2025年12月17日

『セカストの奇跡 逆襲のゲオ』 野地秩嘉・著 vol.6866

【「セカスト」見えざる勝利の法則】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833425769

本日ご紹介する一冊は、2025年9月末時点で906店舗を数える「セカンドストリート」の奇跡と、その親会社ゲオホールディングスを、ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが追った一冊。

ゲオグループを取材・解剖した本は、どうやらこれが初めてのようです。

綿密な取材をもとに、同社の歴史とリユースビジネス進出のきっかけ、成功の戦略と経営哲学を明らかにしており、じつに読み応えある内容です。

商売の天才、日本マクドナルド創業者の藤田田が社外役員をやったのは、ゲオとソフトバンクだけだったらしいですが、その藤田田をして、「彼は王者になれる資質を持っています」と言わしめたのが、同社の創業者、遠藤結城氏。

本書には、交通事故で亡くなった氏の教えと、それを受け継いだ息子・結蔵氏の堅実経営の全容が書かれています。

TSUTAYAをはるかに凌ぐローコストオペレーション、一台のレジで商品をレンタル、販売、買い取りできる独自の基幹システム、スピード出店、スピード査定の仕組み、直営店だからこそできたビジネスモデル…。

ひさびさに美しいビジネスシステムを見た気がします。

経営者にとっては、新規事業開発やシンプルオペレーションのヒントに、投資家にとっては、同社のこれからの成長可能性を探るヒントになる一冊だと思います。

個人的には、「人は買いたいのではなく売りたい時代」という言葉、さらにニッチながらグローバルに展開しているviviONのビジネスモデルがヒントになりました。

1957年生まれの著者が、身体を張ってコミケに行ったり、オンラインコミケを経験したりする様子も、読んでいて楽しめると思います(笑)。

藤田田氏死去の後、不慮の事故で父を亡くし、多額の相続税を払って後を継ぎ、裏切った経営陣から会社を守った現社長の遠藤結蔵氏。

そのインタビューからは、経営への並々ならぬ覚悟を感じました。

2代目経営者にとっても、読むべきところが多い内容だと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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弊社には商品をレンタル、販売、買い取りする基幹システムがあります。しかも内製しています。基幹システムにゲーム、DVD、CD、コミックなどを載せたのがゲオで、服や雑貨を載せたのがセカンドストリート、モバイルを載せたのがゲオモバイルです

極端に汚れた服、匂いのする衣料はそもそも引き取らない。それもあるため、買い取った衣料品はクリーニングしたり、染め直したりすることなく商品として並べたのである

セカンドストリートはレジを前面に置くことで、買い取りに対しての大いなる意欲を示している

居抜き物件を利用し、最小限の改装で店舗をオープンする

物件を借りて賃料が発生した時点からなるべく早く店を開ける。引き渡し日から10日目を目標にしていました

先代の社長からは『投資をした分は全部お客さまに払っていただくんだ』。つまり、お客様が投資をしてもいいという物だけに金を使え、と

居抜き物件を探すには全国チェーンを展開している会社の開発の担当者と仲良くすることがいちばん

うちが新築物件でやらない理由のひとつは契約期間が長くなって、縛られてしまうからです。20年、30年の契約を結ぶと、どうなるかわかりません

セカストには大量の洋服だったり、洗濯機などを持ち込む方がいます。ミニバンに積んで来られたりするから、やはりロードサイドの路面店がいいです

日本マクドナルドの創業者、藤田田は商売の原則について、こう言っている。「毎年生まれてくる子どもにフォローされる商売を考えろ」

Aという店で中古ソフトを買い取ったら、Aでしか売れません。フランチャイズですから、他店に回すことはできない。一方、うちは全国チェーンです。買い取ったものを他の店で売ってもいい

レンタル業、リユース業は幅広い庶民を相手にしたビジネスだ。豪華でスタイリッシュな店舗づくりをしたら、敬遠して入ってこない層が出てくる

viviONのグループ総売上高は2025年3月末の数字で562億円。サービスに登録して、かつ利用しているユーザーの数は1560万人

ゲオモバイルのアキバ店は同チェーンの中でも売上が大きい。上位3店舗に入っている。客のうち9割はインバウンドだという

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読んでみて思ったのは、ゲオHDが手掛けているビジネスは、現代の縮図だということ。

リユース、孤独解消、過疎地の課題解決…。

同社は、2026年に社名を「セカンドリテイリング」に変え、2035年に売上高1兆円を目指しているそうですが、そのビジネスの全容と、成長の秘密が本書からは見て取れます。

経営者、投資家にはぜひ読んでいただきたい一冊です。

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『セカストの奇跡 逆襲のゲオ』
野地秩嘉・著 プレジデント社

<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆

プロローグ なっちゃんとケイちゃんたちの革命
第1章 セカストの奇跡
第2章 人は買いたいのではなく売りたい時代
第3章 2004年のできごと
第4章 ゲオができるまで
第5章 ゲオの成長
第6章 ブロックバスターの買収
第7章 ゲオの「清洲会議」
第8章 大逆転
第9章 グループ戦略
第10章 地方文化の砦として
第11章 ゲオモバイル
第12章 スーパーセカンドストリート
第13章 ラックラック
第14章 おお蔵
第15章 viviONとエイシス
エピローグ 遠藤結蔵インタビュー

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