と感じたものの、次の配達もあったため、声をかけることができなかった。その夜、その女性は孤独死し、発見されたのは死後3日経ってからだった。「あのとき、どこかに連絡していれば助かったかもしれない。少なくとも孤独死は防げた……」。松本さんは自責の念に駆られ、仕事も手につかなくなってしまった。高齢者が安心して暮らせる社会をつくらなくてはならない。そのためにできることがあるのではな
いか。「まごころ宅急便」は、こうした松本さんの強烈な原体験と思いから生まれた>

どうでしょう。感動的ですね。

著者は、現場の存在意義として、こんなコメントをしています。

<価値あるものを生み出し、「夢を形にする」ために現場は生まれ、存在する。夢こそが現場の動力源なのである>

本書には、こうした感動話と、現場力を高めるための実践ノウハウがまとめられており、現場を鍛えたい経営者、マネジャーには気づきの多い内容です。

・当たり前のことが当たり前にできるためには、まず「当たり前」とは何かを定義することが重要だ。これを「標準」と呼ぶ
・「非凡な現場」には例外なく愚直さという共通点がある
・「顧客を背負う」ことがナレッジワーカーを育てる大きな源泉となる

理屈っぽい装丁ではありますが、中身は相変わらずの熱弁ぶり。

明日からの現場改善の意欲が湧いてくる一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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生産性の低い現場には「しか」がじつに多い。「私しかできない」「彼にしか任せられない」「これしかやらない」など、仕事が属人化し、放置されたままになっている。標準化がまったく進んでいないのだ。一方、生産性の高い現場では「でも」が多い。「誰でもできる」「新人でもこなせる」など、標準化が確立され、誰にとっても「当たり前」になっている

経営者の気まぐれは、現場に大きな影を落とす。一生懸命取り組んでも、社長が代われば、また違うことをいいはじめる、経営の方針はコロコロ変わると気づいた現場は、本気で活動をしなくなる

◆ナレッジワーカーを育てる8つの項目
1.全員をナレッジワーカーに育てる
2.「コア人材」を育てる
3.チームで育てる
4.規律を埋め込み、自由度を高める
5.あえて制約を課す
6.細部にこだわる
7.顧客を背負う
8.ミッションを担う

それぞれの創意工夫はちょっとしたアイデアだが、それぞれの動物の習性や特徴がわかっていなければできない深いものだ。旭山動物園の真のすごさは、細部にこだわるナレッジワーカーたちによって
つくられている

「顧客を背負う」ことがナレッジワーカーを育てる大きな源泉となるように、「ミッション(氏名)を担う」現場もたくましく成長する(中略)デンソーに限らず、トヨタグループ企業の現場が強く、たくましい理由のひとつは、「モノづくりの空洞化を阻止するのは自分たちだ」という強烈な使命感によって現場が突き動かされているからだ

「よくやった」という「上から目線」の言葉ではなく、「俺はうれしい!」という仲間意識を感じさせる「横から目線」の言葉。そして、「また来るからな」とつながりを感じさせる言葉

日本企業の偉大な経営者に共通するのは、現場に敬意を払い、現場を大事にし、現場と共に生きようとする姿勢だ。それはまさに「現場愛」だ(中略)未来をつくり出すために「いま・ここ」を懸命に生きようとする現場をいつも心の片隅に置いている。そんな経営者に現場は黙ってついていく

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『現場論』遠藤功・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492557539

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◆目次◆

第I部 現場と現場力の「正体」を突き止める【論理編】
第1章 現場とは何か
第2章 競争戦略論と組織能力
第3章 現場力とは何か
第4章 「非凡な現場」をつくる
第5章 「合理的な必然性」とは何か
第II部 「非凡な現場」をどのようにつくるか【実践編】
第6章 現場力を進化させる道筋
第7章 「合理的な仕組み」とは何か
第8章 ナレッジワーカーを育てる
第9章 経営者の役割

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