【スズキ中興の祖、鈴木修氏の希少な評伝】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833425696
本日ご紹介する一冊は、「私の履歴書」への登場を固辞し続け、書籍も『俺は、中小企業のおやじ』以外にないという、スズキの中興の祖、故・鈴木修氏の希少な評伝です。
『俺は、中小企業のおやじ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532314380
著者は、鈴木修氏を35年間取材し続けてきたという、ジャーナリストの永井隆さんです。
アルト、ワゴンRなどのヒットを生んだ類まれなマーケティングセンス、軽自動車を何度も危機から救った交渉力、そして何といっても周囲に愛されるカリスマ性と人間力…。
故にエピソードと名言には事欠かず、本書も面白い読み物に仕上がっています。
もちろん、ジャーナリストが本人の死後に書いているだけあって、鈴木修氏の実績については、「功」も「罪」も等しく書かれています。
関係者の証言や、取引先への取材から導かれた氏の横顔は、『俺は、中小企業のおやじ』とはまた違った印象を受けました。
戦争を経験した世代特有の胆力と決断力、元銀行員らしい細やかさとコスト意識、出身地下呂温泉のお湯のようなあたたかさ、そして「一回の会見で、3度笑いをとる経営者」と言われたほどの話の上手さ…。
鈴木前会長の魅力が、余すところなく書かれた、読み応えのある本だと思います。
もちろん、現在の経営環境で、当時のような義理人情がまかり通る訳ではありませんが、その時代を見る鋭い目、経営を見る視点は、現役世代にとっても勉強になると思います。
危機に陥った時、どうやって急場をしのぎ、V字回復につなげるか。
精神的にも技術的にも、本書から学べることは多いと思います。
グローバルで通用するリーダーシップを身につけたい人にとっても、良い勉強になるのではないでしょうか。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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「修さんは廉潔な人。公私をきちんと分けます。大好きなゴルフでは、ウエアもクラブも同じものを何年も使い続けていた。会社の金には、一銭も手をつけない。だから、みんな修さんを信頼した(以下略)」(石黒寿佐夫氏)
「みんな左前になってから傘下入りするから、決定権がデトロイトやパリに移ってしまう。スズキは黒字だから、(連結対象でも)浜松で決められる。だから、いつも黒字でいることが大事なんだ。経営にとって、赤字は悪である」(鈴木修氏)
「スズキの業販店の父ちゃんや母ちゃんたちは、ご飯とタクアンさえあれば、あとは鈴木修のために死ぬ気で働く人たちだ。我々は、ディーラー社員に退職金や社会保険、年金などを手当てするため、どうしてもコストが嵩む。しかしスズキにはそれがない」(ライバル社の営業幹部)
この点、銀行員だった鈴木修は違った。売掛金の未回収が重なってキャッシュが枯渇すると、会社がどうなってしまうのかを、イヤというほど知っていた。会社が倒産するのは、借金が膨らむからではない。資金がショートして、支払いが不能になるからである
商用で角張った「ジムニー」をヒットさせた成功体験を持つ鈴木修は、アルトを商品化し、やがて1993年発売の「ワゴンR」という大ヒット商品へとつなげていく。いずれも、デザインは角張り系なのは共通するが、根底に流れるのは、お客様にとってのユーティリティー(つまり便利な使い勝手)を基本に発想したモノづくりだった
当時、軽自動車は60万円台で売られていた。これに対し「アルト」は、価格を全国統一の47万円と設定した
「とてもじゃないが呑めない金額だ。せいぜい出せて、35億円から40億円だ」と考えた鈴木修は、インド政府の官僚たちに言った。
「金も出せ、技術も教えろというのなら、名古屋(トヨタ)か横浜(日産)に行ってくれ。俺のところでは、どう転んでも(そんな大金は)無理だ。あなたたちは、もう名古屋にも横浜にも行ったろう。でも、(スズキ本社がある)ここ浜松が一番田舎の風景のはずだ。日本では、田舎の人間が一番信用できる。だから、技術は一〇〇%教える。ただし、田舎には金がない」
鈴木修は30代だった営業本部長時代から、業販店に対して頻繁に語っていた教えがある。「八百屋のオヤジさんは、二つポケットのあるエプロンをしていた。市場で朝10万円分を仕入れたなら、店を開けて売り上げが10万円になるまでは、右のポケットにだけお金を入れておく。10万円を超えたらはじめて、超えた分を左のポケットに入れるようにする。左のポケットのお金は、パチンコでも何でも自由に使っていい」
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鈴木修さんのエピソード、名言は何度読んでも、面白いですね。
本人による名著『俺は、中小企業のおやじ』も併せて、読んでみてください。
『俺は、中小企業のおやじ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532314380
著者の、鈴木修氏への愛情を感じる、良い文章でした。
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『軽自動車を作った男』
永井隆・著 プレジデント社
<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆
第1章 長い旅の途中で
第2章 終戦と鈴木道雄の教え
第3章 倒産の危機
第4章 失意のアメリカと復活のジムニー
第5章 成功の復讐
第6章 やる気
第7章 軽自動車を作った男
第8章 インド進出とHY戦争
第9章 ワゴンR
第10章 ホンダの「ゲット80」とB登録
第11章 トヨタ・ダイハツとの仁義なき戦い
第12章 人たらしの交渉力
第13章 終わりなき旅
第14章 最後の北牌
第15章 長男の社長就任とトヨタとの提携
最終章 下呂にて
あとがき
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