【1日を3分割するデンマークの働き方】
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ギリシャに留学していた頃は、毎週末、島やビーチに行って遊んでいました。
ある週末、アテネから1時間ほどのビーチで食事をしていた僕は、頼んだカラマリ(イカのフリット)が30分経っても出て来ず、思わずイライラして、「まだ?」と尋ねました。
見ると、そのレストランは200席ほどあるのに、店員はシェフ1人とウェイター1人しかいない。
ウェイターは面倒くさそうに僕のところに寄ってきて、こう言ったのです。
「お前はここにゆっくりしに来たんだろ? いくらでもゆっくりしていいんだぞ」
商売は回転率を上げてナンボ、という常識に縛られていた僕は、衝撃を受けました。
そして日本に帰国して、丸の内の人気店に行った時、この国の病に気がついたのです。
たった20席のレストランに10人もの人が働いていて、店内は狭く、テーブルも小さい。
値段はギリシャの3倍なのに、お客様の滞在時間はたったの20分から30分でした。
これがギリシャなら、値段は半額以下で、2倍以上、ゆっくりできる。
われわれの「常識」や「システム」がわれわれを不幸にしている。
そのことに気づいたのが、その後の人生に大きな影響を与えたと思っています。
本日ご紹介する一冊は、読売新聞の記者としてキャリアをスタートし、ワシントン支局特派員、ハーバード大学ケネディ行政大学院を経てデンマークに移住した著者が、幸福度世界トップクラス、ビジネスの効率性世界No.1のデンマークの考え方を紹介した一冊。
ハーバード大学のタル・ベン・シャハー教授、IMDのブリス教授、シンクタンクや各分野の専門家、ビジネスパーソンなどへの取材をもとに、デンマークの生産性の秘密と豊さを生み出す考え方に迫っており、日本人がこれからの生き方を考える上で、参考になる内容です。
なかでも、1日を3分割する「8-8-8」のアイデアや、成功のものさしがあいまいな社会で豊かに生きるための考え方は、価値観が多様化した現代の日本人にとって、良い生き方のヒントとなるに違いありません
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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IMD内にある「世界競争力センター」の所長で、ランキングを統括するアルトゥーロ・ブリス教授に、デンマークの競争力の高さについて解説をお願いしてみた。教授の説明はこうである。IMDのランキングでは、競争力を「適切な経済モデルによって、経済的豊かさを生み出す国の能力」と定義している。そして、ここで言う経済的な豊かさには、二つの構成要件がある。一つは、適切な産業政策によってもたらされる生産的な経済や、天然資源の量など。もう一つは、生産性を個人の生活の質に転換できることだ
男女間の賃金格差はデンマークは5・4%であるのに対し、日本では22%と大きな開きがある
IMDのブリス教授は、英語力が高い国の利点は、人材プールの質の向上だと指摘した。人々が積極的に海外で経験を積み、海外からも才能ある人材を呼び込める相互作用が起きるためだ
デンマークのデジタル化の強みは、情報がビッグデータとしてつながり、効率的な運用ができる点だろう。日本のマイナンバーにあたるCPR番号の導入は1968年にさかのぼり、生まれてからすべての医療記録、住所や婚姻関係、銀行口座など、あらゆる情報と紐付いている
日本とデンマークを行き来しながら思うのは、日本の人たちの「できない」「足りない」という思い込みが、最大の障害ではないか、ということだ。何かがうまくいかない時、ないものを増やそうとするのではなく、減らすことを考えてみてはどうだろう。減らすものは二つある。一つは、やることの量。そしてもう一つが、できないという思い込みだ
「8-8-8」
ビビは、「デンマークでは昔から言うんだけどね」と、8時間労働、8時間の自由時間、8時間の休息という、労働運動で使われてきたスローガンを教えてくれたのだった
北欧の幸福度の高さ
=不幸を取り除くのがうまい社会+時間を幸福に有利に使えること
ダニエル・カーネマンの研究
働く母親にとって、子どもと過ごす時間は、テレビを見たり、買い物をするといった時間よりも、喜びを感じるレベルが低かった
「8-8-8」の、真ん中の自由時間がしっかりしているということは、アイデンティティの分散がしやすい、ということでもある。仕事上の自分がぱっとしなくても、市民としての自分、趣味人としての自分、親としての自分には価値があると思えれば、今日の自分に”マル”をあげやすくなる。幸福を感じる軸足は、より安定したものになるだろう
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仕事に自分のアイデンティティを重ねていた著者が、デンマークの労働観に触れ、人間らしい生き方を取り戻す。
その過程に触れることで、読者自身も変わることができる、そんな一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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『第3の時間』
井上陽子・著 ダイヤモンド社
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◆目次◆
はじめに
Part1 短時間労働で豊かな国
第1章 ほどほどにしか働かない国が「競争力世界No.1」?
第2章 しっかり稼ぐデンマークの仕組み
第3章 短時間労働は理にかなっている
Part2 時間こそ力
第4章 1日を3分割する考え方
第5章 なぜ北欧は幸福度が高いのか?
Part3 私はいかに4時に帰るようになったか
第6章 「午後4時に帰る」を試してみる
第7章 私を縛っていた成功のものさし
おわりに
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