2026年3月7日

『起業家になる前に知っておいてほしいこと』 岩田彰一郎・著 vol.6919

【アスクル創業者、初の著書】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569860958

本日ご紹介する一冊は、アスクル創業者、岩田彰一郎氏による初の著書。

ご存知の通り、アスクルは事務用品メーカー、プラスの社内ベンチャーとして始まった企業ですが、今やその売上高は4811億円。

著者は、その基礎を作り、社長退任の2019年8月まで、業績を伸ばし続けてきた人物です。

メーカーが競合の製品も扱って小売業を営む。当時はそれ自体がタブーだったわけですが、なぜそんな事業が成功したのか。本書には、その精神的支柱と仕組み、取り組みが書かれています。

まず、精神の部分ですが、著者の決断を支えてきたのは、「はじめに意志ありき」という考え方。

迷った時には、「お客様のために進化する」「社会最適を考える」「すべての相手はイコールパートナー」「三面鏡経営」「大義に従う」という考え方に立ち返ってきたそうです。

今日、たまたまXで見かけた投稿で、「港区社長、限界集落へ」というアカウントの方が、こんなことをつぶやいていました。(原文ママ)

<今、ビジネスの世界全体が「楽」に向かってる。
・AIで楽しよう
・SNSで楽しよう
・仕組み化して楽しよう
・採用して楽しよう
・業務委託で楽しよう
・FIREしよう
冷静に考えて全部『ビジネスの本質』から逆張りに言ってる>

岩田彰一郎氏が大切にしたのは、まさにこの「ビジネスの本質」(=お客様)の部分です。

著者は、これから起業する人たちに、こんなアドバイスをしています。

<世の中のビジネスも、戦後構築された社会システムも、時代の変化とともに、社会最適になっていない部分が多くあります。それによって、誰かが何らかの不都合を被っています。そうした部分を社会最適な形に変えれば、今まで不都合を被っていたお客様から支持されるビジネスモデルが生まれます>

また、お客様のニーズを知ることに関しては、こんなことも言っています。

<ベンチャー企業の戦い方は「狭く深く」。目の前のお客様を深く理解すると、自然と広がりも生まれます>

事実、アスクルはお客様のニーズを深く掘り下げることで、事務用品以外にコーヒー豆や医療用品など、マーケットを広げることができました。

KPI(Key Performance Indicator)の設定に関しても、面白いことが書かれています。

<売上や利益、コスト削減額などをKPIとして設定すると、うまくいかないことが多い>

反対に、著者がやったのは、お客様から見た自社の魅力を実現するための指標を設定するということ。

商品に関していうと、品切れ数、SKU(受発注・在庫管理の最小単位)数、競合との価格差をKPIに設定しました。

商品の他には、「ロジスティックス」「配送」「お客様」に関しても同様にKPIを設定していたようです。(詳しくは本書を!)

常にお客様の方を向いて、惑わされない。そのために経営者に何ができるのかを、本書では淡々と説いています。

すべての起業家、経営者に読んで欲しい一冊だと思いました。

さっそく、本文の中から気になる部分を、赤ペンチェックしていきましょう。

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迷った時には、「お客様のために進化する」「社会最適を考える」「すべての相手はイコールパートナー」「三面鏡経営」「大義に従う」という考え方に立ち返ってきました

社会最適を追求することが社会課題の解決につながる

安倍晴明ら、陰陽師は、まじないや呪術といった「言葉」で国を動かしていました。それになぞらえて、私のいう「陰陽師の術」とは、言葉で相手の無意識に働きかけることです。すると、その人たちの意識が自然に変わっていきます。具体的には、従来のイメージを払拭させるために、ネーミングを一新するのです

「陰陽師の術」は、社内向けにも使いました。たとえば、営業スタッフを「エージェントサポート」や「フィールドカウンセラー」、物流を担当する部署を「フューチャープラットフォームアーキテクト」と名付けました。従来の営業や物流とは異なる、新しい役割を果たす必要があることを意識してほしかったからです

たとえば、ファイルを欲しいというお客様のもとを訪問したところ、オフィスの棚一面にまったく同じデザインのファイルがびっしりと並んでいました。担当者の方にお話を伺うと、「デザインを統一したいので、今から別の会社のファイルに変えることはできない」ということでした

なぜすべて一律にしたかといえば、誰かを特別扱いすれば、それが新たな既得権益となって、他のエージェントさんに必ず不満が生まれるからです

ベンチャー企業の戦い方は「狭く深く」。目の前のお客様を深く理解すると、自然と広がりも生まれます

売上や利益、コスト削減額などをKPIとして設定すると、うまくいかないことが多い

自社だけでなく、取引先まで視野を広げれば、コストダウンの余地があるところが必ず見つかる

実はアスクルは、2000年に上場するまで、外部からの資金調達をしませんでした。自分たちで資金を生み出す仕組みをつくったのです

短期的にはムダに思えることをしてでも、中長期的に大きな成長を勝ち取ることを意識したほうがいい

社長室はナシ。机も椅子もみんな同じ。「権威装置」を徹底的になくした

アスクルの社員でなくても「大アスクル」の一員

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良い経営の心構えとヒントが書かれていて、経営の迷いがなくなる一冊だと思いました。

上記で挙げたKPIに加え、終わりの方に書かれている、「社員が常に立ち返る十一カ条」も、経営の参考になると思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『起業家になる前に知っておいてほしいこと』
岩田彰一郎・著 PHP研究所

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◆目次◆

はじめに
第一章 ビジネスモデルの難問
第二章 事業活動の難問
第三章 お金の難問
第四章 組織・人事の難問
第五章 起業家・企業としてのあり方の難問
おわりに

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