2013年10月19日

『ルールを変える思考法』川上量生・著 vol.3378

【ドワンゴ川上会長のビジネス理論とは?】
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本日の一冊は、携帯ゲーム、着メロ、ニコニコ動画など、画期的なサービスを次々と世に送り出してきた、株式会社ドワンゴの川上会長による一冊。

『ルールを変える思考法』とは、いかにも新生KADOKAWAらしい、挑戦的なタイトルですが、中身もそれにふさわしい、挑戦的な内容になっています。

本書の冒頭で、元ゲーマーである著者は、テレビゲーム的思考がなぜダメなのか、理由を3つ挙げています。

◆テレビゲームの致命的な欠点
1.人間が、コンピューターの決めたルールに従ってゲームをプレイする
2.反射的な思考能力の早さを競うゲームがほとんどである
3.コンピューター相手にゲームをやっても人間との付き合い方は学べない

なかでも重要なのは、1の部分。というのは、<現実社会で行われている競争の勝者は、「ルールを決めた人間」である確率が高い>からです。

また、これは土井も常々思っていることですが、<現実のゲームでは「ターンが長い」ということも難点のひとつ>です。

著者が指摘するように、現実のビジネスでは、<攻略のための一手を打ったときにも、それが正しかったのか間違っていたのかは、数分後や数時間後にわかるわけではありません>。

現役ゲーマーからすればちょっとムッとする内容でしょうが、言っていることは、じつに理に適っています。

本書では、川上会長が考える、ビジネス成功のための思考法、ヒットの条件、これからのITビジネスなどが語られるわけですが、なかでも有用なのは、著者独自の思考ツールである「エネルギー遷移図」。

これは、縦軸に「必要なエネルギー量」、横軸に「時間の経過」を取り、A=「ビジネスのスタート段階」、B=「一定の認知を得た段階」、C=「Bの状態へ移行させるときの反応障壁」をA→C→Bの順に線で結び、グラフ化したものですが、この
「エネルギー遷移図」で考えると、サービスやビジネスをどうやって普及させるか、戦略が考えやすくなります。

ちょっと複雑なので、詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、ここでは、例として挙げられている、ニコニコ動画の話を紹介しておきましょう。

ニコニコ動画には、政治家が生放送で答弁をするコンテンツがあるのですが、このコンテンツでは、最初に衆議院議員の小沢一郎さんが登場したことで、Cで必要なエネルギー値が一気に下がりました。

つまり、最初に有名人が登場したことで、他の政治家も続いて登場するようになったのです。

また著者は、<サービスの成長性を考える場合、そのサービスで“お金を取るかどうか”が大きな鍵を握ってきます>と述べています。

興味深かったのは、お金を取ることで、エネルギーの投下を続けなければいけない構造になり、不安定な状態に陥る、という指摘。

これは、以前紹介した、ヤマトホールディングス社長、木川眞さんの『未来の市場を創り出す』に書かれていた、「マーケット拡大の方程式」にも通じるものがあり、興味深く拝読させていただきました。

※参考:マーケット拡大の方程式
1.オンリーワンの商品を生み出す
2.ライバルの参入を受け入れ、競争環境を生み出す
3.拡大する市場の中で圧倒的なナンバーワンになる
4.最終的にデファクトスタンダード(事実上の標準)となる

※参考:『未来の市場を創り出す』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822274187

ヤマトの場合、「ライバルの参入を受け入れ、競争環境を生み出す」という部分に肝があるわけですが、やはり、成功する社長は、マーケット拡大のための方程式を持っているものです。

できる経営者の思考法を垣間見ることができて、じつに刺激的な読書でした。

これはぜひ、読むことをおすすめします。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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現実社会で行われている競争の勝者は、「ルールを決めた人間」である確率が高い

「自分が有利なルールを考え、実現する」という能力は、テレビゲームでは非常に身につけにくい

現実のゲームでは「ターンが長い」ということも難点のひとつです。攻略のための一手を打ったときにも、それが正しかったのか間違っていたのかは、数分後や数時間後にわかるわけではありません

今後はソーシャルゲームの世界からも、ライトなユーザーは消えていき、コアなゲーマーだけが残るという可能性はあります

競争相手が出てきたら、そのビジネスからは撤退したい

このゲーム(ギャラクティック・フリートレーダーズ)で面白かったのは、「この港では○○を安く売っている」「この□□は△△で高く売れる」といった情報が、ゲーム内に用意されている掲示板などを介してやり取りされていたことです。そうして楽しんでいるだけでもいいのですが、僕のやり方は少し違いました。僕は「銀河タイムズ」という新聞みたいなものを発行して、港ごとの物価の話やゲーム内で起きている事件などをまとめて、情報自体を売り買いして遊んでいたのです

課金サービスである限りは、エネルギーの投下を永続的に続けていかなければ人が離れていくなど、不安定な状態に陥りやすい

真のヒットは「説明できないもの」から生まれる

人の感情を動かすのは「わかりそうで、わからないもの」

購入後にもダイナミックに中身が変わっていくようにできるのが未来の電子書籍の姿

プラットフォーム側がマーケティングの主導権を握るようになると、コンテンツホルダーがブランド力をつけていくのは難しくなります

「ドラマ性」を持つことが、サービスに力を与える

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『ルールを変える思考法』川上量生・著 KADOKAWA
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◆目次◆

第1章 いちばんリアルなゲームは「現実世界」で見つかる
第2章 ビジネスというゲームで大切なこと
第3章 人を惹きつけるコンテンツのつくり方
第4章 マネジメントで大切なことは、ゲームが教えてくれた
第5章 特別鼎談 ゲームがうまい人間は頭がいいのか
第6章 ネットの発達は、人間をこう変えていく
第7章 「できるかもしれない」と思うことからすべては始まる

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