2025年1月30日

『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』 森岡毅、今西聖貴・著 vol.6651

【やる気が湧きます。】
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本日ご紹介する一冊は、P&G世界本社で北米パンテーンのブランドマネージャーを務め、その後USJのV字回復を牽引、2017年に株式会社刀を設立した森岡毅さんと、同じくP&G、USJを経て刀CIOを務める今西聖貴さんによる共著。

既にベストセラーとなっている既刊本、『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』の続編にあたる一冊です。

※参考:『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041422

前著の出版後、読者から異口同音に寄せられた要望が、「選ばれる確率 “M”って、どうやって増やせばいいのですか?」というもの。

本書は、その要望に応えた一冊です。

大きな論点を挙げると、1つ目は、消費者の脳はより大きな概念から選択するということ。

つまり消費者は、「カテゴリーの選択」→「ブランドの選択」→「プロダクトの選択」の順序で選んでいるのであって、これがわかれば、マーケティングの戦略が立てやすくなります。

次に、「あるブランドが選ばれる確率は、個々人ではポアソン分布、市場全体ではガンマ分布し、その両方が消費者のプレファレンス(サイコロの目)によって決定される」ということ。

つまり消費者はカテゴリーやブランド、プロダクトを基本ランダムに選択するが(ポアソン分布)、いったん選ばれたものは、選ばれることによって、もっと選ばれやすくなる(つまりガンマ分布する)ということです。ベストセラーのマーケティングを考えると、よくわかりますね。

そして3つ目は、コトラーのターゲティング理論はじつは間違いで、できるだけ広く売る方法ありきで考えるのが効率が良いということ。

4つ目は、経営の基本ではありますが、「重心」を定め、そこにリソースを集中させること。

そして最後5つ目は、プレファレンスを伸ばすのに「コンセプト」が重要だということ。

本書の大半は、この「コンセプト」に割かれており、著者のクライアントのケースを元に、マーケティング・コンセプトの作り方について学べるようになっています。

理詰めと感性の両方で、プレファレンスを高める方法が説かれており、マーケター、経営者は必読の一冊だと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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■消費者の選択の方法
(1)最初に、重要性で篩(ふるい)にかける
(2)次に、できるだけ大きなところから選択しようとする
(3)最後に、ランダムに選択する

消費者の脳はより大きな概念から選択する。すなわち、「カテゴリーの選択」→「ブランドの選択」→「プロダクトの選択」の順序で脳は選択している

ポアソン分布とは、ある一定の確率に沿ってランダムな試行の結果が一定になる確率分布のこと

社会全体の中であるカテゴリーやあるブランドが選ばれる確率は、実はポアソン分布ではないのです。選ばれる確率は一定ではありません。選ばれることで、もっと選ばれやすくなる、どんどん選ばれやすくなる構造にあります。ある試行結果が次の試行確率に影響を及ぼす、この確率分布のことを「ガンマ分布」と言います

マーケティング戦略の変数はたった3つしかない
・プレファレンス
・認知
・配荷

「広く浅く売るよりも、狭く深く売る方が効率が良い」という考え方は間違っている

獲得できたジビエにロイヤリティが高いはずのその2~3人でさえ、ジビエよりも、牛肉や鶏肉をより高頻度で食べるに違いない

ターゲティングすべき(特定の消費者グループに絞り込む)ときは、ターゲティングによってMが増える場合のみ

便益Aが大きな消費者ニーズであるにもかかわらず、コンセプト・テストでAを訴求しても購買意向が低いのであれば、Aという便益を(消費者の頭の中におけるブランド・エクイティとして)強固に保有する競合ブランドがその市場で君臨しているケースが多い

プレファレンスの最大変数は「コンセプト」

強いコンセプトは消費者理解がすべて

“凡人”と“狂人”に「憑依」する

マーティンぐ・コンセプトにおいて、自身の便益を有利にするために文脈を設定することを「STC(Setting The Context)」と呼んでいます

■STCで私がよく用いる3つの切り口
1)価値を高めるシーンを設定する
2)消費者のインサイト(消費者の隠された真実)を衝く
3)消費者の“眼鏡”を変える

Replace(リプレイス)とは、期待値のそもそもの前提となっている文脈の設定を、自ブランドにとって都合の良いものに置き換えてしまうこと

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前作よりも数式が少なく、また実践的な内容が書かれているので、わかりやすく、自社のケースに応用しやすい、と感じる方は多いのではないでしょうか。

USJ、西武園ゆうえんち、丸亀製麺、ニップン、高血圧イーメディカル、JUNGLIAのケースが載っており、マーケティングコンセプト策定のためのケーススタディとしても読み応えがあります。

ぜひ読んでみてください。

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『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』森岡毅、今西聖貴・著 ダイヤモンド社

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◆目次◆

序 章 “選ばれる確率”をどうやって増やすのか!?
Part1 選ばれる確率を増やすブランド戦略の本質
第1章 「プレファレンス」に集中せよ!
第2章 狭めるな! 拡げよ!
第3章 「重心」を衝け!
Part2 プレファレンスを伸ばす「コンセプト」の本質
第4章 「コンセプト」とはなにか?
第5章 強い「マーケティング・コンセプト」をつくる
第6章 強いコンセプトは消費者理解がすべて
Part3 「マーケティング・コンセプト」のつくり方
第7章 実際にブランドを設計してみよう
第8章 強いマーケティング・コンセプトをつくる3つの要点
第9章 実際にマーケティング・コンセプトをつくってみよう
終 章 コンセプトが日本の未来を創る!

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