【「充実野菜」などのヒットメーカーが秘訣を語る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534051859
本日の一冊は、「ぎゅっと搾ったレモン水」や「充実野菜」、缶コーヒー「ルーツ」などの開発で知られる著者が、ヒット商品開発の秘訣を語った一冊。
著者の商品開発のプロセスは以下の通りですが、一読する限り、消費者のホンネを引き出す調査力、新しい商品コンセプト、ネーミング、パッケージを考える力に長けており、それらの根っこにある力として、「(常識を)疑う」力があるとお見受けしました。
・気づいた潜在ニーズを元に、それを満たす商品のコンセプトや概要を固める
・調査によって企画の仮説の方向性があっているか検証する
・ネーミングやパッケージデザイン、味・機能・使い勝手といった商品としての価値を高めていく
・広告や宣伝、販促、広報の戦略を固める
・営業や生産、物流など、商品を市場に送り出すまでに欠かせない部署の協力を得る
著者の経験に基づくメソッドと事例がびっしり詰まっており、読みどころが満載なのですが、なかでも役立つのは、消費者の文句を組み合せてコンセプトを作る方法、そして「ヒットするものに共通していること」として挙げられている「メリットの多さ」と「はじめて」でしょう。
著者によると、消費者の潜在ニーズを探るには、相手の「文句」を聞けばいい。そして、その「文句」を複数組み合わせたものが、新しいコンセプトになるということなのです。
この不満からコンセプトを導き出すメソッド、本書の例を、ひとつご紹介しましょう。
重い(使い心地)
+
予想の3割増で高い(値段)
+
レンズ加工時間が長い(販売形態)
これら3つの「文句」を組み合わせて反対にすると、<軽くて安くてパッと購入できる>になる。これが売れるコンセプトになるというのです。じつに簡単ですね。
また、「ヒットするものに共通していること」として挙げられている「メリットの多さ」と「はじめて」ですが、著者によると、メリットは多いほどよく、「一石四鳥」くらいがよいそうです。また、人は「唯一」「世界初」「業界初」という、「はじめて」に弱いということも書かれています。
このように、本書には著者の隠されたノウハウがまとめられており、マーケター、商品開発担当には、気づきの多い内容です。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「野菜をたっぷり」と発案したわりには、野菜のえぐ味は好きではなかったので、「野菜の栄養素が摂れるのに、野菜嫌いでもグイグイ飲めるドリンク」がテーマです
『ぎゅっと搾ったレモン水』でいえば、この「ぎゅっと搾った」という表現にこだわりました。ただのレモン水ではインパクトに欠けますし、『レモンの◯◯』など、何か固有の名称をつくっても、レモン水の爽快さや粒入りであることを表現できません。「ぎゅっと搾った」と書けば、お客さんはレモンを搾っている光景を思い描いてくれます
「何で『リアルゴールド』をもっと自動販売機に入れてくれないんですか?」と私が尋ねると、彼はそんなことも知らないのか、というような表情で「だって自動販売機に商品を補充するとき、もし瓶が割れたら後始末に何時間もかかるんですよ」と答えたのです
では実際に、潜在ニーズをどのように発見すればいいのか。それはずばり、文句を聞くことです
文句から潜在ニーズを見つけ出す方法は、文句を組み合わせてみること
重い(使い心地)+予想の3割増で高い(値段)+レンズ加工時間が長い(販売形態)→軽くて安くてパッと購入できる
ネーミングのコツ:前から読んでも後ろから読んでも同じ回文になっていたりと、シンメトリーに見えるものです。エスエス製薬の鎮痛薬『EVE(イブ)』は字面として気持よく、読み方もインパクトがあって頭の中に残るいいネーミングです。日清オイリオの『Oillio』もカタチとして記憶に定着します。三洋電機の『アクア』は回文であり、水の意味合いが商品イメージと共通します
デザイナーから出されたデザイン案を検討する際は、まず図案を平面に置いてはいけません。実際にその商品が陳列されているときの様子に近い状態にして見るようにしてください。飲料であれば、そのパッケージ正面を真俯瞰(真上)から平坦に見下ろすことはほとんどありません。実際に陳列棚に置かれている状態にして検討すべきです。デザイン案が複数あるときに、それらを見比べるのもナンセンスです。消費者が目にするのはどれか1つであり、案同士を見比べて優劣を決めることは実際にはありえません。案は1つひとつ精査するか、もしくは競合商品と並べてみるのがいいでしょう
◆ヒットするものに共通していること
「メリットの多さ」「はじめて」
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『ヒットの正体』山本康博・著 日本実業出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534051859
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◆目次◆
プロローグ ヒット商品はどのように生まれるのか?
1章 私はこうしてヒット商品を生み出した
2章 誰も気づいていないことに「気づく力」
3章 問題解決のカタチを「商品」にする
4章 「あきらめない力」を鍛える
エピローグ 世の中は変化する。だから新たなヒットが生まれる
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