2025年9月9日

『すごい科学論文』 池谷裕二・著 vol.6780

【注目の科学論文を一気読み】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106110849

本日ご紹介する一冊は、毎日100本の論文をチェックするという、東京大学薬学部教授の池谷裕二さんによる一冊。

最新の科学論文の中から、著者が「これは!」と唸ったものを厳選し、独自の解釈を交えながら紹介した内容で、週刊誌で連載していた科学エッセイが元になっています。

池谷裕二さんといえば、ブルーバックスから出ているベストセラー『記憶力を強くする』があまりに有名ですが、本書でも、軽妙な文章は健在です。

『記憶力を強くする』
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日常の徒然なる出来事から科学の話になり、そこに最先端の科学論文の内容と解説を入れる。

知的好奇心をくすぐる文章で、最後まで一気に読まされてしまいました。

以下は、土井が気になった本文中の言葉ですが、こんなの見せられて、読まずにいられる人はいないですよね。

・AIが見抜く「未来の遺伝疾患」
・「麻酔薬は意識の解明に役立つかもしれない」
・「世界で最も大きな生物は?」
・都市部では人々はそれほど交流していない
・名前をつけられたウシは牛乳の出がよい
・AIが予想した「記憶に残る絵」の共通点
・幸福を重視すると心理的健康を損なう
・セロトニンは本当に「幸せを生み出す」のでしょうか

本書のおかげで、なぜ世の中が悪くなるとホラーが流行るのか、なぜ画家は大きな絵を描くべきなのか、外国語の濫用に対し批判はあるけれど、やっぱりコンサルティング会社では横文字を使った方がいい理由など、たくさんヒントをいただけました。

最近の書籍では、「科学的」アプローチが流行っていますが、これを読む限り、やっぱり科学的であることは重要ですね。

生き方や住まい方、健康な生活、ビジネスのヒントに、ぜひ読んでおきたい内容です。

知っておくと話が盛り上がりそうな雑学が満載で、冗談抜きにこれ一冊あれば、飲み会に10回出ても話が持つと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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アルファフォールドを用いれば、遺伝疾患を引き起こす「異常タンパク質」の形を見抜くことができます。それこそが今回のアヴセック博士らの研究です。この研究の見事なところは、遺伝子をつぶさに調べて、DNA変異が起こりそうな箇所を洗い出し、その結果生じる異常タンパク質の形をすべて推定し切ったところです。その総数は7千万を超えます。このうち病気との関連が知られているのは、わずか数パーセントに留まります。残りは未知の変異です。今回の調査では、全変異のうち57パーセントは良性で、32パーセントは疾患を引き起こす可能性が疑われました

トリとコウモリは進化的には別系統です。しかし、どちらも翼を持ち、空を飛びます。このように縁遠い生物種が同じような機能を発達させることを「収斂進化」と言います

オックスフォード大学のアージェンテイエリ博士らは、血液中のタンパク質に着目し、イギリスのバイオバンクに保管されている約4万5千人の血液から集めた204種類のタンパク質を解析。その結果が2024年8月「ネイチャー・メディスン」誌に発表されました。解析の結果、タンパク質の増減から余命や骨密度、肺機能、握力等の年齢による変化に至るまで、高い精度で的中できることがわかりました

解析の結果、老化は徐々に進むのではなく、ステップ式に進むことがわかりました。老化が突如進む「加速期」と、それほど老化が進まない「停止期」が交互に訪れるのです。平均すると44歳と60歳頃が一気に老け込む時期になります

アカゲザルは攻撃的な性格で、社会的寛容性の低い種です。しかし災害時は攻撃性が低下し、仲間と日陰を分け合う行動が観察されました。もともと仲間に対して攻撃的で、かつ被災後に穏やかな性格に変わった個体ほど死亡率が下がることがわかりました

交流が促進される効果は、人口30万-50万人ほどの中規模都市までで、これを超えると、人々はそれぞれの集団に留まり、かえってグループの分断が進んでしまう

ローザンヌ大学のエファーソン博士らは、どれほど緻密なシミュレーションを行っても、互恵性だけでは人々の協力関係は生まれないと主張します。つまり「情けは人の為ならず」の原理だけでは、親切な行動を惹起するには不十分だというのです。では何が必要でしょうか。意外なことに、答えは「集団間の競争」でした

セロトニンは嫌悪的な状況での損失感受性を低下させる

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著者の池谷裕二さん、絵画や音楽がお好きなようで、エッセイの中には、度々アートの話が出てきます。

雑学を学びながら、人生に役立つ科学的知が手に入る本。

最後まで、楽しく読めました。

ぜひ読んでみてください。

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『すごい科学論文』
池谷裕二・著 新潮社

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◆目次◆

はじめに
第一章 長寿のヒント
第二章 生物のふしぎ
第三章 最先端科学の意外な発見!
第四章 「定説」を疑え!
第五章 幸福へのカギ
第六章 究極の思考実験
参考文献

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