2025年4月15日

『わかったつもり』 西林克彦・著 vol.6700

【ロングセラー】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334033229

本日ご紹介する一冊は、「ほとんど宣伝してないのに、口コミで20万部突破!」と話題の一冊。

最近は、速読やら倍速視聴やらが流行っていますが、その落とし穴を見事に指摘した内容です。

著者は、宮城教育大学教育学部教授の西林克彦氏。

なぜ読解力がつかないのか、そのメカニズムを解説し、深く読むためにどうすればいいのか、具体的な解決策を示した、必読の一冊です。

本書のカバーそでには、こんなことが書かれています。

<「わかる」から「よりわかる」に到る過程における「読む」という行為の主たる障害は、「わかったつもり」です。「わかったつもり」が、そこから先の探索活動を妨害するからです>

本書の中で著者は、この<わかったつもり>がわれわれの読解力にどう影響を与えるか、実例を示しながら解説しています。

読者は、「もし もし お母さん」(くぼ たかし)や「正倉院とシルクロード」(長沢和俊)、「いろいろなふね」(東京書籍『新しい国語』1年下 平成14年度版)などを読みながら、いかに自分が読めていないか、痛感しながら本書を読むことになると思います。

もちろん、誤読のメカニズムを解説しただけで終わる本ではありません。

本書では、文章の登場人物を表にして理解するやり方や、異なる文脈を活用するやり方が紹介されており、これだけでもだいぶ誤読を防ぐことができるようになると思います。

ビジネスパーソンに本書を推薦する理由は、本書のメソッドを活用することで、ビジネスにおける誤読を防げること。

加えて、異なる視点から物事を眺めたり、パラダイムシフトを起こしたり、これまでとは違った形で宣伝活動をしたりすることができるようになると思います。

外国人に日本のモノやサービスを紹介する際にも、本書の「文脈」や「スキーマ」の考え方が使えると思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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よりよく読もうとするさいに、私たち読み手にとって最大の障害となるのが、自分自身の「わかった」という状態

「わかった」という状態は、「わからない」ことがないから「わかった」状態なのです

一読したときには、気にもならなかった表現が、表を埋める作業をしていくうちに、はじめて考慮のなかに入ってくるということはなかったでしょうか

部分間の関連が、以前より、より緊密なものになると、「よりわかった」「よりよく読めた」という状態になります

何の話かがわからなければ、話はわからない

あることがらに関する、私たちの中に既に存在しているひとまとまりの知識を、心理学、とくに認知心理学では「スキーマ」と呼びます。すなわち、何の話か示唆されると、どの「スキーマ」を使えばよいかがわかるので、それを使って文章を処理していけるというわけです

辞書の説明には、「文脈」は「文と文との続きぐあい」であるといったように、「もの」と「もの」との「続きぐあい」であるとあります

文脈が異なれば、違う意味が引き出される

部分の記述が比較的「新鮮」に感じられるなら、あまり「読み飛ばし」されない

存在する文脈が強力であればあるほど、それによる間違いを引き起こす可能性が高くなる

ものごとには、いろいろなものがあります。そして、ものごとにいろいろあるのは当たり前です。いろいろな人間がいますし、いろいろな形の車があります。ですから、いろいろあるということは、あまりにも当然です。したがって、「いろいろあるのだな」と認識した時点で、実は人はそれ以上の追求を止めてしまうのです

書かれていないことがらを考えるためには、それを探索するための道具が必要

「地球や環境にやさしい」や「科学技術の行き詰まり」、「元気をもらう」、「共に育つ」といった考えは、現代では是なるものとして認められ、また流行しているものです。このような社会的に是認されて通用性の高いものは、文章を読む際に安易に当てはめられてしまいます

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社会人になると、多くの人は「専門家」や「業界人」になり、モノの見方が固定されるものですが、本書にはそこから読者を解放する力があります。

一見すると国語の教科書のようですが、人生を豊かにし、さらにビジネスにおいても威力を発揮する、すごい本だと思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『わかったつもり』西林克彦・著 光文社

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◆目次◆

はじめに
第1章 「読み」が深まらないのはなぜか?
第2章 「読み」における文脈のはたらき
第3章 これが「わかったつもり」だ
第4章 さまざまな「わかったつもり」
第5章 「わかったつもり」の壊し方

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