2025年6月4日

『堤義明の社員教育』 小池亮一・著 vol.6733

【今こそ読みたい古典 ※注絶版】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833412322

本日の一冊は、1984年に出され、絶版となった経営書。

40年前の本ということで、組織の作り方や社員との接し方など、今では古い部分もありますが、日本人でフォーブス億万長者ランキング世界一を取った男の話は、やはり読んでおいて損はありません。

とある分野で日本一を取った経営者の自宅の本棚で見つけ、絶版本を入手したのですが、なかなか読む機会がなく、やっとじっくり読んだところ、起業家・経営者として驚くほど得るものがあったのでご紹介します。

奇しくもこのタイミングで日本に観光ブームが来ており、大型レジャーを仕掛けた西武鉄道グループのビジネス視点が参考になるのと、傍若無人な起業家だった先代・康次郎氏の後を継ぎ、高価格ビジネスを展開した堤義明氏の手腕が参考になります。

なぜ西武鉄道グループが一等地をたくさん持っていたのか、どうやって国や地方の政治家と付き合っていたのか、今では知る方は少ないと思いますが、本書ではその辺のディープな裏事情にも踏み込んでいます。

また、西武ライオンズを度々日本一に導いた名オーナーだけあって、スポーツチーム成功の要諦にも触れられています。

プロスポーツチームの経営者にとっても、面白い読み物だと思います。

もちろん、その後のグループの凋落ぶりは皆の知るところではありますが、一夜にして巨大グループを築き上げたシステムと原動力が何だったのか、知っておくのはビジネスパーソンとして決して損ではないと思われます。

ひさびさにこの時代のビジネスノンフィクションを読みましたが、やはり勢いがあった時代のせいか、ライターの力量も勢いも違います。

リーダーシップやビジネスの本質を踏まえながら、先代・康次郎氏と義明氏の対比を行っている点も、読み応えがありました。

昨今は、綺麗ごとばかりで結果を出せないビジネス書が多いですが、本書は経営者が思っていても言うべきではない本音、ビジネスの真髄が書かれていて、現実主義者には刺さる一冊です。

ここまで読んだ人はとりあえず中古本を手に入れて、後でじっくり読んでみてください。

買えなかった人は、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックで読んでみましょう。

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私が地元へ行ってみて、町長の家で、漬物と味噌汁がまずかったら、それはもう開発しない。そういうところは、絶対観光地にならないですからね。行ったときに、村中の人が、ああよくきてくれたとニコニコしてくれるところはいい。うさんくさそうにみられたら、もうやめ。この事業のはじめは、お見合いと一緒です

駅前にはいいホテルは絶対だめです。みんな待ち合わせに使ってそれをとめることはできませんからね。(中略)高級店をゲレンデに面したところにつくったら、種類のちがうお客さんが入って、両方とも不愉快になりますね

五年監督やるっていやあ、選手が諦めるんですよ。五年たてば選手生命が終わりますからね。この監督ににらまれたらだめだと思うから、一所懸命やりますよね

堤王国には、特別主権と一般主権があり、前者は堤だけが独占しているオールマイティの権力で、移動のない永世権力。後者は、それぞれの職場のチーフが、一時的に与えられている臨時権力だから、いつ取りあげられても仕方がない。そうやって、部下が職権を濫用して、不当な権力行使をおこないうるチャンスというものをなくしている

うちの支配人には運動靴はかせてキャディをやらすわけです。キャディをやってはじめてゴルフはわかるんですよ。食堂だって同じです。たとえば、支配人が食堂で料理を食べると、料理のことがわかるんじゃなくて、お客さんの食べ残しをさげると、料理はいちばんわかるんですね

義明の教えは、是々非々の態度をつらぬけということである。つまり、聞くべきは聞き、くだらないものは無視しろということである。「ユーザーの苦情を大切にする」姿勢は企業にとって必要で、それに誠実に対処していくから、ますますクォリティアップがはかれるのだ。一方、意味のない声などには毅然とした態度でつっぱねてしまうことが、企業の見識というものである

糞尿輸送と聞いただけで、快適な都会的文明生活に慣れているわれわれは閉口してしまうのであるが、ここには、堤康次郎という稀代の猛事業家の秘伝が裸で出ていることが貴重なので、敢えて、突っ込んだ考察をほどこしてみたいと思う。康次郎は、ここにヨダレの出るようなモノポリー(独占事業)がころげこんできたのを、事業家の本能として悟ったのだ

堤康次郎は、東京都を救う仕事の代償として、さまざまなことを要求できた。康次郎が狙ったのは、各駅に隣接した土地を「肥溜め用」として、ゴソッと入手することであり、実際、彼の思いどおりになった

品質を上等にして、強気で高く売れ

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日本が現在立たされている苦境を考えると、これぐらい大胆なビジョンとリーダーシップが欲しい。

リーダーとして、またリーダーを選ぶ主権者として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

また、観光を始めとするサービス業、スポーツチーム経営、高付加価値ビジネスの成功法則を学びたい人にも、刺さる一冊だと思います。

ぜひ読んでみてください。

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『堤義明の社員教育』小池亮一・著 プレジデント社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833412322

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◆目次◆

まえがき
第1章 堤義明の主権学
第2章 堤家代々の厳格な「しつけ」学
第3章 堤義明の商品を高価格化する能力
第4章 危機意識のマネジメント
第5章 愛沿線心の育成
第6章 京都進出計画
第7章 もっとも儲かる「汗かき産業」の王者に
第8章 精鋭学 堤義明のリーダーシップの根幹

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