【週末は美と愛について学ぶ】
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最近、残りの人生を生きるのに、指針となる強烈な思想が欲しいと思っており、手に取ったのが本日の一冊。
アランから哲学を学び、34歳の短い生涯でいくつもの優れた思想を残した哲学者、シモーヌ・ヴェイユの言葉を集めた文庫本です。
人生、愛、不幸と苦しみ、権利と義務、力と自由、国家と歴史、革命と戦争、社会と政治、教育、知、美、宗教、神、歓び、人間、死など、さまざまなテーマについて言葉が集められていますが、なかでも「愛」や「美」に関する考察は、目を見張るものがあります。
創作の仕事に関わる方は、読んでおくと、名作を作るために必要なことが何なのか、ヒントが見えてくると思います。
こんなに優れた思想家でも、若い頃は自分の才能のなさを嘆くことがあったらしく、冒頭にこんなことが書かれています。
ちょっと長いですが、引用してみましょう。
14歳のとき、私は思春期特有の深い絶望感に陥り、自分の生まれつきの能力があまりに凡庸だという理由で、真剣に死ぬことを考えました。私の兄がたぐいまれな才能の持ち主だったため、そして彼の青少年期はパスカルのそれに匹敵するとも言われていたので、私はいやでも自分の平凡さを自覚せざるを得ませんでした。私は外面的な成功が得られないことを嘆いたのではありません。本当に偉大な人間だけが入れる、あの超越的な真理の王国に、自分が近づくことがまったく期待できないことを嘆いたのです。私は真理なしに生きていくことを思うと、死んだほうがいいと思いました。(ペラン神父への手紙 1942)
本書は、そんなシモーヌ・ヴェイユが苦悩の末、たどり着いた人生の真理を綴った一冊。
金銭的な成功なんかよりも、ずっと大切な「まっすぐに生きる勇気」「美しく生きる勇気」をもらえると思います。
シモーヌ・ヴェイユの作品を読んだことがないという方には、ぜひ、読んでいただきたい一冊です。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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私の兄がたぐいまれな才能の持ち主だったため、そして彼の青少年期はパスカルのそれに匹敵するとも言われていたので、私はいやでも自分の平凡さを自覚せざるを得ませんでした。私は外面的な成功が得られないことを嘆いたのではありません。本当に偉大な人間だけが入れる、あの超越的な真理の王国に、自分が近づくことがまったく期待できないことを嘆いたのです。私は真理なしに生きていくことを思うと、死んだほうがいいと思いました。(ペラン神父への手紙 1942)
もしも私にたくさんの人生があるのでしたら、お父さんやお母さんのためにその一つをささげます。けれども、私には人生はたった一つしかありません。(アメリカからフランスに行く際に両親に残した言葉 1942)
隣人愛に満ちているということは、ただ、隣人に向かって「あなたを苦しめているものは何ですか」とたずねることができるということだ。それは、その不幸な人を、人間の集合体の中の一個体として、または「不幸な人々」のレッテルを貼った社会的集団の中の一実例としてみなすのではなく、ある日突然不幸に見舞われ、それによって決定的な刻印を押されはしたが、私たちとまったく同じ人間として存在しているとみなすことである。(「神への愛のために学びを善く用いることについての考察」)
ひとたびある集団が意見を持つようになると、集団というものは必ずやそれをメンバーに強制してくるようになる。遅かれ早かれ、個人は、厳密さや問題の数の程度の差こそあれ、集団と対立する見解を表明できなくなる。個人がその集団にとどまろうとする限りは。[…] 明白にもしくは暗黙のうちに、「私たちは」という短い語が思考の表現に先立つようになると、そのときから知性の敗北が始まる。そして知性の光が陰るやいなや、時を待たずに、善を愛する心も道を見失う。(『根をもつこと』)
教育とは–その対象が子どもであれ大人であれ、また個人であれ集団であれ、あるいは自分自身であれ–、もろもろの原動力を生まれさせることだ。(『根をもつこと』)
見つめることと待つこと。これが、美にふさわしい態度である。(『カイエ3』)
芸術や科学においてさえも、二流の制作–それが華々しいものであれ凡庸なものであれ–はつねに自己の拡張である。それに対して、真に一流の制作である創造は、自己の放棄である。(「はっきり意識されない神への愛の諸形態」)
美には、相反するものの結びつきが数多く含まれるが、そのほかとりわけ、瞬間と永遠の一致が含まれる。(夕陽と夜明けの力強さ。)あらゆる芸術において、それは同じである。(『カイエ3』)
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『DIE WITH ZERO』が、お金や物質をどう片づけるかを説いた本だとしたら、本書は残りの人生をどう生きるか、精神面から説いた本だと言えるでしょう。
『DIE WITH ZERO』
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ぜひ読んでみてください。
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『シモーヌ・ヴェイユ まっすぐに生きる勇気』
鈴木順子・編訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン
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◆目次◆
はじめに
I 人生について
II 愛について
III 不幸と苦しみについて
IV 権利と義務について
V 力と自由について
VI 国家と歴史について
VII 革命と戦争について
VIII 社会と政治について
IX 教育について
X 知について
XI 美について
XII 宗教について
XIII 神について
XIV 喜びについて
XV 人間について
XVI 死について
参考文献
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