2012年10月18日

『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル・著 Vol.3012

【スタンフォード流、意志力を鍛える技術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479793631

ダイエット本ブームに水を差すようで恐縮ですが、ダイエットをすると、ビジネスやプライベートに甚大な問題が発生する可能性がある、ということをご存じでしょうか?

このことを指摘したのは、スタンフォード大学の心理学者として注目を集める、ケリー・マクゴニガル氏。

『スタンフォードの自分を変える教室』は、このマクゴニガル氏の超人気授業を完全書籍化した、ベストセラーです。

本書によると、「24時間禁煙した喫煙者は、アイスクリームをドカ食いする確率が高く」なり、「大好きなカクテルを我慢した人は、持久力のテストで体力が落ち」る。そして、最も穏やかならぬ例として挙げられているダイエットは、浮気を誘発する可能性があるようです。

本書によると、人間の意志力というのは、「使い果たしてしまう」性質のもの。

週刊誌やワイドショーのスキャンダル記事を見ると、われわれはつい、誘惑に強い人間と弱い人間がいると思ってしまいがちですが、じつは正しい使い方を知らないと、どんな人でも意志力を使い果たしてしまうことがあるのです。

睡眠不足(6時間未満はまずいらしい)やストレス、血糖値の低下、空腹、死亡記事を見ることなどは、いずれも人間を誘惑に負けやすい状態に追い込むものであり、きわどい判断を迫られるビジネスマンにとっては、望ましい状態とは言えません。

著者によると、われわれは空腹の時には、リスクの高い投資に手を出す傾向すらあるそうです。

では、この意志力を高める方法はあるのか?

本書には、そのためのちょっとしたアドバイスがいくつも載っています。

瞑想を行うこと、呼吸のペースを遅くして1分間に12回以下にすること、運動すること、十分な睡眠をとること、適度に甘い物をとること、お菓子の代わりにナッツを食べること…。

アドバイスだけを見ると、一見平凡な内容ですが、そこに至るまでに示されたさまざまな実験結果が興味深い。

逆に使えば、マーケティングに活かせそうなアイデアもいくつかありました。

<メニューにサラダが載っている場合は、50パーセントもの人がいちばん太りそうなものを選びました>
<甘い物のサンプルを食べた被験者は、ステーキやケーキなどのごちそうやセール品を買ってしまう確率が高くなる>
<人が死亡したニュースをテレビで観た視聴者は、高級車やロレックスの時計など、贅沢品の広告に購買意欲をそそられる>

意志力が強いと思っている人ほど誘惑に負けやすい、よいことをすると悪いことをしたくなる、自分に厳しくしても意志力は強くならない…。

本書を読んでいると、まったく、人間というのは、一筋縄ではいかない生き物だということがよくわかります。

どんなに素晴らしいビジョンや戦略、ノウハウがあっても、正しく自分をコントロールする方法と意志力がなければ、成功はおぼつかない。

自らを正しい方向に導くために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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自分は意志力が強いと思っている人ほど、誘惑を感じた場合に自制心を失いやすい

意志力とはつまり、この「やる力」「やらない力」「望む力」という3つの力を駆使して目標を達成する力のこと

スタンフォード大学経営学部教授のババ・シヴは、「人は気が散っているときほど誘惑に負けやすい」という研究結果を発表しています。誰かの電話番号を思い出そうとしながらデザートを選んでいる学生は、フルーツよりもチョコレートケーキを選ぶ確率が50パーセントも高くなります

定期的に瞑想を行なった場合、禁煙や減量に効果があり、薬物やアルコールの依存症への対策としても効果がある

元アルコール依存症患者で、お酒を見たときに心拍変動が上昇する人は、禁酒を続けられる確率が高い

不安、怒り、憂うつ、孤独なども、すべて心拍変動の低下や自己コントロールの弱さと関連しています。また、慢性の痛みや病気も、体や脳の意志力の保有量を減らしてしまう原因になるでしょう

呼吸のペースを遅くすると前頭前皮質が活性化し、心拍変動も上昇します(中略)呼吸の数が1分間に12回以下になれば、心拍変動は確実に上昇します

「6時間未満の睡眠」が脳を弱くする

◆モラル・ライセンシング
自分が以前に気前よく寄付したことを思い出した人たちは、そのような過去のよい行ないを思い出さなかった人たちに比べ、寄付した金額が6割も低い

「やることリスト」がやる気を奪う

メニューにサラダが載っている場合は、50パーセントもの人がいちばん太りそうなものを選びました

甘い物のサンプルを食べた被験者は、ステーキやケーキなどのごちそうやセール品を買ってしまう確率が高くなる

人が死亡したニュースをテレビで観た視聴者は、高級車やロレックスの時計など、贅沢品の広告に購買意欲をそそられる

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『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル・著 大和書房

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479793631
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◆目次◆

Introduction 「自分を変える教室」へようこそ
       ──意志力を磨けば、人生が変わる
第1章 やる力、やらない力、望む力
    ──潜在能力を引き出す3つの力
第2章 意志力の本能
    ──あなたの体はチーズケーキを拒むようにできている
第3章 疲れていると抵抗できない──自制心が筋肉に似ている理由
第4章 罪のライセンス
    ──よいことをすれば悪いことをしたくなる
第5章 脳が大きなウソをつく
    ──欲求を幸せと勘ちがいする理由
第6章 どうにでもなれ
    ──気分の落ち込みが挫折につながる
第7章 将来を売りとばす
    ──手軽な快楽の経済学
第8章 感染した!
    ──意志力はうつる
第9章 この章は読まないで
    ──「やらない力」の限界
第10章 おわりに
    ──自分自身をじっと見つめる

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