2025年4月7日

『小澤隆生 凡人の事業論』 蛯谷敏・著 vol.6694

【注目の起業家、語る。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478121842

本日ご紹介する一冊は、事業家、起業家、ベンチャーキャピタリスト、イベントプロデューサーとして有名な小澤隆生(おざわ・たかお)氏に、「事業のつくり方」についてインタビューし、まとめた講義録。

著者は、ビジネスノンフィクション作家、編集者の蛯谷敏(えびたに・さとし)氏です。

蛯谷氏は、2012年に日経ビジネスDigital編集長、2014年に日経ビジネスロンドン支局長を務め、2018年にリンクトインに入社、ビジネスSNS「LinkedIn」の日本および東南アジア市場におけるコンテンツ統括責任者も務めています。

取材対象となる小澤氏は、早稲田大学卒業後、CSKに入社し、その後、CSKの仲間と逆オークションサイトの「ビズシーク」を創業、楽天にビズシークを売却してその後三木谷浩史氏のもとで働き、東北楽天イーグルスの創業メンバーになった方です。

2006年に楽天を退職してからは、エンジェル投資家として活動し、再び起業。その会社が今度はヤフー(現LINEヤフー)に買収され、ヤフー入りしました。

ヤフー在職時は、コーポレート・ベンチャーキャピタルを立ち上げ、その後eコマース事業の責任者、さらにソフトバンクグループと連携し、電子決済「PayPay」の立ち上げ、その後は2019年にヤフーのCOO、2022年にはCEOに就き、グループ約2万8000人の陣頭指揮を執りました。

2023年に退任してからは、自らのベンチャーキャピタル「Boost Capital」を立ち上げて代表に就任。再びスタートアップの世界に戻って活動を続けています。

コンパクトにまとめてもこれだけ活躍している小澤隆生氏が事業のつくり方について語る。

これが面白くないわけがありません。

氏がヤフーのコーポレート・ベンチャーキャピタル時代に投資した企業は、19社中11社が上場したようですが、なぜそんなことができるのか。

氏が事業の何をどう見ているのか、その視点がわかる、興味深い一冊です。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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事業立ち上げのステップ
1 最低限達成すべきゴールを決めて、事業の「センターピン」を見極める
2 仮説を立て、テストを繰り返して、ゴールに最短で到着する「正解」を見つける
3 見つかった正解を、徹底的に「実行」する

プロ野球の新規参入球団における51点とは何か。僕は当時、次の3つと結論づけました。
1 シーズン開幕日に、対戦相手と試合ができるチームがあること
2 プロ野球の試合が成立するスタジアムが完成していること
3 チケットを売り、購入したお客さんが球場で試合を観戦できること

まず51点をクリアして、そこから積み上げる

手始めに、あらゆるプロスポーツビジネスをリサーチしました

集めた情報や資料は項目ごとに分けて、スプレッドシートにマッピングしていきました。横軸にはビジネスを構成している要素を入れます。先ほどの例で言えば、「ファンクラブ」「チケット」「グッズ」「スポンサー」……と記入していって、縦軸には実際の球団名を入れていきます。するとプロスポーツのビジネスモデルとその実施状況が大きなマトリクスとして俯瞰できるようになります

調査の結果、僕らはプロ野球のビジネスを(1)チケット、(2)広告、(3)放映権、(4)グッズ、(5)スタジアム運営、(6)ファンクラブという要素に分解しました

もともとこのアイデア(※対面で話ができるボックスシート)は、「野球のライバルとなる存在は何か」という議論から始まりました。通常、野球の試合は夕方6時から始まります。この時間帯、僕らが球場に来てほしいと思っている人がどこにいるかというと、居酒屋やカラオケなんです(中略)では、そもそもなぜお客さんは居酒屋に行くのでしょうか。おいしい食事や酒を楽しみたいのかもしれないけど、僕は、本質は誰かとおしゃべりすることが目的だと考えました

根源的欲求と市場規模を見極めること

知人に頼んで、とあるネットサービスで売れている弁当店のトップ30を教えてもらいました。そして、それを上位から観察していったんです。岸田さんと2人で順番に見ていくと、3つ目くらいで「これ、写真じゃないか?」と気づきました。要するに人気上位はすべてきれいな写真の弁当だったんです。「おいしいか」よりも、「おいしそうか」の方が大事だったわけですよ

ユーザーに何回も使ってもらうために、ポイント還元率と使える場所をナンバーワンにすることが、PayPayにおけるセンターピンだった

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著者が東北楽天イーグルスを創業した時のエピソードは、実施した内容も含め、じつに勉強になることばかり。

心構えというよりは、まさに本書のキーワードである「エグゼキューション」を学ぶための本だと思います。(そういえば昔、『経営は実行』というベストセラーがありましたね)

※参考:『経営は実行』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453231657X

真剣に事業を起こそうとする人は、ぜひ、読んでみてください。

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『小澤隆生 凡人の事業論』蛯谷敏・著 ダイヤモンド社

<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆

はじめに
第1講 事業立ち上げの心構え 凡人でも素質がなくても成功できる
第2講 事業立ち上げの第一歩 「ゴール設定」ですべては決まる
第3講 戦略の本質 その「打ち出し角度」は正しいか
第4講 成功のセンターピン 「根源的欲求」を見極める
第5講 失敗力を高めよ Howは試行錯誤とスピード勝負
第6講 勝者の資質 しつこい人間が最後は残る
第7講 組織の動かし方 ワンフレーズが意識を変える
第8講 リスク管理の要諦 決められない状態をつくらない
第9講 小澤隆生の人生論 仮説を立て、問い続ける
おわりに

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