【「持たない」時代の生き方とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041103118
本日の一冊は、テレビなどでおなじみの流通ジャーナリスト、金子哲雄さんが、「持たない」経営、「持たない」生き方を提唱したビジネス読み物。
企業や個人が土地や生産設備を保有することのリスクを説明し、持つことがこれからの時代にいかにリスクとなるか、反対に、「持たない」経営がいかに強いか、実例を示しながら解説しています。
前半で、土地建物の含み益を担保に融資を受けて拡大し、それが仇となったダイエーの例を挙げ、対するイトーヨーカ堂がいかに「持たない」経営に徹し、ノウハウを磨いてきたかを指摘。
商品入れ替えの激しいコンビニのような業態が台頭した結果、メーカーが生産設備を持っても間に合わない現実、マーケティングに特化した方が良い事情などを説明し、現在の「持たない」経営へのトレンドを説明しています。
また、シャープ問題で一躍有名になったEMS企業、鴻海精密工業の儲けのカラクリに言及し、なぜメーカーが外注した方が合理的なのか、その理由を説明しています。
それによると、EMSは受託生産に特化しているため、営業経費がほとんどかからない。また、複数企業で生産ラインを利用するため、設備の稼働率を高めることができる。
これでは、持つことで競争優位性が失われるのも納得できます。
本書には、「計画的陳腐化」で需要を創造するSPA型のアパレル企業の手法についても書かれていますが、こうした動きがあらゆる業界で進み、商品のライフサイクルが短くなれば、ますます「持たない」経営が合理的になるでしょう。
これからの企業経営を考える上で、じつに参考になる一冊です。
「持たない」経営を推進すれば、究極的には「ノウハウと現金以外はまったく保有しない」ことになるわけですが、それによって、ますます雇用が減少することになるはず。
著者は、このトレンドを受けて、個人のキャリアや資産運用についても言及しており、こちらも参考になります。
研究開発や経営戦略などで目に見える成績を残す「プラチナカラー」を目指すこと、それができなければ「営業力」を磨くこと、不動産の売買は「職住接近」のトレンドを考慮して行うこと…。
流通ジャーナリストの視点から、これからの経営と生き方を説いた新書ですが、これはぜひ『ワーク・シフト』などと併せて読んでおきたいところ。
※参考:『ワーク・シフト』
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ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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住宅を購入することは、その人の機動力をある意味奪う
高まる職住接近の必要性が、不動産の価値を激変させる
インターネットの普及により、逆に人と会うことの重要性も高まった今、オフィスの都心回帰現象が顕著になってきています
現在は地方の倉庫化、将来は日本の倉庫化
我が国が人口減少社会になっているにもかかわらず、不動産ディベロッパーはマンションを建築しています。需給バランスを考慮すると既存のマンションは価値をさらに下げて、借り手の立場はさらに強くなるのです
ビジネスにおいて「資産を保有しない」とはどういうことでしょうか。究極的には「ノウハウと現金以外はまったく保有しない」ということです
ダイエーの快進撃には一つのパターンがありました。それは新規出店の際に店舗の土地建物を自社保有する。その土地建物の含み益を担保に銀行から融資を受けて、さらに店舗を拡大するというものです
職種を分けるとき、ブルーカラーとホワイトカラーという呼び方があります。しかし今後をしっかり生き残るなら、このどちらでもなく『プラチナカラー』になる必要があるでしょう。具体的には研究開発や経営戦略などで目に見える成績を残すことです。とはいえ、これをすべてのビジネスマンに求めるのは、いささか現実的ではありません。やはり現代のビジネスマンにもっとも必要なスキルは『営業力』だと思います
計画的陳腐化で需要を創造する
EMSは受託生産に特化しているため、営業経費がほとんどかかりません
東横インでは、基本的に最寄駅から徒歩5分圏内にあり、「地形」の悪い土地オーナーに対し、ホテル建設を依頼します。土地オーナーはホテルの建物を建設し、基本契約で30年間、東横インに貸し付け、賃料収入を得ます
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『「持たない」ビジネス儲けのカラクリ』金子哲雄・著 角川書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041103118
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◆目次◆
第一章 マイホーム「購入」「賃貸」の論争に決着
第二章 資産を持つ企業VS「持たない」企業
第三章 世界的製造業は圧倒的に「持たない」
第四章 日本で生き残る「持たない」企業
持たない経営は私たちを幸せにするのか?─あとがきにかえて
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