2012年10月27日

『長く繁栄する同族企業の条件』西川盛朗・著 Vol.3021

【同族企業に長寿企業が多い理由】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4891013176

世界に5千社、そのうち日本に3千社。

これは、創業200年を超える企業の数だそうですが、その多くがいわゆる同族企業(ファミリービジネス)。竹中工務店、キッコーマンなどが、その代表格です。

こうした同族企業のなかには、非上場の企業も多いのですが、注目すべきは、この同族企業の業績の良さ。

2007年4月号の「日経ベンチャー」(『オーナー企業の経営』倉科敏材・編著 中央経済社)によると、日本におけるファミリー企業のROEは非ファミリーの0.2%に比べ、1.9%と圧倒的。ROAで見ても、非ファミリー1.0%に対しファミリー1.6%と、業績には大きく差がついています。

最近でこそ、不祥事などで叩かれやすいファミリービジネスですが、じつはやり方次第で、<一般企業に比べて、持続的に発展することがより可能な経営形態>なのです。

本日ご紹介する『長く繁栄する同族企業(ファミリービジネス)の条件』は、125年以上グローバルに発展を続ける同族企業ジョンソン社(「カビキラー」で有名)で日本法人代表を務め、通常、ファミリーメンバーだけが学べるというケロッグスクールの特別講座を受講したファミリービジネスコンサルタント、西川盛朗(にしかわもりお)氏による一冊。

日本経営合理化協会が出している本ということで、税込1万円を超える高額本ですが、非上場の同族企業をここまで詳しく調べた労を考えれば、その価値は十分あると思います。

本書では、なぜ同族企業に長寿企業が多いのか、その理由を分析した後、同族企業の脆さと強さを分析。

過度なメセナ事業、研究開発などで経営破綻した林原や、一族の殺害事件にまで発展し、崩壊したグッチ一族、違法行為で崩壊した西武王国などの失敗例から、同族企業の弱点と、それをどう補うか、著者の考えが示されています。

一方、非上場で世界一の売上を誇る穀物メジャーのカーギル、東京タワー、国立劇場、東京ドーム、東京ミッドタウンなど、ランドマーク的建物をいくつも手掛ける竹中工務店、全米で働きたい会社No.1に選ばれたウェグマンズなど、強みを活かして成功した同族企業の例も数多く紹介されており、ここから成功する同族企業の法則を導いています。

ジョンソン・エンド・ジョンソン「我が信条」、マスヤグループ「三つの誠実」、「ヨークベニマル十二章」、「電通 鬼十則」など、同族企業の理念や社訓などが、詳しく説明されており、資料価値の高い一冊です。

同族企業の経営者はもちろん、後継者問題に悩んでいる方にも、おすすめの一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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10年前に創業90周年を迎えた会社数は2573社、そして今年100周年を迎えた会社数が1854社、たった10年で日本の伝統ある会社、つまり近代日本を築く担い手であった会社が719社も消滅してしまった

◆「優れたファミリービジネスの特長」から詳細をいくつか引用
・社員に何が求められているかが明確である
・短期的利益追求より明日の競争力を大切にしている
・後継者育成計画を確立している
・次なる成長分野を求め続けている
・得意分野、コア事業、コア地域をより強めている
・事務所、車、家具などを華美にしない
・投資はキャッシュフローで返済可能な範囲でおこなう
・過剰な借入金を避け、内部留保を厚くしている
・強い同族企業には強い幹部社員がいる

◆伊那食品工業の「公徳心」
通勤時は、車で道路を右折して会社に入ることを禁じている。なぜなら、会社の前の道は片側1車線の道路で、右折で待っていると、後続車が詰まってしまい、渋滞の元になってしまうからである

◆失敗事例:林原の場合
問題は、健社長が経営者として欠けている部分を担う人が社内にいなかったことである

◆失敗事例:グッチの場合
同族企業によくあるケースだが、グッチ一族の場合、崩壊の原因となったのが、株を息子たちに公平に分けたことである

たとえば、兄に70%、弟に30%、ただし弟を関連会社の社長とし、その関連会社の株については社長である弟が70%、兄が30%もつということにすれば、将来分社することも容易になるので、半分ずつ分けるよりいいだろう

のれん分けした家族の一つが不祥事を起こすと、本家も打撃を受けることになる。その典型例が料亭の「吉兆」である

後継者には、自分の目の黒いうちに、創業に近い、疑似創業ともいうべき経験を積ませるべきである

問題は、わたしたち人間がもっている「欲望」を「希望」と取り違えることである

◆「ヨークベニマル十二章」から一部引用
第一章 商売はお客さまのためにある。まず、お客さまの利益を考えよ。
第四章 食べ終わった時が販売の完了。まずかったらいつでも返金せよ。
第八章 オトリ商法ではお客さまは釣れない。全商品が平均して安いこと
第十二章 言葉や態度が店相をつくる。あなたはお店の代表である。

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『長く繁栄する同族企業(ファミリービジネス)の条件』西川盛朗・著 日本経営合理化協会出版局

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4891013176

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◆目次◆

第1章 なぜ同族企業に長寿企業が多いのか
第2章 同族企業の脆さ
第3章 同族企業の強さ
第4章 同族経営と「企業理念」
第5章 企業理念を再確立する
第6章 長く繁栄する「同族企業の条件10箇条」
第7章 120年以上発展を続ける同族企業ジョンソンに学ぶ

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