2025年10月1日

『サム・アルトマン 「生成AI」で世界を手にした起業家の野望』 キーチ・ヘイギー・著 櫻井祐子・訳 vol.6814

【注目のベストセラー】
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本日ご紹介する一冊は、「ChatGPT」を生んだ天才経営者、サム・アルトマンの面白すぎる評伝。

著者は、フェイスブック(現メタ)社内の内部告発をスクープしたウォールストリート・ジャーナルの特集チームの一員で、名だたるジャーナリズム賞を受賞している、ウォールストリート・ジャーナル記者のキーチ・ヘイギー氏です。(英文学でスタンフォード大学大学院修士過程終了)

それゆえに、サム・アルトマンの人物評も厳しく、関係者からの多数の証言をもとに、サム・アルトマンの実像を炙り出しています。

神童として育った幼少期、最初の起業とスタンフォードの学生時代、Yコンビネーターでの活躍、シリコンバレーの巨人たちとの交流、社員たちからの反発とクーデター…。

さまざまな角度から論じられるアルトマンの人物と才能、彼を育てた偉人たちの思想が丁寧に書かれており、起業家として、リーダーとしてインスパイアされたい人は、ぜひ読むといいと思います。

ポール・グレアム、ブライアン・チェスキー、ピーター・ティール、スティーブ・ジョブズ、サティア・ナデラ、イーロン・マスク、グレッグ・ブロックマン、イリヤ・サツキヴァーなどとサム・アルトマンの交流、そして彼らの知恵の一端に触れられるのは、本書ならではの魅力でしょう。

本書を読むと、なぜ若さが起業家の武器なのか、どう学ぶことで起業家としての資質を磨いていけるのかがよくわかります。

投資家目線で見た時にも、どんな人物に投資すればいいか、どんなチーム・組織に投資すればいいか、良いヒントになると思います。

アルトマンが学んだマーケティングと組織作りの原則、哲学者マックス・モアが提唱した「エクストロピー主義」(エントロピーと闘うための5つの原則)、ブロックマンとサツキヴァーが信奉していた「ファインマン式天才になる方法」など、能力開発、スキル開発のヒントも面白く、一気に読んでしまいました。

500ページ近い大分な本ですが、その分楽しめると思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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「可能性だけに目を向けていた」
(ジム・ライアンによるアルトマン評)

哲学的には、エントロピーと闘うとは、「無限拡張」「自己変革」「動的楽観主義」「知能化技術」「自生的秩序」の5つの原則を守ることをいう

世界の終わりに備えることが「趣味」の1つ(アルトマン)

仕事は信頼できる緊密な仲間で進めるのが一番うまくいく(アルトマンの流儀)

機械知能の助けを借りれば、人間がコンピュータの中で永遠に生きられるように、脳をコンピュータにアップロードする方法を開発できるかもしれない

ケイはゼロックスPARC単体が生み出した経済成果を、「35兆ドル」と推定した。「企業の目標は低すぎることが多い」と彼は語った。「数百万、数十億ドルの単位でしか考えない。だが真に優れた研究に必要なのは、数兆ドル単位の資金だ。なにしろ新しい産業を生み出すことになるのだから」

「イリヤ(・サツキヴァー)と僕がいつも話していた、『ファインマン式天才になる方法』ってものがある」とブロックマンは言う。これは、マンハッタン計画にも参加した著名なノーベル賞受賞物理学者のリチャード・ファインマンが提唱した、「天才の思考法」をもとにした考え方だ。「全力で問題に取り組み、それを明確に定義して、解決に必要な、欠けているピースを特定する。そして自分かほかの研究者がそれを考案するのを待つんだ。考案されたら、欠けている部分にそのピースをはめ込むだけで、天才になれる(以下略)」

AIによってコストが下がらないものの筆頭に、供給量が限られた「土地」がある

2023年にアルトマンは、自分の流動資産のほぼすべてを2つの会社に注ぎ込んだ。その1つ、老化の原因を攻撃して人間の寿命を10年延ばすことをめざす「レトロ・バイオサイエンス」には、1億8000万ドルを投じた。(中略)2023年にアルトマンが行った2つ目の大きな投資が、ヘリオンへの3億7500万ドルの追加投資だ。ヘリオンは核融合による安価な発電をめざす会社で、YCの2014年の夏バッチにも参加した

「政治家はすでに君の話で持ちきりだ」とチェスキーはアルトマンに言った。「でもその場合、彼らと直接顔を合わせることが本当に大事なんだ。知ってるだろ、足りない情報はゴシップで埋められる、とかいう古い警句を。怖がられるのが一番まずい。恐怖の特効薬は、こっちから情報を与えることなんだ」

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BBMでは、以前にもサム・アルトマンの本を紹介していますが、こちらの方が、AI開発のダイナミズムとそれを取り巻く天才たちに迫ったノンフィクション的読み物。

ビジネス的視点で読みたい人は、『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』を読むと、バランスが取れていいと思います。

『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022519932

ぜひ、読んでみてください。

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『サム・アルトマン 「生成AI」で世界を手にした起業家の野望』
キーチ・ヘイギー・著 櫻井祐子・訳 NewsPicksパブリッシング

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4910063447

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0FRZYBB4H

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◆目次◆

プロローグ クーデター前夜
PART1 出発 1985-2005
CHAPTER1 神童を生んだ「強烈すぎる両親」
CHAPTER2 「人を動かす」才能にめざめる
CHAPTER3 「位置情報サービス」で起業する
CHAPTER4 Yコンビネータ1期生になる
PART2 成長 2005-2012
CHAPTER5 「ジョブズやゲイツを並ぶ逸材だ」
CHAPTER6 ループトで「敵を味方にする術」を学ぶ
CHAPTER7 スティーヴ・ジョブズにシゴかれる
CHAPTER8 社員の信用を一気に失う
PART3 飛躍 2012-2019
CHAPTER9 ピーター・ティールに投資を学ぶ
CHAPTER10 Yコンビネータ社長に抜擢
CHAPTER11 「非営利のAI研究所」構想
CHAPTER12 オープンAI創業と「効果的利他主義」
CHAPTER13 前代未聞の「株を持たないCEO」
PART4 岐路 2019-
CHAPTER14 「危険すぎて公開できない」AI?
CHAPTER15 世界を揺るがせたチャットGPT公開
CHAPTER16 CEO解任事件、衝撃の真相
CHAPTER17 さらなる難局へ
エピローグ 未来へ
謝辞

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