2026年1月30日

『働かないおじさんは資本主義を生き延びる術を知っている』 侍留啓介・著 vol.6895

【資本主義の本質から考えるキャリア論】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334104738

本日ご紹介する一冊は、資本主義の現実を踏まえ、ビジネスパーソンがどうキャリアを築いていけばいいか、ユニークな持論を述べた一冊。

著者は、三菱商事、マッキンゼーを経て、経営コンサルティングや資金調達
・M&A支援などを手掛ける、バロック
・インベストメンツ代表取締役の侍留啓介(しとみ・けいすけ)さんです。

第1章「ハリボテの資本主義」で、資本主義発展の歴史とその背骨となった思想を紹介。

世の中で話題となった理論や書籍、果ては成功したカリスマ的人物までも軽やかに批判しており、信奉者たちにとっては耐え難い部分でしょう。(個人的には痛快でした・笑)

第2章では、キャリアアップがなぜ幻想に過ぎないのか、「努力」と「一攫千金」の視点から述べています。

こう書くと、単に概論・批判だけの本かと思われそうですが、そうではなく、個人がお金持ちになろうと思ったらどうすればいいか、極めて実践的なやり方と事例が書かれています。

特に、M&Aについて語った部分、リラクゼーションサロン「りらくる」竹之内氏のやり方に言及した部分は、読んでおくといいでしょう。

タイトルとなっている『働かないおじさんは資本主義を生き延びる術を知っている』の真意は、第3章「資本主義ゲームを生き抜くための処方箋」に書かれており、ここでは理不尽な資本主義をどう生き抜けば幸せなのか、あらゆるスキルが代替されるAI時代において何がコアスキル足り得るのか、ユニークな視点が示されています。

『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』で示された「E」「S」「B」「I」それぞれで幸せに生きる考えも示されており、これも生き方、働き方に悩む人にとっては役立つと思います。

BBM読者にはいないと思いますが、そもそも「E」「S」「B」「I」がわからないという人は、ぜひ以下の本を読んでみてください。

『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480864253

資本主義の行き詰まりにより、極端な理想論や悲観論が蔓延っていますが、個人として確実に幸せになるために、押さえておきたい資本主義のハック方法が書かれています。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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現代のキャリア論は、大雑把に言えば、「自己実現」にむけて「努力」することを前提としている。しかしこのキャリア論が時として私たちを厳しい状況に追い込む。「努力」は疲弊を生む。「自己実現」は搾取をもたらす。たとえば、「新しい働き方」「自由な働き方」として称揚されるフリーランス。個人レベルでみれば、自立した働き方や収入を実現すべく、たえまない競争に身を晒すことになる。しかし、マクロレベルでみれば、雇用の流動化と時間資源の労働力化をもたらしている。つまり、雇用規制を骨抜きにして、不安定な状況で最大限働かせるための施策ともいえる。自己実現はそのためのニンジンにすぎない

宮廷内に入り込んでいった高等娼婦らは、市民にとっても、華麗な衣装に身を包む宮廷の女性を最も身近に観察できる存在でもあった。そのため、高等娼婦らが宮廷で身につけ、さらに洗練させていった装いの文化は、都市の一般女性の間でも模倣されていくことになるのである

「プティ化」は、小資本と相性が良かった。大がかりな宮殿や、その中を彩る芸術作品等と違って、より小さい額で買える小ぶりで手軽なステータスシンボルは、蒐集しやすい。衣服、バッグ、アクセサリーといったブランド品の小物をあれもこれも集めたくなる欲望に女性は抗えない

男性にしても女性にしても、見た目だけに囚われていると言ってしまえばそれまでであるが、見た目こそが資本主義の本質だということは、見落としがちな視点である

その後(バブル後)、イギリスを含む欧州では、「株式会社離れ」が起きた。代わって流行したのは、パートナーシップによる共同経営である

そもそも「お金持ちになりたい」という欲求がなければ、お金持ちになることは難しい。しかし、「お金持ちになりたい」という欲求自体、ある種の精神病をもたらしうる。精神科医の中井久夫は、『分裂病と人類』(東京大学出版会)において、二宮尊徳など、多くの「成功者」が、家の「立て直し」に重きを置く「執着者気質」ではなかったかと述べている。つまり、成功の動機が新しい何かを実現したいという「建設の倫理」ではなく、以前の状態に戻したいという「復興の倫理」であったということを指摘している

大金を掴むには、自らの会社に高い価値をつけ、M&Aで売却するのが手っ取り早い

資本主義は、(まやかしかもしれないが)富や自由という夢をみさせてくれる点で、人々の欲求と強固に結びついている。資本主義から逃れようとして、性急な未来創造を試みると、かえって資本主義の魅力に足を掬われてしまいかねない。支配者打倒を掲げた民衆のヒーローが強権を振るい、貧困から抜けだした成金がかえって貧困層に冷酷になる、という逆説はどこにでもみられる

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資本主義で成功するには、資本家になるのが一番ですが、そうなったからといって幸せになるわけでもない、と資本主義を知り尽くした著者が述べている点が面白い。

かつ、それでも資本家になりたいならこう、資本家以外で幸せになるにはこう、と処方箋が示されている点が実用的で良いと思いました。

ぜひ、読んでみてください。

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『働かないおじさんは資本主義を生き延びる術を知っている』
侍留啓介・著 光文社

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◆目次◆

はじめに
第1章 ハリボテの資本主義
1 何が資本主義を生み出したのか
2 宗教としての資本主義
第2章 キャリアアップという幻想
1 奴隷と企業人
2 「努力教」に背を向けて
第3章 資本主義ゲームを生き抜くための処方箋
1 資本主義はやめられないのか
2 個人としてどう生き抜くか
おわりに
注と文献

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