【下巻も大興奮。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309229441
本日ご紹介する一冊は、名著『サピエンス全史』で知られる歴史学者、哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による、「情報」考の下巻。
『サピエンス全史』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0CLRLB4T5
上巻で著者は、情報に関して重要な定義をしており、それが本書のタイトルにもなっています。
『NEXUS 情報の人類史(上)人間のネットワーク』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309229433
<情報とは、さまざまな点をつなげてネットワークにして、新しい現実を創り出すものだ>
つまり、情報とは必ずしも現実を表すものではなく、結びつき(=NEXUS)という要素を含んだものだということです。
上巻では、われわれ人類がいかに情報を使って社会をまとめ上げ、動かしてきたか、そこからどんな悲劇や教訓が得られたかが書かれています。
この下巻では、今まさにわれわれが直面している「AI革命」をテーマに、AIの脅威と可能性、アルゴリズムに支配されないための考え方を説いています。
Facebookのフェイクニュースに煽られて実際にミャンマーで起きたロヒンギャの大虐殺を皮切りに、現実に起きている問題とこれから起きうる問題を紹介し、AI革命の何が本質的な問題なのか、それが民主主義と全体主義にそれぞれどう影響するのかが考察されており、われわれの民主主義が今直面している危機の本質に気づかされます。
成田悠輔氏が書いた、『22世紀の民主主義』のサブタイトルは、<選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる>でしたが、本書では、このアルゴリズムが支配する社会の問題点を明確に指摘し、アルゴリズムが人を評価する際の注意点を述べています。
『22世紀の民主主義』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4815615608
もし、アルゴリズムが間違って人を裁いたら、評価システムに基づいて進学やサービス提供がなされるようになったら…。そんなディストピアが描かれており、そこから民主主義を救うためにどんなアイデアが考えられるか、著者の持論が述べられています。
世界が監視社会に向かうなか、われわれがどうやって民主主義を守っていくべきなのか。政治家・国民双方に重要な示唆を与えています。
下巻も最後まで楽しみながら読めました。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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印刷機とラジオは人間に使われる受動的なツールであるのに対して、コンピューターはすでに、人間の制御や理解の及ばない能動的な行為主体になりつつあり、いずれ社会や歴史の行方を決める上で主導権を発揮できるようになるだろう
アルゴリズムは厖大な数のユーザーを対象に実験を行ない、憤慨や憎悪を煽って攻撃的な言動に走らせるようなコンテンツがエンゲージメントを生み出すことを発見した。人間は、慈悲についての説教よりも、憎しみに満ちた陰謀論に惹きつけられる傾向が強い
私たちは、人間のふりをしているコンピューターと政治的な議論を行なうと、二重の意味で負ける。第一に、プロパガンダ・ボットの意見を変えさせようとしても時間の無駄なので、意味がない。プロパガンダ・ボットは説得のしようがないからだ。第二に、私たちはコンピューターと話せば話すほど、自分自身について多くを明らかにするので、ボットは自分の主張を磨き上げ、私たちの見方を変えるのが易しくなる
金銭の観点からは「無料」でありながらも、情報の観点からは価値を評価されるものが増えているので、いずれ個人や企業の富を、所有するドルやペソの額の観点から評価すると判断を誤ることになる時がやって来る
社会信用システムは、「低信用民」という新しい下層階級を生み出しうる
コンピューターによって完全な監視政権の樹立が可能になりうるからといって、そのような政権の登場が必然だと思ったら間違いになる
全体主義的監視政権の台頭を防いで民主主義を守ってくれるだろう第二の原則は、「分散化」だ。民主社会は、すべての情報が一か所に集中するのをけっして許すべきではない
新しい人権を正式に定めることを求める声が強まっている。それは、説明を受ける権利だ。二〇一八年に発効したEUの一般データ保護規則は、アルゴリズムが、たとえばある人にクレジット払いを認めないといった、人間についての決定を下したら、その人は、その決定についての説明を手に入れ、人間の当事者にその決定に対する異議を申し立てる権利を与えられるとしている
各国政府はかつて偽造貨幣を不法としたときと同じように断固として、偽造人間も不法とするべきだとデネットは主張する
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この下巻を読めば、なぜわれわれがAIを監視すべきなのか、民主主義を守るためにどんな点に注意すればいいのか、明確にわかると思います。
政治家や経済界のリーダーたちには、特に読んでいただきたい内容ですね。
ぜひ、読んでみてください。
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『NEXUS 情報の人類史(下)AI革命』ユヴァル・ノア・ハラリ・著 河出書房新社
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◆目次◆
第II部 非有機的ネットワーク
第6章 新しいメンバー
第7章 執拗さ
第8章 可謬
第III部 コンピューター政治
第9章 民主社会
第10章 全体主義
第11章 シリコンのカーテン
エピローグ
謝辞
訳者解説
原註
索引
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