2025年6月30日

『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の”嫌われる”仕事術』 Dr.マシリトこと鳥嶋和彦・著 vol.6751

【これは必読。】
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本日ご紹介する一冊は、『少年ジャンプ』伝説の編集長、Dr.マシリトこと鳥嶋和彦さんによるクリエイティブ論。

元々漫画は嫌いだったという著者が、どうやってヒット作を見出し、ブレイクさせるに至ったか、その視点が示されており、クリエイティブに関わる人、ヒット商品を作りたい人、人を育てる仕事に携わる人には、必読の一冊です。

聞き手、天野龍さんとの対談形式を取っていますが、じつはこの対談、実際にはかなり困難なものだったようです。

そもそも鳥嶋氏へのインタビュー自体が困難なのと、そのストレートな物言い、破天荒なエピソードから、申し込む勇気のある者がいない。

本書のまえがきによると、著者が天野氏にお願いしたのは、以下の一点だったようです。

「ぬるい質問をするな」

普通の人ならこれだけでも怯んでしまいそうですが、いざ原稿ができた際には、数カ月を費やした原稿が、「きびしい」の一言で突き返されてしまったようです。

そういう意味では、今こうしてこの本を読んでいられるのは、ある意味奇跡なのかもしれません。

本書では、少年ジャンプ時代に著者が手掛けたヒット作を題材に、ヒット論、コンテンツ論が語られています。

作家の個性をどう活かし、作品に反映させていくか、作家のブランディングをどう考えるか、不振のコンテンツをどうテコ入れするか…。

さすが伝説の編集長、面白くて一気に読んじゃいました。

『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』『ONE PIECE』あたりが好きな方にとっては、ジャンプの裏話も興味深く読めると思います。

鳥嶋さんは商人の家で育ったようで、商売人目線、プロデューサー目線のクリエイティブ論が新鮮でした。

出版業界の方は、既に読んでいると思いますが、改めて面白い本であることを強調しておきたいと思います。

ビジネスパーソンにとっては、ヒットを仕掛けるための心構え、目線が学べる、刺激的な本だと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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『ドラゴンボール』の終了で部数は、みるみる落ちていった。当然だった。他に読む漫画がなかったからだ。新しい漫画を育てていなかった

「ボツ」という言葉が僕のイメージになっているとすれば、鳥山さんの漫画がいかにうまいかってことだよ。彼が言ってたけど、似顔絵をうまく描くコツは、「欠点をどう描くか」だから

桂はあまりにも絵がうまかった。だから、すぐに両親の説得に出かけたね。この才能をもっと磨くべきだと。美術専門学校への進学を勧めたの。彼は女の子を描くときにスリーサイズまで頭に浮かべて描くことができる。こんな人には初めて会ったね

カラッとしているっていうのかな。キャラクターの顔とか作品の内容に湿度がないっていうかさ

大事なのはストーリーじゃなくて、キャラクターなんだよ。例えば、大好きな人がいたら「その人はどういう日常を過ごしているんだろう」って動向を知りたいでしょ。思い入れのない人が何をしているかには興味を持てないし、知りたいとも思わない

だって、キャラクターの強烈さが違うでしょう。眼鏡を掛けているロボット。目が悪いロボット。これだけでOK。キャラが立っているもん。そしてそれが女の子であることがさらにラッキーだよね。ちびっこい女の子とおっさんの共同生活っていうところが、今でいうオタク心というか、男の子の心をくすぐる。これが男同士じゃだめ

エロって言葉は悪いけど、要するに女の子をちゃんとかわいく出してあげることなんだよ

鳥山さんとよく話していたのは、「最高の漫画って『トムとジェリー』だよね」ってこと。楽しいもの、ワクワクドキドキするものだよねって。猫とネズミというキャラクターを立てて、単に追いかけっこをする。見ているときは面白いけど、見終わったら何も残らない。これが最高の娯楽じゃないか

インパクトがない。パッとひと目で主人公だと分かる”記号”が欲しかった

そこで「天下一武道会」という舞台を設定したの。読者は、悟空がさてどのくらい強くなったんだろうと楽しみにしているでしょ。それを成果で見せる。そしたら、人気が一気に上がった

「スピードというのはキャラクターが動くぎりぎりまで止まっていて、次の瞬間に動くからスピードが速いと伝わるんですよ」(森下さんの名言)

僕はたった一つのことをやりたいってことじゃない。いろんなことをやりたいのよ。いろんな才能を世の中に出したい。いろんな才能と組んでいろんなものを見たい

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『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』を知らない人、出版の仕事に興味のない人にとってはどうかわかりませんが、ものすごく刺激的なクリエイティブ論でした。

仕事の姿勢の面で学びになるところが多く、働くすべての方におすすめしたい名著です。

ぜひ、読んでみてください。

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『休養ベスト100』加藤浩晃・著 日経BP

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◆目次◆

第1章 『ドラゴンボール』はどのようにして誕生したのですか?
第2章 『Dr.スランプ』のアニメ化は、なぜ失敗なのですか?
第3章 『ONE PIECE』の連載に、なぜ反対したのですか?

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