【ベストセラー続編】
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本日ご紹介する一冊は、ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』の著者、小林武彦さんによるシリーズ最新刊。
『生物はなぜ死ぬのか』
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生物にとっての幸せを「死からの距離感」(=死から遠いこと)とし、なぜわれわれ人間が幸せから遠ざかってしまうのか、その理由を生物学+社会科学的見地から解説しています。
・ヒトにだけ見られる「遺伝子と環境の不適合」
・移動をやめて生まれた格差
・「孤独」と「病気」
・相対的な順位に敏感な性質
・都市への人口集中
など、さまざまなキーワードが出現し、われわれが幸せになれない理由を論じています。
正直、純粋に生物学的な見地で論じた『生物はなぜ死ぬのか』の方が新鮮で面白かった印象ですが、こちらは現在の日本の問題点を、みんなに代わって代弁してくれたような内容です。
生物学的視点を交えたリーダーの条件や「正義の遺伝子」の話は、現在の政治リーダー、実業家にぜひ読んでいただきたい部分です。
リーダーの条件
・集団としての生き残りの戦略に長けていること。メンバーの「幸せ」を増やせるヒト
・シニアであること(経験や知識が豊かで、教育熱心、利他的、公共的な精神)
・評価が公正にできること
・その評価に応じた公平な分配ができること
この4つを読むだけで、なぜ日本国民が現在の政財界のリーダーのもとで幸せになれないのか、その理由がわかる気がしますね。(もちろん、一部の優良企業を除きます)
「正義の遺伝子」に関しては、こんなことが書かれていました。
これから日本を良くしていくために、大事な視点かもしれませんね。
<コミュニティにとってマイナスなことをする行為(他人に迷惑をかける行為と言ってもいいと思います)に対して生理的に不快に感じるのは、進化の過程で獲得した「遺伝子に刻まれた」変更不可能な性質なのです。アンフェアなことには不快を、フェアなことには「幸せ」を感じるヒトが人類進化の過程で選択されてきました。そのような「正義の遺伝子」が生き残ってきたのです>
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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大きく太陽に向かって開いた葉っぱは、より光のエネルギーを吸収します。一方、寒冷地の樹木に見られる細長い葉っぱは、冬の積雪で折れるのを防いでいます。何をどのように食べるか、どうやって危険から逃げるかは、行動だけでなく、形態や性質も変化させているのです。言ってみれば、生物の今ある姿は、「死からの距離」を大きくして生きるための「幸せ」のかたちでもあるわけです
生殖本能に基づく動物行動の3タイプ
・集団放卵放精型(数で勝負のばらまきタイプ)
・追尾型(粘り強いお願いタイプ)
・呼び込み型(準備万端スイートホームタイプ)
「呼び込み型」というのもあります。私が個人的に好きなのは南国のジャングルに生息する極楽鳥(ゴクラクチョウ)です。オスは屋根付きのステージ(スイートホーム)を作り、そこで綺麗な羽を見せびらかすようにキレッキレの踊りを披露します。それをメスが気に入った場合は、その「スイートホーム」に入り交尾に至ります
ヒトも子育て中は元気ですし、さらにヒトの場合は幼い孫のサポート期間でもある50代までは、ほとんど「がん」にもならず元気です
哺乳動物によく見られる「じゃれあい」や「スキンシップ」は、ヒトと同様に楽しそう、幸せそうに見えます。実際に楽しいのかもしれませんが、これらには相手に危害を加えないことをお互いに確認し、緊張感の緩和や信頼関係の構築にもつながり、結果的に死からの距離感を大きくする役割があります
便利な道具を作り出すテクノロジーは、安定した食料確保につながり、死との距離感を大きくする「幸せ」な行為
ヒトの場合、腕力があることよりも、集団で協力する「協調性」やヒトを説得する「コミュ力」、ものを作る「技術力」があったほうが生存に有利だった
変なたとえですが、チャーシューメンにのっかっているチャーシューの量が他の人より1枚少ないことにすぐ気づき、チャーシューメンが食べられる幸福感よりも、チャーシューが他よりも1枚少ないことに対する不公平感が上回るのです。この相対量に対する感度の高さはヒトの特徴であり、他の動物には見られません
集団の中で周りよりも評価が高いこと、うまくいっていることは、集団から追い出されないことであり「死からの距離」が遠くなる、つまり「幸せ」になる重要な手段だったのです
我が国で寿命に影響を与える要因として、はっきりと相関が見られるのは、都市と地方です。ご想像の通り地方のほうが長生きです
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上でも書きましたが、正直、社会科学は専門家に任せた方が良かったかな、という印象です。
ただ、生物学的視点で論じた部分は相変わらず面白く、勉強になりました。
ぜひ、チェックしてみてください。
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『なぜヒトだけが幸せになれないのか』
小林武彦・著 講談社
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◆目次◆
はじめに
第1章 進化から見た生きものの幸せ
第2章 ヒトの幸せとは一体何か?
第3章 「幸せ」は遺伝子に刻まれている
第4章 なぜヒトは「幸せ」になれないのか?
第5章 テクノロジーはヒトを「幸せ」にするのか?
第6章 「幸せ」になるために--生物学的幸福論
まとめと、おわりに
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