【これなら誰でもできる。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296120441
本日ご紹介する一冊は、豊富な事例とともに、イノベーションの理論や手法をわかりやすくまとめた一冊。
著者は、日本経済新聞社の記者として、製造業やスタートアップなどを取材し、イノベーション創出に興味を持ったことから2023年に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入学までしてしまったという、杜師康佑(とし・こうすけ)さんです。
水だけで洗える皿や、バイク技師が作った医療介護用マット、電気の力で食品の塩味を増強させるスプーン、着用を自動化するためのヘルメット、遠くも近くも自動でピント調節してくれるメガネなど、イノベーティブな商品・サービスの事例が紹介されており、飽きることがありません。(本文では商品名、企業名、開発に関わった人物の紹介もされています)
しっかり開発現場に取材しつつ、著者が大学院で学んだ理論の解説も付されており、まさに理論と実践両面から書かれた、有用なイノベーションのテキストです。
タイトルが『超凡人の私がイノベーションを起こすには』となっていますが、確かに登場する会社や人物は身近なものが多く、「自分でもできるかも」と思わせてくれる内容。
大企業、中小企業、個人問わず、役立つ内容で、社員の教育用にも有用な一冊だと思います。
イノベーションというと、何か特別な才能を持つカリスマ的人物が成し遂げるものというイメージがありますが、本書で紹介されているアプローチ方法なら、誰でもイノベーションが起こせるはずです。
「デザイン思考」や「両利きの経営」「エフェクチュエーション」など、いまどきのトピックスを一通り網羅しており、最新のビジネス理論を押さえたい向きにもおすすめの内容です。
今注目の商品やスタートアップ企業が数多く紹介されているので、投資家にとっても、役立つ情報源だと思います。(さすが日経の記者ですね)
読んでいるだけで、自分も起業したくなる、新しいサービスを考えたくなる、不思議な魅力のある本です。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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「Bubble90」は節水の仕組みがユニークで、水の玉を弾丸のように連続して打ち付ける「脈動流」という技術を用いて食器を洗い流す。通常のノズルと異なり、水が蛇口から均等に流れ出るのではない。小さな穴から水を弾丸のように押し出す仕組みを採用したことで、余分な水を使わないようになっている
「WHY」の次は「WHAT」だ。皿を洗う際の水の使用量を減らすには、様々なアプローチが考えられる。その一つはすすぐ回数を減らすこと。例えば洗剤をつけたスポンジで表面をこすった後に泡が落ちやすい構造にすれば、確かにそれだけ水の使用量は減る。ただ、ここで終わりにするのではなく発想をさらに遠くに飛ばして突き詰めて考えると「そもそも洗剤を使わずに洗い流すことはできるか?」という大胆な仮説を持つことだってできる
そもそも歩くことは健康に良いことなので「転ぶこと自体を課題と捉えるのを止めてみる」と発想を転換できないだろうか。下村さんらは「高齢者を歩かせない、転ばせないようにするにはどうすればよいか?」から「そもそも転んだとしても骨折しないようにするにはどうすればよいか?」と問いそのものをリフレームした
バイアスを突き崩す「外れ値」のゾーンにこそ、イノベーションの種が眠っている
例えば、キリンホールディングスが明治大学の宮下芳明教授と開発した電気の力で食品の塩味を増強させるスプーン「エレキソルト」。高血圧など生活習慣病を抱える人にとって、通常であれば食事に含まれる塩分を減らすことが健康維持の対処方法になる。確かに塩分摂取量が減ることで健康になるかもしれないが、味気のない食事では満足度が下がり、幸福度の高い生活を送れるとは言いづらい
デザインスタートアップ、きいちのメモが2024年に開発した「KAGIBO(カギボー)」はこうした不慮の事故を防ぐためのソリューションだ。最大の特徴はIoT技術を搭載したヘルメットを被ることによって自転車の鍵が開けられる仕組みにしたこと(中略)もし子どもが自転車に乗りたいと思った場合、カバーを開いて鍵を差し込める状態にしなくてはならない。そのために必要なのが「ヘルメットを被る」という行為だ
VCMとはどういった手法なのだろうか。基本的な考え方はその名称の通り、大企業が高い技術力を持つスタートアップの製品やサービスを購入する顧客(クライアント)となり、自社が抱える戦略的な課題を解決することを目指している
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著者がイノベーション創出に関心があるからなのでしょうか。
楽しいアイデアや斬新な切り口、それを発見するまでのプロセスが登場し、読んでいて、本当にワクワクしてくる内容です。
イノベーション創出のための方法論や気づきを与える言葉も読み応えがあり、個人的には、29ページに書かれている、<バイアスを突き崩す「外れ値」のゾーンにこそ、イノベーションの種が眠っている>という言葉に痺れました。
起業家、起業家予備軍、一発当てたい商品開発者や投資家は、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『超凡人の私がイノベーションを起こすには』
杜師康佑・著 日本経済新聞出版
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296120441
<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0FN6ZPHFT
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◆目次◆
第1章 イノベーションのための4つの思考法
第2章 アウェイに飛び出す 「何もできない自分」の変え方
第3章 エースがいなくても成功する イノベーションが続く組織づくり
第4章 社会課題がビジネスを産む 多様性の時代のイノベーション
第5章 イノベーションの最前線 日本企業が描く未来戦略
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