【売上には2種類ある】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798189782
本日ご紹介する一冊は、P&Gでブランドマネージャー、マーケティングディレクター、ロート製薬で執行役員マーケティング本部長、ロクシタンジャポンで代表取締役、スマートニュースで日本および米国のマーケティング担当執行役員を歴任した著者が、マーケティングにおける『良い売上悪い売上』を論じた一冊。
経営をやっていると何となく直感でわかるものですが、具体的に言語化しろと言われるとなかなか難しいこの問題に、明確な定義を与え、企業にとって理想的なマーケティングとは何か、どうすればそれが実現するのか、かなり詳細に論じた、実務家向けの一冊です。
「はじめに」で、<本書では、基礎的な財務知識が不可欠になります>と書いており、ちょっと身構えましたが、実際には損益計算書が理解できればOKなレベルです。ご安心ください。
まず定義からご紹介すると、本書でいう「良い売上」とは、「継続的に利益に貢献する売上」のこと。
反対に、「悪い売上」とは、「一過性で利益に貢献しない売上」のことです。
どうすれば前者と後者を見極められるのか。
著者は、そのために売上を「利益貢献」と「時間軸」で区別することを推奨しています。
具体的には、<初回購入の方、2回目購入、3回目購入やそれ以上の継続購入、といった継続性に応じて顧客を区別して把握する>こと。
なぜなら、リピート客は、初回客に比べ、利益貢献度が高いからです。
また、マーケティング施策を評価する際に、プロダクトの平均購入サイクル(動画配信のサブスクなら1カ月、ヘアケア製品なら2、3カ月、自動車なら7、8年)を考慮することも説かれています。
<部門や個人の評価が売上にひもづいているから売上ばかり見てしまう>という指摘ももっともで、マーケター以外に経営者も読んでおいた方が良い内容です。
事例として示されているニューバランスの9segsの分析例や、長期思考のための「2つの要素」、新商品を投入しがちな企業への戒め「ミルフィーユの崩壊」などは、特に読んで欲しい内容でした。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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常連さんが連れてくる方は同じく常連になりやすい
そのカテゴリーの平均購入サイクルより短期で評価をするなら、継続顧客よりも、その短期で獲得可能な新規顧客数と売上を指標の主体にせざるを得ません。そして、短期で見る限り、売上を引き上げても「利益が上がるかどうか」はわからないのです
「売上を上げる」のではなく、戦略的に「利益につながる売上」に集中する必要があります
重要なのは、新規顧客=悪い、という二者択一的な捉え方ではなく、「継続につながりやすい新規顧客を集める」ことであり、「継続していただけるようにプロダクトを磨く」こと
利益を個人の評価に組み込む方法
(1)営業利益ベースのLTVを活用し、顧客との長期的な関係性が利益にどうつながっているかを評価します。ロイヤル顧客の維持率や獲得数、顧客離反率の改善度なども有効な指標です
(2)利益率や営業利益額そのものの目標達成度を、担当範囲(プロダクト、顧客、プロジェクトなど)ごとに評価することも有効
(3)プロセス評価の導入
(4)利益貢献には時間がかかるため、評価期間も柔軟に設計
(5)良い売上の創出は個人だけで成し遂げられるものではないため、チーム評価の導入も重要
売上は「ユニーク顧客数×平均購入頻度×平均購入単価」なので、原則としてこれらの3つの変数がバランス良く成長し続けることが理想
粗利ベースの判断は「利益性の低下」のサインを見逃す
「価値の再評価」が継続購入(リピート)につながる
離反顧客の復帰コストは、多くの場合、新規獲得よりも安くなる傾向
長期思考のために見るべき2つの要素
・顧客の平均購入サイクル
・施策の潜在顧客へのリーチ率
新商品の売上の頭打ちは早く、降下率は大きい
ビジネスの現場では「プロダクトライフサイクル理論でいう『成熟期』『衰退期』に入ったからもう売れない」として次の商品投入に向かうことがよくあります。ですが、ほとんどの場合で、まだ大きな伸びしろを残したまま諦めることを正当化している
ミルフィーユの崩壊を起こさない唯一の対策は、「今売れているのは何で、それはなぜか」をつかみ、主力商品を伸ばすこと
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売上管理、利益管理、カスタマー分析の基本が書かれた本で、カリスママーケターのコックピット内部を見せてもらった印象。マーケターがどの指標をどう見ればいいのか、勘所がよくわかりました。
まさに実務家向けの内容だと思います。
マーケター、経営者は必読。投資家が読めば、今の売上が未来の成長につながるかどうか、見極める目が手に入ると思います。
ぜひ読んでみてください。
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『良い売上悪い売上』
西口一希・著 翔泳社
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798189782
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◆目次◆
はじめに 売上には、2つの”種類”がある
序 章 「良い売上」「悪い売上」とは何か?
第1章 「良い売上」を積み上げるために必要な知識
第2章 ロイヤル顧客がなぜ重要か 「価値の再評価」と3つの法則
第3章 「良い売上」はLTVが高い 時間軸で見る売上と利益
第4章 良い売上をもたらす顧客を見つける3つのフレームワーク
ID POS分析、5segs、9segs
第5章 経営を左右する二大問題とその対応
第6章 BtoBにおける良い売上、悪い売上 監修:福田康隆氏
特別対談 「一休.com」における良い売上の最大化
おわりに
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