2025年10月29日

『空、はてしない青(上)(下)』 メリッサ・ダ・コスタ・著 山本知子・訳 vol.6833

【よく生きるために、人は旅に出る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065354161

本日ご紹介する一冊は、フランスで160万部突破のベストセラー『Toutle bleu du ciel』の邦訳。

著者のメリッサ・ダ・コスタさんは、1990年生まれの30代で、7歳の頃から詩や物語を書いていたという早熟の天才。

小学校3年の時には、当時フランスで発売されたばかりの『ハリー・ポッターと賢者の石』に夢中になり、「次の巻がすぐに出版されないことへの不満から、自分自身で続きのストーリーを考えてノートに100ページ以上も書きつづった」そうです(訳者あとがき)。

これが処女作という天才小説家で、また内容がいい。

美しい文章と感動的なストーリーで、ラストシーンでは、思わず感極まってしまいました。

小説ですが、ヒロイン役のジョアンヌが時折、フランスらしい人生訓を披露するという内容なので、あえてBBMでもご紹介いたします。

物語は、若年性アルツハイマーと診断された主人公のエミル(26歳)が、家族に内緒で最後の旅行の計画を立て、ネットの掲示板で旅のパートナーを募集するところから始まります。

件名 「最後の旅」をいっしょにして
くれる人を探しています
発信者:エミル26
日付:6月29日 01:02

若年性アルツハイマーと宣告された男性、26歳
人生最後の旅の道連れ募集
アルプス山脈、オート=ザルブ、ピレネー山脈など、旅のコースは応相談
移動はキャンピングカーと徒歩(リュックおよびテント持参)
健康でそれなりに体力のある人希望
出発:できるだけ早く
旅行期間:(医師の診断によれば)最長で2年。短くなる可能性あり
旅のパートナーの条件:医療知識不要。僕はケアも治療もまったく受けていませんが、ふつうの人と同じように動けます
精神的に健康な人(僕がだんだんと記憶を失う恐れがあるので)
自然が好きな人
少々ワイルドな生活環境でも大丈夫な人
人生の冒険を共有したいと思う人

まずはメールでご連絡ください。そのあとは電話での連絡も可能です

誰からも連絡が来ないと思っていた時、返信があったのは、意外や意外、ジョアンヌと名乗る謎の女性からでした。

死を目前に、生を取り戻そうとする主人公、エミルの物語ですが、本書は同時に、同行者ジョアンヌの再生の物語でもあります。(じつは同行者ジョアンヌにも、驚くべき過去がありました)

生きるとは何か。致命的な心の傷を、人はどうやって癒すことができるのか。

あまりに美しい物語で、800ページが、あっという間に過ぎると思います。

ぜひ読んでみてください。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

—————————-

なるようになるさ。僕は旅に出る。リュック一つ持って、キャンピングカーで出かけるんだ。昔、夢見ていたみたいにね。そうやって一年間で六十年分の経験をするつもりだ。約束するよ。絶対後悔しないって。

真の発見の旅は新しい景色を求めることではなく、新しい目をもつことだ
(プルーストの一節)

もっとも偉大な旅人とは、自分自身を見つめ直すことができた旅人だ
(孔子の考え方)

あの世への旅立ちの瞬間、それまでの人生が走馬灯のように現れて、もっとも印象深い瞬間がよみがえるってよく言われる。それがほんとかどうかはわからないけど、人は誰でも、この世を去る前にそれまでの人生のいろんなシーンを思い出し、昔の出来事を新しい目でより賢明に見つめなおし、「理解」し(ここはあえて「」で強調しておこう)、そのうえで赦すこと、そして自分自身を赦すことが必要なんだと思う。まだ旅は始まったばかりだ。ここから先は長いだろう。自分がその境地に達し、自分の人生の結論を見つけ、安らかにあの世に旅立てることを願っている

今このときがほかのどんなときより優れている点がある。それは、今は私たちのものであるということだ
(チャールズ・ケイレブ・コルトン)

太陽がもう出ていないと言って泣いたら、その涙で星が見えなくなるだろう

受け取ることは寛大な行為だ。受け取ることを受け入れるのは、相手が自分を幸せにするのを許していることだ。そして、あなたも相手を幸せにしていることになる
(パウロ・コエーリョ)

人間はステンドグラスのようなもの。日が出ているあいだは輝くが、暗くなると内側から照らされて、初めてその美しさが現れる
(エリザベス・キューブラー・ロス)

苦しむとは、何かに対して究極の注意を払うことにほかならない……
(ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』より)

—————————-

読み終えた人は、本書のタイトルにある「青」が、単に空や海の青ではないことに気づくと思います。

長く生きていると、取り返したい過去や、果たせなかった思いがあると思いますが、本書はそんな気持ちを癒してくれる物語です。

最近、いくつか小説を読んでいましたが、個人的には、今年のベストです。

ぜひ、読んでみてください。

———————————————–

『お金の不安という幻想』
田内学・著 朝日新聞出版

<Amazon.co.jpで購入する>
『空、はてしない青(上)』
メリッサ・ダ・コスタ・著 山本知子・訳 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065354161

『空、はてしない青(下)』
メリッサ・ダ・コスタ・著 山本知子・訳 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065395879

———————————————–

◆目次◆

※特にないので省略します

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー