2025年8月1日

『ザ・ミドル 起業の「途上」論』 スコット・ベルスキ・著 関美和・訳 vol.6774

【起業途中の困難をどう突破するか】
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AIベンチャーでひさびさに起業に関わり、いろいろと反省しました。

そこで気づいたのは、「事業を立ち上げる」こと自体はあまり重要じゃないということ。

もっと言うと、資金調達も金銭的な成功も、です。

自分の本体の事業を振り返った時、思うのは、創業当時、メンバーみんなが頑張ってくれていたこと、そして自分も負けじと頑張っていたこと、工夫し続けていたことが、幸運をもたらしてくれていた、ということです。

そう、起業は始まりよりも終わりよりも、「途上」にこそ意味があるのです。

本日ご紹介する一冊は、その起業の「途上」論を、成功した起業家が述べた一冊。

著者のスコット・ベルスキ氏は、クリエイター・プラットフォーム「ベハンス」を起業し、Adobeに売却。

その後、Adobeで新規事業を成功に導き、さらにはVCとしても活躍している人物です。

起業途上のリーダーやチームがどうなるか、そこにどう対処すべきか、これまで起業本ではあまり語られなかった起業途上の困難に言及しており、起業家には良いヒント、戒め、励ましとなる一冊です。

・真実に背を向けてニセの成功を祝わない
・「不安をまぎらわせるための仕事」にとらわれていることに気づく
・リソースより創意工夫
・ビジネスの秘訣はスケールしないものにある

実際に起業した人であれば、本文に登場するシチュエーションが「あるある」なのに驚くと思いますが、著者はそれへの処方箋も示しています。

せっかく立ち上げたチームが、安易な方向に流されるを防いでくれる、じつにありがたい本です。

500ページを超える厚い本ですが、啓発される+示唆に富んだ内容なので、一気に読んでしまうと思います。

起業家、および起業家予備軍は、ぜひ読んでみてください。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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ユーザーも存在せず、目に見える進歩の証拠もないと、チームのモチベーションを上げてくれるような外部の承認も励ましも存在しないことになる。ご褒美になるものが何もないと、心が空っぽになる。その空白を埋めるのは、人工的な前向きさだ

「いつか必ず、べハンスが検索ミスじゃなくなる日がくる」。僕は仲間にそう約束した

リーダーは孤独で、希望や自尊心を持ちにくくなる。だから、少しでも進歩の兆しのようなものがあればそれを取り上げて、祝うのだ

「この世で一番中毒になりやすいのは、ヘロインと月給だ」(ベンチャーキャピタリスト フレッド・ウィルソン)

前向きなコメントを求めない。真実に背を向けてニセの成功を祝わない

起業という旅の中では、前向きなエネルギーや希望だけが頼みの綱になってしまう。だが実は、うまくいっていないことに目を向ける時間と余力を常に保ち続けることが何より大切だ

自分たちの仕事が本物のインパクトをもたらしたときには、シャンパンを抜こう。新しいプロダクトや新機能を利用してくれたユーザーがほんの数人だったとしても、そんなときには本物の節目として祝ってほしい

個人と社会が前に進むためには、もっと摩擦が必要なのだ

これまでにない事業をつくろうとしている場合、それを手っ取り早くわかってもらおうとして、既存のビジネスの枠組みを使って説明をしたくなってしまう。たとえば、「ウーバーのマッサージ版」とか、「ひげそり界のアップル」とかいった具合に。他人に理解してほしいと願うのは自然なことだが、それが同調圧力のもとになる。既存モデルに乗っかる形で理解を得ても、制約のない自由なイノベーションは生まれない

自分たちが既存企業より、「うまくやれる」とただ思い込むのではなく、業界のみんなが間違っていることについて仮説を立て、その課題を土台に起業するほうがいい

大企業の中の起業家やイノベーターに共通している特徴は、決められた役割から逸脱することだ。やらなくてもいい仕事をやる人が、未来をつくる

人生を変えるほどの偉大なプロダクトは、古い問題を新しく、かつ一見非合理な方法で解こうとするチームによってつくられる

あまりに注目されると創造のプロセスも止まってしまう。周囲のすべてを100パーセント吸収しているときに想像力は花開く

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もし読者がこれから起業する人、あるいは既に起業の途上にある人なら、本書が転ばぬ先の杖として、役立つと思います。

現在、まさに問題に直面しているという人が読んでも、良いヒントが見つかるのではないでしょうか。

スタートアップのための自己啓発本ですね、これは。

ぜひ、読んでみてください。

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『ザ・ミドル 起業の「途上」論』スコット・ベルスキ・著 関美和・訳 英治出版

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◆目次◆

起業の「旅の途上」には何が起こっているのか
イントロダクション
Part1 耐える
Part2 波に乗る
Part3 ゴール直前

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