【哲学者が教える、やさしさのヒント】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763142348
以前にも書いたかもしれませんが、昔、母親に「優しさの秘訣って何だと思う?」と聞いてみたことがあります。
母親の答えは、「余裕だべな」でした。
人に優しくするためには、「余裕」が必要。
ということは、「優しさ」は「続かない」ことになります。
本日ご紹介する一冊は、現代ドイツ哲学を専門とする研究者が、「やさしい」が続かない理由を考察した、注目の一冊。
自己啓発チックな本かと思ったら、意外や意外、しっかりした哲学書でした。
本書によると、私たちが時折、やさしくなくなるのは、われわれの中に、不正を許さない、フリーライドを許さないという感覚があるから。
言われてみれば、SNSでの厳しい批判も、根底にはこの「不正義の感覚」がありますね。
また、『天空の城ラピュタ』のロボット兵を例に、やさしさや従順さが悪用されてしまう可能性に言及し、「やさしいがいつもいいこととはいえない」と述べています。
また、やさしさと混同されがちな「人権」についても、<人権というのは、やさしいがつづかない人間のために発明され、練り上げられた人間の知恵の結晶です>と、解説しています。
著者の定義によると、<やさしいというのは、あなたがもつコントロールの権利を手放し、委ねたことの結果の責任を引き受けること>。
そう考えると、コントロール願望がある限り、やさしくなるのは難しいというのがよくわかりますね。
後半では、われわれがどうすればコントロールを手放し、やさしくなれるのか、やさしさが持続するのか、ヒントが述べられいます。
経済面、時間面、健康面で余裕を持つ、人とのコンタクトをあえて避ける、何もしない時間を過ごす…。
上司や親にあたる人は、特に読んでおいて損はないでしょう。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
—————————-
もともとやさしい「は」つづかないもの
そもそも不正を許さないとする感覚は、私たちの生命と暮らし、財産を守るのに必要なものです。それは人間の尊厳にもつながっています。だからそれらが脅かされるときには、やさしくならないことにも十分な理由があるのです
人権というのは、やさしいがつづかない人間のために発明され、練り上げられた人間の知恵の結晶です
やさしくなれない=やさしさを行動として示せない
現代社会を生きる私たちは、セルフコントロールの範囲をとにかく増やすことに躍起になっているともいえます
やさしいというのは、あなたがもつコントロールの権利を手放し、委ねたことの結果の責任を引き受けることである
あなたの直接の見返りを求めない、小さなやさしい行為が、次の人のやさしさにつながり、その結果、世界のやさしさの総量が増大していくことを。私たちはそのことを強く信じてもよいのです
災害ユートピアも長くはつづかない
やさしいは無責任であるからこそ発揮できる
やさしくなれない可能性が高い時期に、人とのコンタクトをあえて避けておく
何もしない時間を過ごすというのは、とても贅沢な時間の使い方になります。なぜなら、そんなもったいない時間の使い方ができるほど、あなたには時間的余裕があることになるからです
どうやら私たちの脳の中には、違反者を見つけ出し、罰を与えるためにスピーディーかつ正確に働く思考のための機能があるようです
他人に対してであれ、自分に対してであれ、悪意をもってしまった自分に気づいたときには、その悪意が回り回ってあなた自身を深く傷つけるものであることをしっかりと意識するようにしてください
やさしいがコントロールにかかわる問題であるとすれば、何よりも気をつけなければならないのは、職場の実務経験において、あるいは、ライフステージ上の転機において、友人間やパートナー間において、あなたが誰か異なる人をコントロールできる立場になったときにこそ、「やさしくない」があなたに染み付いてしまうリスクが高まるということです
—————————-
毒親の問題も、結婚できないバリキャリの問題も、Xの誹謗中傷の問題も、この本で大体説明できると思いました。
セルフコントロール幻想が広まった現代社会において、必読の一冊だと思います。
ぜひ、読んでみてください。
———————————————–
『やさしいがつづかない』
稲垣諭・著 サンマーク出版
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763142348
<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0F8Q6B92K
———————————————–
◆目次◆
はじめに
1章 やさしいを解剖する
2章 マイクロ・カインドネス
3章 やさしいの土壌を耕す
4章 それでも「憎しみ」はつづく
おわりに
あとがき
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)
お知らせはまだありません。