2025年12月15日

『偽善者』 箕輪厚介、幻冬舎編集部・編 vol.6864

【愛される起業家の条件】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344045386

本日ご紹介する一冊は、スタートトゥデイ(現・株式会社ZOZO)の創業者であり、稀代の起業家、アートコレクターである前澤友作氏の50歳の節目に企画された、「チーム前澤」50人のメンバーによる、メッセージ集。

もともとは、50歳の誕生日に50人の近しい人から証言を集めてサプライズとして贈ろうとしたものらしいですが、実際にでき上がってみると、多くの人にとって示唆に富んだ本であるということで、急遽出版が決まったようです。

50人の顔ぶれが豪華で、サニーサイドアップグループ代表取締役の次原悦子氏、NOT A HOTEL創設者の濱渦伸次氏、「田端大学」塾長の田端信太郎氏、クリエイティブ・ディレクターの岸勇希氏などが、歯に衣着せずに、自分が感じた「前澤友作」と、そこからの学びを語っています。

全体を通じて感じられるのは、前澤氏のビジネスセンスと美学、スピード感、仕事の細部へのこだわり、驚くまでの集中力とチームメンバーへの愛情です。

全員が前澤氏から多大な迷惑をかけられているのに、それを楽しそうに語り、氏の期待に応えようとする。

本当に良いリーダーというのは、こういう人のことを言うのかもしれませんね。

他にも、チームを一体化させるコミュニケーションや、粋に感じる個別のやり取り、ビジネスを前に進めるアイデアなど、起業家なら、ぜひ読んでおきたい示唆に富んだ内容が書かれており、ぜひおすすめしたい内容です。

本書には、前澤氏を育てたご両親のコメントも紹介されているのですが、お母様が語った子育ての話は、グッときました。

これから子育てする方には、ぜひ読んでいただきたい部分です。

また、スタッフが不祥事を起こした時の前澤氏のコメントも感動的で、この方には、松下幸之助と似た企業観があるのだな、と思いました。

元子会社社長、宮澤高浩氏のコメントを紹介しましょう。

<社員がここでは言えないような大きな不祥事を起こしたことがあったんです。「もちろん解雇しかない」と僕はすぐに思ったし、ZOZOの他の役員も同じ考えでした。ところが、経営会議でその話を出した時、前澤さんの反応はちょっと意外なものでした。「解雇はしない。だって、会社って社会の縮図でしょ。失敗する人もいる。間違える人もいる。でも、そういう人を受け入れる場じゃないとダメだと思う」>

目立つゆえに賛否両論ある経営者ですが、なぜ前澤氏が愛されるのか、なぜ一流の人間が周りに集まるのか、その秘密がわかる一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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今思えば、あれは「30億程度で満足するな」という前澤さんなりのエールだったと思うんです。もっと目線を上げろ、上を目指せというメッセージ。さらに前澤さんに言われたんです。「30億くらい3年で使い切れ」と。だからその通りにしました。狂っていたと思いますよ。前澤さんに狂わされたと言ってもいい。でも前澤さんの近くにいると、もっと狂わなきゃと思ってしまうんです(濱渦伸次氏)

前澤を見ていてつくづくすごいと思うのは、「考え続ける力」があることです。発想が面白いとかそういう表面的なことではなく、実はもっと地味で、執念深い力がある。ひとつのことを何年も頭の片隅に置いて、いつか実現できるタイミングが来るまで腐らせずに持ち続けている。あれが本当にすごい(小野光治氏)

「クソサラリーマン」と同じく前澤さんによく言われたのが「お前、誰見て仕事してんだよ!」。社長に”当てに行く”ような仕事をすると、「お前が見るべきは俺じゃなくてユーザーだろ? ユーザーのことをいちばんに考えて仕事しないでどうすんだよ」と叱られました

2010年ごろ、「年間売上365億円」という目標を立てたことがありました。前澤さんは「ワンデイ・ワンミリオンだ!」って、みんなを煽ってましたね。(中略)こういうアイコニックな語呂合わせは前澤さんの得意技です。「ワンデイ・ワンミリオン!」の次は555億で「ゴーゴーゴー!」その次の840億は「ハシレ(走れ)!」今でも全部覚えてますよ(西巻拓自氏)

私はそうした友作の姿を見ていて、子育てについて心に決めたことがありました。それは「夢中になっているときは止めない」という方針です。親から見て意味が分からなくても、本人にとっては何か意味があることなのだから、友作がやりたいことは中断させない。時間がなく止めさせる時は、後日、ちゃんと機会を作る。そうしないと後悔が残るような気がしたからです(前澤朋子氏)

僕が本当にすごいなと思ったのは、前澤が「先行予約」というシステムを考え出したとき。レコードは仕入れたら仕入れた分だけ売れる。でも仕入れるだけの資金がないから、たくさん仕入れられない。そこで前澤は「先行予約」という名目でお客に先払いさせることを思いついた(堀田和宣氏)

「うん、そういう考え方もある。優秀な人だけを集めて、いい会社作って、上場してバーンってやる。それもきれいだと思うよ。でも俺の美学には反するんです。会社って社会の縮図だと思っていて。社会っていろんな人がいるじゃん。そういういろんな人を巻き込んで、どんな人でも働けるような会社
の方が美しい会社だと思う。(中略)社員が不祥事を起こしたときも、周りから『なんで残すんだ』って言われても、『だったらお前が支えろよ』って言っていた。そういう会社の方がかっこいいと思っていたんです。みんなで面白いことをやりたいだけなんです(以下略)」(前澤友作氏)

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「がっかりさせたくないと思える人が身近にいることは大切だ」と、ウォーレン・バフェットが語ったそうですが、本書に登場する50人にとって、前澤友作とはそういう人物なのでしょう。

どんな人間がリーダーとして人を伸ばすのか、人のポテンシャルを引き出すのか、本書はその本質を教えてくれる一冊だと思います。

50人50様の「前澤友作」像。

起業を志す方は、ぜひ読んでみてください。

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『偽善者』
箕輪厚介、幻冬舎編集部・編 幻冬舎

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344045386

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0G48JZDHF

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◆目次◆

本書について
第一章 こだわりとわがまま
第二章 集中と苛立ち
第三章 凡庸と反骨
第四章 センスと悪戯
第五章 愛と偽善
偽善者の告白
前澤友作 人生年表

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