2025年10月10日

『利他はこうして伝染する』 クリス・アンダーソン・著 北村陽子・訳 vol.6821

【より良い世界の実現のために】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862763413

本日ご紹介する一冊は、TEDの代表、クリス・アンダーソン氏による利他のすすめ。

TEDを世界に広めた仕掛け人が、利他の精神を広め、社会を良くするための考え方を説いた、興味深い一冊です。

本書には、「利他」の精神がネットで広がり、社会課題が解決した事例がいくつも紹介されています。

「見知らぬ誰かのための先払いコーヒーが2年で34カ国に」

「身内の家庭教師から始まったオンライン授業が20億回再生」

「ヒゲを伸ばすだけの健康啓発キャンペーンに10億ドル以上」

利他が伝染して、ものすごいムーブメントになった事例が紹介されており、じつに興味深い。

また、読者がちょっとした行動により、社会に良い影響を与えるためのヒントが書かれており、特に以下の6つは実践すると良いと思いました。

1 アテンション–関心を向ける
2 ブリッジング–対立の架け橋となる
3 ナレッジ–知識をシェアする
4 コネクション–人と人をつなぐ
5 ホスピタリティ–もてなしの心を広げる
6 エンチャントメント–魅力を生み出す

6番はちょっとわかりにくいと思いますが、事例としては、パブリックアートによって環境美化に取り組むアーティストの事例が載っています。

さすがTEDの代表だけに、ネットを通してアイデアを伝播させるためのヒントがいくつも紹介されており、マーケティング視点で見ても勉強になります。

ロンドンのサロンで美容師として働いていたジョシュア・クームズが、ホームレスの人のヘアカットをしてインスタグラムでバズった話、日本人のグループが捨てられたペットボトルを刀で刺し、背中に背負ったかごに放り込むパフォーマンスで、YouTube、TikTokでバズった話など、なるほどと思う事例が満載です。

社会キャンペーンを仕掛けたい方、フィランソロピー活動に興味のある方は、ぜひ読んでおくといいと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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中国にこんなことわざがある。結婚についてはいささか皮肉かもしれないが、その他は当たっている。「1時間幸せになりたいなら昼寝しなさい。1日幸せになりたいなら釣りに行きなさい。1カ月幸せになりたいなら結婚しなさい。1年幸せになりたいなら遺産を相続しなさい。一生幸せになりたいなら他の人を助けなさい」

さざ波効果を起こす強いポテンシャルを持つ、時間と関心の6つの贈り方
1 アテンション–関心を向ける
2 ブリッジング–対立の架け橋となる
3 ナレッジ–知識をシェアする
4 コネクション–人と人をつなぐ
5 ホスピタリティ–もてなしの心を広げる
6 エンチャントメント–魅力を生み出す

ほんの一時であっても、見知らぬ人にアテンションを向けることが優しさを広げる強力な方法だと知ったジョンは、他の人たちにもやりやすい方法を見つけ出した。ジョンは、カフェ・ソスペーゾ–「保留コーヒー」–というイタリアの伝統の話を聞いたことがあった。アイデアはシンプルだ。カフェの客は自分のコーヒーの他に、余分に一杯分の「保留コーヒー」を先払いしておく–これは他の人への贈り物であり、誰が飲んでもいい。お金のない人やホームレスの人が注文することもある。(中略)ジョンは保留コーヒーを世界中に広めることを自分の使命にした。アイデアは時代に合っていた。2年のうちに、34カ国2000軒のカフェが保留コーヒーを積極的に導入し、今ではこの運動にはFacebookで50万人のフォロワーがいる

1995年、アンタナス・モックスはコロンビアのボゴタ市長に選出された。困難な時期だった。殺人と交通事故死が多発し、上下水道設備は壊れ、汚職が蔓延していた。モックスは、重武装の警察を後ろ盾に強圧的な新法を導入して対処することもできたはずだ。だが、アーティストを親に持つ彼は別の方法を選んだ。社会のための振る舞いを促すクリエイティブな方法で、ボゴタを大胆な社会実験の場にしたのだ。交通事故死に対処するために、400人のパントマイマーを雇って交通違反者を笑いものにした。法律を順守するタクシー運転手は「ゼブラの騎士」という特別なクラブに招待された。(中略)こうした手法は奇抜だったが、効果があった。モックスの在任中に、水道使用量は40%減少し、殺人発生率は70%減少、交通事故死は50%以上減少した

ヤードサインがもたらしたポジティブなインパクトを伝えるメッセージが、続々とウルフのもとに寄せられた。1人の男性は、まさに自殺を計画していた場所に車で向かっていたとき、「あきらめてはダメ」というヤードサインを目にした。男性は家に帰り、自分の鬱のことを家族に打ち明けた。自分を恥じていた麻薬依存症の人は、車で走っていたとき、「明るく白い物体」が目に入った–「間違いを犯したからといって、あなたがどういう人か決まりはしない」と書かれたヤードサインだった。この人は依存症治療の受診を予約した

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ちょっと楽観的に過ぎるところや、危ないところも見受けられますが、利他の精神を伝染させようとする著者の姿勢には賛同します。

体系的にまとまってはいませんが、利他の伝染の事例は面白く、ビジネス視点、社会課題解決の視点で見ても勉強になると思います。

ぜひ読んでみてください。

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『利他はこうして伝染する』
クリス・アンダーソン・著 北村陽子・訳 英治出版

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862763413

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0FM3NZRW7

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◆目次◆

序章
第1章 利他の伝染の内側で起きていること
第2章 果てしなく広い村
第3章 完璧な利他でなくても
第4章 隠れたスーパーパワー
第5章 不思議の実験
第6章 金銭的寄付以外の6つの方法
第7章 伝染の触媒
第8章 躊躇せずに伝えよう!
第9章 それでは、お金については?
第10章 私たちが望むインターネット
第11章 企業にできる賢明な方策
第12章 フィランソロピーの真の可能性
第13章 プレッジはすべてを変える可能性がある
第14章 次は、あなたの番
エピローグ
サイトへようこそ
謝辞
原注
参考資料

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