2026年1月13日

『ラグジュアリーコミュニズム』 アーロン・バスターニ・著 橋本智弘・訳 vol.6882

【壮大なアバンダンスの思考実験】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4909237437

本日ご紹介する一冊は、先日ご紹介した全米45万部の話題書、『アバンダンス』に影響を与えた思考実験の書。

『アバンダンス』
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著者は、ロンドン大学で博士号を取得したジャーナリストで、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアンなどでも執筆している、アーロン・バスターニ氏。

どうやらこれが初の著書となるようです。

食物やエネルギー、医療サービス、最先端テクノロジーなど、あらゆるものが潤沢になっていくラグジュアリーなコミュニズムを目指そうというものですが、粗削りながら、魅力的な論考だと思います。

人類の歴史と産業の進化、テクノロジーの進展、経済思想家たちの議論などをレビューしつつ、行き詰まった資本主義の先にある世界を構想しており、われわれの社会・経済がどんな方向に向かっていくべきなのか、議論を展開しています。

話は、再生可能エネルギーから産業用ロボット、宇宙開発、ゲノム編集、フードテックにまで及び、これからの社会を考える上で必要となる、広範なジャンルをカバーしています。

議論のベースにマルクス、ケインズ、ドラッカーの3賢人を持ってきたあたりも面白く、現代においては、マルクスの主張が光っていることがわかると思います。

楽観的な未来予測を書いているだけではなく、われわれのテクノロジーやそれに伴うコストがどれぐらいのレベルにあるのか、具体的なところも記しており、未来を予見するための重要なヒントになると思います。

この手の本にしては珍しく、最先端の試みと同時に、企業名も具体的に明かされているので、投資の参考にもなると思います。

現在、AIや宇宙開発、フードテックなどで起業を考えている人にも、重要なヒントが示されていると思います。

とはいえ、おそらく一番刺さるのは、政治や行政に関わっている方々。

われわれ有権者も、この手の議論が出てきた時にすぐ反応できるよう、教養として読んでおくべき一冊だと思いました。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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火星と木星のあいだの小惑星帯に位置する小惑星プシケの例を取ってみよう。直径二〇〇キロ以上にもなるこの小惑星は、太陽系のなかでも最大級の小惑星のひとつである。この天体は鉄やニッケル、そして銅、金、プラチナといったさらに希少な金属から構成されており、鉄の含有量だけでもその価値は一〇〇〇京ドルにもなる

生態はいよいよ情報財のようなものになっていくのである。このことは、食料、自然、そして他の動物との関係はもちろんのこと、健康や寿命に対する関係をも変容させてしまうだろう

ボストン・コンサルティング・グループの創業者ブルース・ヘンダーソンは、のちにヘンダーソン曲線(より最近では経験曲線)と呼ばれることになる概念を考案した。彼が顧客とともに仕事をしていたときの観察にもとづくこのモデルは、生産能力が倍増するたびに生産物のコストは二〇パーセント低下することを示し、すぐに洗練された予測モデルとなった

一方では、情報は高価になりたがる。なぜならそれは価値があるからだ。然るべき場所に然るべき情報があれば、人生を変えてくれるだろう。他方では、情報はタダになりたがる。なぜならそれを引き出すためのコストはどんどん低くなり続けているからだ。要するに、このふたつの傾向は緊張状態にある。(未来学者スチュアート・ブランド)

マルクスの思想のなかで、十分に強調されていない一面がある。資本主義には、労働--動物や人間による労働、そして物理的労働や認知的労働--を漸進的に機械で置き換える傾向がある、という考えである

ローマーの定義によれば、テクノロジーの発展は「原材料を混合する際の指示(インストラクション)の改善」である

再生可能エネルギーは比較的優位にあるものの、最終的には化石燃料と同じ課題に直面することになる

プラネタリー・リソーシズの共同設立者のピーター・ディアマンディスはこう述べている。「最初の一兆ドル保持者は宇宙空間で生まれるだろう。私た
ちが話題にしている資源とは、数兆ドルの資産をもたらすものなのだ」

牛なしで牛乳を作るという課題に応えることができると考えている会社に、パーフェクト・デイ・フーズがある

富の共有を目指す赤の政治がなければ、エコロジーを重視する緑の政治は大衆の支持を得られないだろう

新自由主義との決別は、民営化と外注化の機械の電源を落とすことから始めねばならない

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ギリシャ語で「ノー」を表す言葉を「オクシ」と訳していたり(正しくは「オヒ」)、議論が訳者あとがきで摘されている3つの批判ポイントをはらんでいたり、完璧ではありませんが、こういう不完全で粗削りなものこそ、読む価値があると思っています。

そして、こんな面白い本を世に出してくれた訳者と堀之内出版さんに感謝したい。

政治の課題やビジネスチャンス、投資のヒントが湯水のように湧いてくる、強烈な本でした。

ぜひ、読んでみてください。

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『IKIGAI シンプルに、豊かに生きる』
エクトル・ガルシア、フランセスク・ミラージェス・著 長澤あかね・訳 大岩央・編・監修・解説

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◆目次◆

序 文 未来を求める六人の人物
第一部 楽園のもとの混沌
第一章 大いなる無秩序
第二章 三つの断絶
第三章 「完全自動のラグジュアリーコミュニズム」とは何か?
第二部 新たな旅人たち
第四章 完全な自動化 労働におけるポスト欠乏
第五章 無限の動力 エネルギーにおけるポスト欠乏
第六章 天空の掘削 資源におけるポスト欠乏
第七章 運命を編集する 老いと健康におけるポスト欠乏
第八章 動物なしの食物 栄養におけるポスト欠乏
第三部 楽園の発見
第九章 大衆からの支持 ラグジュアリー・ポピュリズム
第一〇章 根本原理 新自由主義との決別
第一一章 資本主義国家の改革
第一二章 FALC 新たな始まり
訳者あとがき 橋本智弘
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