2012年7月12日

『探求 エネルギーの世紀(上)(下)』 ダニエル・ヤーギン・著 Vol.2913

【世界のエネルギーとビジネスチャンス】
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既存のシステムが行き詰まると、必ず革命が起こるものですが、現在求められているのは、今後の世界の成長を支える「エネルギー革命」でしょう。

このまま中国をはじめとする世界が成長を続けた場合、2030年に世界の電力消費は倍増し、エネルギー消費は現在の4割増になる見込みだそうです。

石油価格が高騰し、原子力は安易に使えない。そんな状況で、われわれはどうやって成長のためのエネルギーを確保していけばいいのでしょうか。

そんな疑問に答えてくれるのが、本日ご紹介する『探求 エネルギーの世紀(上)(下)』です。

著者は、世界的ベストセラー『石油の世紀』でピュリツァー賞を受賞した人物で、エネルギー問題の世界的権威であるダニエル・ヤーギン氏。

上下合わせて約900ページのボリュームに、著者の綿密な調査に基づくエネルギーの現状、そして未来の見通しが書かれており、これがまた厚さを感じさせない面白さです。

上巻では、石油や天然ガスを取り巻く各国の思惑と利害関係、リスク、そしてそれゆえに起こったドラマを、後半では、フクシマ後の新エネルギーと安全保障について、それぞれまとめています。

結論から言うと、天然ガスがこれまで以上に活用されそうだということ、「第五の燃料」である「効率」が求められるということ、そして新エネルギーが求められていることなどがわかりますが、決定的な解決策は、やはりまだ見つかっていないようです。

それでも、本書を読むことで、われわれが現在直面している問題がわかりますし、現在65兆ドルのグローバル経済がやがて20年後に130兆ドルに達することの恐ろしさも、実感できます。

また、本書でエネルギーを軸とした世界の歴史を振り返れば、世界中で起こった戦争・紛争の理由や、外交上のポイント、各国がさらされているリスクなどがわかり、国際情勢というものの本質を理解することができます。

ビジネスマンの教養として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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二〇年前には、グローバルなエネルギー問題ではほとんど姿の見えなかった中国が、この新世界では中央を占めている。それは中国が“世界の工場”であるばかりではなく、“中国の拡充”──毎年、農村地帯から都市部へ移動する二〇〇〇万人の住まいを建設する大規模な国家計画があるからだ

ほとんどだれもエネルギー源とは考えていない重要なエネルギー源がひとつある。節約あるいは効率と呼ばれるものだ

ダイナマイトの発明者でノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルの兄ルードビは、“ロシアのロックフェラー”と呼ばれている。嵐の多いカスピ海で石油を運ぶために、世界初の石油タンカーを建造した

石油国家をさらに衰弱させる病弊は、財政が硬直してしまうことで、これは手のほどしようがない。政府の支出は増えるいっぽうになる──これは“逆ミダス王の手”と呼ばれてきた。変動の激しい原油価格によって、政府の収入が変化してしまうことが原因である

一九九九年から二〇〇二年にかけて、世界の石油需要は一日一四〇万バレル増加した。二〇〇三年から二〇〇六年にかけては、その四倍近く──四九〇万バレル増加した

IPOの一〇年後、ペトロチャイナの時価総額は七〇倍以上に増大した

マラッカ海峡は、インド洋と南シナ海を結ぶ狭い水路で、中国の輸入する石油の七五パーセントがそこを通過している

オイルシェール資源の推定埋蔵量は、八兆バレルという膨大なもので、そのうち六兆バレルがアメリカにあり、ほとんどはロッキー山脈に集中している

アメリカの電力分野での天然ガス使用は、かなり増加する可能性がある

太陽電池が競争力を持つのは、送電線によって電気を届けるインフラが整備されていない地域、たとえば宇宙や遠隔地のジャングルの村などだ

スマートメーターがあれば、全体の需要がピークに達したとき、電力会社が家庭内での使用を削減することも可能だ

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『探求 エネルギーの世紀(上)』ダニエル・ヤーギン・著 日本経済新聞出版社
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『探求 エネルギーの世紀(下)』ダニエル・ヤーギン・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆

第1部 石油の新世界
第1章 ロシアの復帰
第2章 カスピ海ダービー
第3章 カスピ海の対岸
第4章 スーパーメジャー
第5章 石油国家
第6章 流通途絶
第7章 イラク戦争
第8章 需要ショック
第9章 中国の勃興
第10章 追い越し車線の中国
第2部 供給の安全保障
第11章 世界の石油は枯渇するのか?
第12章 非在来型石油
第13章 エネルギーの安全保障
第14章 ペルシャ湾の流砂
第15章 海上のガス
第16章 天然ガス革命
第3部 電気時代
第17章 交流電気
第18章 核燃料サイクル
第3部 電気時代(承前)
第19章 価格統制の崩壊
第20章 燃料の選択
第4部 気候とCO2
第21章 氷河の変化
第22章 発見の時代
第23章 リオへの道
第24章 市場を作る
第25章 グローバルな政治目標
第26章 コンセンサスを求めて
第5章 新エネルギー
第27章 再生可能エネルギーの再生
第28章 科学実験
第29章 輝く光の錬金術
第30章 風の謎
第31章 第五の燃料─効率
第32章 節約の溝を埋める
第6部 未来への道
第33章 炭水化物人間
第34章 内燃機関
第35章 偉大な電気自動車実験
結論 “偉大な革命”

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