http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794214537
本日の一冊は、かつて文人外交官として活躍し、今は自由の身となった著者が、外交官の仕事と実態を述べた、注目の一冊です。
華やかな大使の暮らしぶりや、面倒な引越し、神経が磨り減るような人間関係など、外交官の仕事や暮らしのあらゆる面に触れており、大変興味深い内容です。
とりわけ、ビジネスパーソンにとって役に立つのは、外交官流の人脈構築術と、情報収集術。
人間心理への深い理解と、それをふまえた巧みなインタビューテクニックは、メディアの人間にとっても役に立つと思います。
基本的には、外交官の仕事と、現在の外交に対する見解が示された本ですが、ビジネス的な視点からも、多くの示唆を含んでいます。
「外交とは何か」を内部から描いた貴重な文献として、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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外交とは国際社会の中で国としてうまくやっていくことだと簡単に言ったが、それは毎日垣根越しに挨拶するだけの近所付き合いとは違う。弱肉強食の世界である
外交は任地国政府とどのくらい良い関係を持っているかの競争でもある
大使館での序列は大使、公使、参事官、書記官、理事官の順番になっていて、臨時職員として専門調査員、派遣員がいる
ひと口に外交官といってもその仕事はいろいろで、その日常もさまざまである。だが政務とか経済になってくると、その幹部の日常はほぼ「読む、書く、話す、聞く、考える、会議をする、会食をする」といった言葉でくくることができるだろう
◆著者が先輩から教えてもらった外交官の心構え
「報道と事実というのはずいぶん違っているんだよ。ニュースを見て、そこらへんを直ちに見破ることができるようにならなきゃ駄目だよ」「国のために正しいと思ったら、マスコミでどんなにたたかれてもじっと耐えて、成果は後世に問うような心積もりでやるんだよ」
外務省には、総合外交政策局を含めて10の局がある。それはアジア大洋州、北米、中南米、欧州、中東アフリカのいわゆる「地域局」と、経済、経済協力、国際法、領事のいわゆる「機能局」に分類できる
制作をマスコミに支持してもらうことは本当に大事で、そのためには政策の根拠となっている情報、情勢認識をマスコミによく説明し、彼らと議論して納得してもらわなければならない
人は、自分がしゃべっていることを相手が十分評価していないと感ずると、もっと説明しようとするか、がっかりして諦めてしまうかの二つだから、前者の方に相手を誘導しなければならない
外務省はよく、情報を抱え込むといって批判される。毎日入ってくる情報を公開すれば、外務省も少しは見直してもらえるかもしれないが、そんなことをすれば外国に暗号を解読する手がかりを与えてしまう
政治家に自分の昇進を取り計らってもらおうとする者は、一、二回は思いを遂げることはできても、その後は、頼りにしていた政治家が死亡したり落選したりする憂き目に遭っている。政治家にコバンザメのように吸いつくよりは、仕事と人格で評価を高めていく方が王道だ
広報とは「思い込み」を操ることと見つけたり
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『外交官の仕事』
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■目次■
はじめに
第一章 大使館とは何をしている(していない)ところなのか
第二章 日本の外交官はどうやってつくられているか
第三章 本国にいる時の外交官――陸に上がった魚?
第四章 日本が持っている情報
第五章 日本外交の資産としてのODA
第六章 「文化立国」?――外交の手段としての文化
第七章 外交官の人事
第八章 交渉と政策決定の過程
第九章 「テレビ型直接民主主義」の時代の外交
第十章 日本に「戦略」はあるか
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