【人生を豊かにする逆張りの勉強法】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833440733
最近、実用のための勉強法が限界を迎えたことを痛感しています。
要するに、有用なもの、得するものはみんなが真似をするので、やがて独自性を失い、儲からなくなってしまうのです。
生成AIが進歩すると、この模倣スピードがさらに速くなるので、われわれはいつまで経っても心の平穏を保てない。
こんな状態では、実用は作れても、世の中をひっくり返すような創造をすること、学問をすることは難しいのではないかと想像します。
本日ご紹介する一冊は、博物学者、小説家、翻訳家、妖怪研究家、タレントの荒俣宏さんが、人生を面白くするための勉強法を説いた一冊。
カバーを開いた瞬間、本のそでにこんな言葉が書いてあり、吹き出しました。
<「好き」とは一線を超えること-->
一線を超えるような探究を、誰もが本来したいはずだと思いますが、「実用」や「損得」がそれを阻む。
それに対し、著者はこう述べています。
<凍てつくほどおそろしいワンダーが、どうやったらすばらしいワンダフルになるのか。それは、凍りついて金縛りになった自分を奮い立たせ、一歩、足を前に出すことだ。恐怖を克服し、ワンダーに立ち向かい、それを研究してみることだ。この勇気こそ、世界をあたらしくする原動力である>
また、本書では、『荘子』の「礫社の散木」の教訓を、生前の梅棹忠夫さんが説いた話が出てくるのですが、これがまた趣深い。
ちょっと引用してみましょう。
<ある一人の棟梁大工が、弟子を連れて材木を探す旅に出た。すると、ある村で神木として尊ばれている巨木に出会った。弟子がこの木を使おうといったが、棟梁は反対した。あの木は役に立たなかったからこそ巨木になれたのだ、と。ほかの木は建築に使いやすく、「財あるいは材」(材木ということばもここから出ている)になる木だったから、どんどん伐られてしまった。ところがこの木は曲がっていたりして使いにくい「散木」、つまり使えない木と判断されたので、人に伐られなかった。そのおかげで神木になれたのだよ、と。>
最近の自己啓発書は、どれも「自分の好きなことを追求しろ」と言いますが、その根底に「実利」がある限り、その探究は浅いものにならざるを得ない。
その点本書が目指している「勉強」は、探究への執念が違います。
さすが「知の怪人」。随所で示される雑学の面白さにも、してやられました。
著者は、長ーいまえがきの後、本書のテーマについて、こう述べています。
<この本がテーマにしているのは、ストライクを投げる筋力ではなく、相手を空振りさせる「決め球」の磨き方、つまり頭脳なのだ>
<実力は0点でも、「決め球」があれば、自分の人生はかならず開ける>
「一線を超える」勉強によって、社会を変え、人生を変えたい。
そう思う人は、ぜひ読んでみてください。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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「好き」とは一線を超えること
来たバスには乗ってみろ
一生とは「自分の物語」をつくっていくこと
そもそも人間は、社会で暮らす共同生活の動物として存在する。その基本は、得た知識や見つかった問題解決法を共有し、共存をはかることだった
「啓蒙」の時代は「教養」が闇を祓う武器となった。でも、今は教養では解決がつかないほど情報の圧力が強まっている。超人的な叡智が求められている
現代の進化論では、生物の進化の歴史はDNAを子孫に伝える際に発生するコピーミスにより、はじめて成立することを探りあてた。失敗すなわち変化や差異が生じることこそが進化の原動力
だった
わたしたちがまずめざすのは、知のアマチュアになることであって、もっと自由に楽しく、自分の世界や可能性がどんどん広がっていく「幸福」をめざすべきだと思う
バカになればニッチが見える
凍てつくほどおそろしいワンダーが、どうやったらすばらしいワンダフルになるのか。それは、凍りついて金縛りになった自分を奮い立たせ、一歩、足を前に出すことだ。恐怖を克服し、ワンダーに立ち向かい、それを研究してみることだ。この勇気こそ、世界をあたらしくする原動力である
さまざまなワンダー情報のさばき方だが、わたしはその真偽というか本質や起源が明らかになることを、最初の身元証明だと考えている
勉強法の究極は、偉い師匠に弟子入りすること
師匠発見のあとは、勉強を「工学化」する
人生の決算期になったとき振り返って、自分の一生が相撲の星取りにたとえて七勝八敗ならば、誇るべき結果を残したと思うべきだ。星一つの負け越しは、誰かにその星を譲ったことを意味するからだ。勝ち星を墓場まで持っていくことはできない。せめて一勝でも、生きている後輩に譲っていくことができたら、世代をつないで種の存続を図っていく生物の一員として、かなり上出来だと思う
『荘子』の「礫社の散木」の教訓(梅棹忠夫談)
材にならなくても、そのおかげで神木になれる可能性があって、運命はどちらに転ぶかわからない
不人気なものにこそ、宝が眠っている
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AI時代になっても不安とは縁遠い考え方で、とても勉強になりました。
材にならないからこそ神木になれる、ABC分析のCに目をつけるなど、実用一辺倒の勉強とは真逆を行く考え方で、目からウロコが落ちます。
新分野の開拓者になりたい人、勉強で人生を面白おかしくしたい人に、おすすめの一冊です。
ぜひ、読んでみてください。
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『すぐ役に立つものはすぐ役に立たなくなる』荒俣宏・著 プレジデント社
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◆目次◆
はじめに AIに勝てる知的生活を見つけるために
第1章 脳にかかったクモの巣を払う 0点主義のすすめ
第2章 日本語という化け物を問い詰める
第3章 AIに勝てる勉強法
第4章 偶然がおとずれてくれる勉強法
第5章 やっぱり情報整理なんていらない
第6章 勉強を高尚なものにしない
第7章 苦手な勉強を楽しくする「魔法の力」
第8章 自己承認欲求に負けない「あきらめる力」
第9章 最強の「勉強法」は読書、場所はトイレと風呂と喫茶店
第10章 「人生丸儲け」と、「間違える権利」
「あとがき」に代えて だまされることで創造的批判力が身につく
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